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第4章

Auteur: ゆたか
「証拠ならある」

考える間もなく、胸の痛みをこらえて彼を遮った。本当の婚約者は私なのに、どうして美優の前で必死に証明しなければならないのだろう。

私は目を閉じ、感情を抑えた。

記憶さえ戻れば大丈夫。2人で過ごした証を見れば、思い出してくれるかもしれない。

「証拠があるんですね。よかった」

美優は、本当に私のために喜んでいるように笑った。

ゆっくりと近づいてくる。

「見せていただけたら、遼平さんもきっと喜びますよ」

遼平はずっと彼女を目で追い、不満そうなふりをして言った。

「俺の婚約者はミユだけだって」

胸は痛すぎて、もう感覚がなかった。

美優の目には勝ち誇った色が浮かんでいた。遼平に背を向けて立っているので、彼には見えない。

その場を離れようとした瞬間、美優が急に歩み寄り、わざと保温容器をひっくり返した。熱々の魚のスープが残らず私の手にかかり、たちまち水ぶくれができた。

「あっ!」

「ミユ!」

手の激痛から立ち直る間もなく、私は強く突き飛ばされ、床に倒れた。

遼平は美優をいたわるように抱きしめ、今にも怒りが噴き出しそうな目で私をにらんだ。

「このクズ!ミユはお前を気遣ってるのに、けがをさせる気か!」

体も心も痛かった。涙が目にたまり、視界がにじむ。

「私じゃない!私は……」

言い終わる前に、またボディーガードに乱暴に放り出された。

痛みをこらえて涙を拭き、急いで家へ戻った。婚約者だと証明できるものを、一刻も早く見つけたかった。

7年も一緒にいたのだから、証拠など簡単に見つかると思っていた。

けれど、家中を探しても、見つかったのは2人で写った写真1枚だけだった。

それも、卒業式の日に同級生がこっそり撮ってくれたものだ。

もらったときは本当にうれしかった。わざわざ選んだ写真立てに入れ、毎朝目が覚めたら見られるよう、枕元に飾ったのを覚えている。

あちこち探すうちに、手の水ぶくれがいくつも破れていた。

痛みで震える指でメッセージの履歴をさかのぼる。彼からの返信はほとんどなかった。画面は私からの言葉で埋まり、何十件も送って、ようやく1件返ってくる程度だった。

ほかに手はなく、私はその写真を持って病院へ急いだ。

ところが病室は空っぽで、彼がすでに退院したと知った。

もともと大したけがではない。本人が帰宅を望めば、無理に入院させておく必要もなかったのだ。

日が暮れ始める中、今度は彼の家へ向かった。

……

「これが証拠?」

遼平はあざけるような顔をした。

「本当にしつこいな。家まで追いかけてくるのかよ」

写真をちらりと見ただけで、目をそらした。何も思い出さないらしい。

期待はまたも打ち砕かれた。

「遼平、大学を卒業したときの写真だよ。私たち……」

「あ、遼平さん、この写真、すごくかっこいい!」

胸がひやりとした。写真立てが彼の手から美優に渡り、私はとっさに取り戻そうとした。

「信じないなら、返して」

けれど、美優はもう興味をなくしたようなそぶりを見せた。遼平は私のほうに目をやると、顔がたちまち険しくなる。

「ミユが気に入ったなら、俺が写ってるところだけ切ってやるよ」

「やめて!」

何年も大切にしてきた写真なのに!

もう1度取り返そうとすると、遼平に手をつかまれた。激痛が走る。そのとき、美優が手を離した。

――ガシャーン!

写真立てが床に落ち、ガラスが砕け散った。

私の心まで、粉々になったようだった。

我に返ると、すぐにしゃがんで写真を拾った。幸い、写真には傷がついていなかった。

「何だ、これ?」

遼平がガラスの破片に交じった紙に気づいた。

私は動きを止めた。その紙が何だったか、思い出したのだ。

彼はもう、それを広げていた。

「角膜提供同意書」

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