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第10話

Auteur: 夏ノ黙
1年後。

グローバル金融サミット。

新進気鋭のトップ投資家になった私は、仕立てのいい白いスーツを着て、最前列のど真ん中に座っている。

フラッシュがあちこちでたかれる中、私の顔には自信に満ちた笑みが浮かんでいた。

1年前、ただの使いっぱしりで、いつもおどおどしていた私が、今や資本そのものになるなんて、誰が想像できただろう。

あの40億円を元手に、私はいくつかのユニコーン企業へ的確に投資した。おかげで資産は10倍以上にふくれあがった。

今の私は、「中山社長」だ。

会議が終わったあと、私はバックステージで待ち伏せされた。

正人、渉、竜也。

三人が揃って、私の前に立っていた。

でも、1年前とは違う。

正人は、あの乱暴なオーラがすっかり消えていた。きっちりした黒いスーツを着て、ずいぶん落ち着いて見える。

渉はかなり痩せて、腕につけていた数珠はなくなっていた。かわりに、ごく普通の腕時計をはめている。

竜也は、髪を短くして黒に染め直していた。まるでおとなしい大学生みたいだ。

三人は私を見ている。その目には、もう以前のような見下した感じはない。あるのはただ、へりくだった、お
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    1年後。グローバル金融サミット。新進気鋭のトップ投資家になった私は、仕立てのいい白いスーツを着て、最前列のど真ん中に座っている。フラッシュがあちこちでたかれる中、私の顔には自信に満ちた笑みが浮かんでいた。1年前、ただの使いっぱしりで、いつもおどおどしていた私が、今や資本そのものになるなんて、誰が想像できただろう。あの40億円を元手に、私はいくつかのユニコーン企業へ的確に投資した。おかげで資産は10倍以上にふくれあがった。今の私は、「中山社長」だ。会議が終わったあと、私はバックステージで待ち伏せされた。正人、渉、竜也。三人が揃って、私の前に立っていた。でも、1年前とは違う。正人は、あの乱暴なオーラがすっかり消えていた。きっちりした黒いスーツを着て、ずいぶん落ち着いて見える。渉はかなり痩せて、腕につけていた数珠はなくなっていた。かわりに、ごく普通の腕時計をはめている。竜也は、髪を短くして黒に染め直していた。まるでおとなしい大学生みたいだ。三人は私を見ている。その目には、もう以前のような見下した感じはない。あるのはただ、へりくだった、おそるおそるの熱望だけだ。「葵」正人が最初に口を開いた。声は少し、かすれている。「聞いたんだが……パートナーを募集してるって?」渉は書類を差し出した。「これは金子グループができる、最大の譲歩だ。サインさえしてくれれば、利益はすべて君のものだ」竜也は健康診断書と資産証明書を取り出した。「葵……もう、めちゃくちゃな遊びはやめたんだ。体も健康だし、それに、ちゃんとした出所のお金しかないんだ。だから……チャンスをくれないかな?」私は、かつて私を自分たちの「奴隷」として扱っていた、この三人の男たちを見た。今、彼らは全財産を差し出して、私に一瞥してもらうためだけに必死になっている。まったく、立場が逆転したものね。周囲の記者たちが嗅ぎつけて、一斉にカメラを私たちに向けた。「中山社長、恋愛についてどうお考えですか?」と記者が大声で聞いた。「この三人が中山社長を追いかけていると噂ですが、どなたを選ぶのですか?」私は、笑った。華やかで人を惹きつけ、それでいてどこか投げやりで、冷たい笑みだ。「恋愛、ですか?」私はカメラに向かって、ゆっくりと口を開いた。「私の

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