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第4話

Auteur: ライチ
全身の血が一気に頭へと駆け上がって、私は父の病室へと慌てて戻った。

父はまだ昏睡状態のままだった。テレビ画面には、まるで尊厳のかけらもない犬のように、床にひれ伏して弥生に頭を下げる私の姿が映し出されている。

その動画もまた、ニュースで取り上げられていた。

世間は、恥知らずだの、障害者のイメージを汚すなだのと罵っていた。

私は父の布団の端をそっと整える。胸の奥を締めつけるような感覚に襲われ、涙をこらえながらテレビの電源を切った。

そのとき、病室の入り口で物音がした。なんと、そこに立っていたのは弥生だった。

彼女は顔中に悪意をたたえて、こう言い放った。

「私の男を誘惑して、おまけに私のお腹の子を殺しかけたくせに、謝れば許してもらえると思ったの?

あなたの家族はみんな最低よ。死んでしまえばいい!」

弥生の顔には冷酷な笑みが浮かんでいた。

私が恐怖で見開く目の前で、彼女は父の命をつなぐ酸素チューブを引き抜いたのだ。

「やめて!」

私は狂ったように飛びかかったが、彼女が連れてきたボディガードにがっしりと押さえつけられてしまう。

父の頭は力なく横に傾き、やせ細った体からは完全に生気が失せていた。

父は、死んだ。

そこへ偶然駆けつけた母がその光景を目にした。逆上して弥生に飛びかかったが、彼女に強く突き飛ばされてしまう。

母のこめかみが壁にぶつかり、そのまま意識を失った。

「お母さん!」

私は絶望の叫び声をあげ、もがきながら母のもとへと這い寄った。床には、私の不完全な足がつけたおぞましい血の跡が残る。

弥生は勝ち誇ったように立ち去った。私は母の体を抱きかかえたまま、声もなく泣き崩れた。

助けを呼ぼうにも、病院のスタッフは正幸の指示で全員いなくなっていた。

絶望のあまり、私はSNSに一文を投稿した。

【私と正幸は七年前から付き合っていた。本当の不倫相手は藤田弥生だ!】

それから間もなく、正幸が病室へ飛び込んできた。

「頭がおかしいのか!今すぐ投稿を消せ。さもないと、今すぐお前の父を追い出すぞ!」

私は無表情のまま答えた。

「父は、藤田弥生に殺された」

正幸は、冷たくなった父の体におそるおそる視線を向け、疑わしげな表情を浮かべた。

後を追って来た弥生は泣きそうな声で言った。

「あなた、私、お腹に赤ちゃんもいるのに、そんなことできるわけないでしょ?

さっきは少しやりすぎたと思って、心配して来たの。なのに詩織さんは私を陥れようとしてるの!」

正幸は、父の様子を一目でも確かめようともせず、私が嘘をついていると決めつけた。

「親を死んだふりさせてまで俺を騙そうってのか?詩織、絶対に後悔させてやるからな!」

そう言い残すと、二人は振り返りもせず去っていった。

二人が出て行った直後、突然数人の男たちが入ってきた。私の髪を乱暴につかんで床に叩きつけた。

「足もねぇくせに藤田さんと男を取り合おうなんざ、身の程知らずが!」

「廃人にしてやろうか!」

もともと質の悪い義足はへし折られた。その鋭い断面が半分しか残っていない足に突き刺さり、激痛に私は意識を飛ばしかけた。

男たちは私に暴力の限りを尽くすと、ようやく立ち去っていった。

それと同時に、正幸が声明を発表した。

【私、川村正幸は小林詩織という女性とは一切面識がございません。調査の結果、彼女は過去のトラウマから精神疾患を患っており、発言はすべて虚偽であります】

同時に公開された写真には、服も乱れ、体中が青あざだらけの私の姿が写されていた。

かつて、私が正幸の借金取りたちに捕まり、どれほどの屈辱を受けても彼の居場所を吐かなかった。

あの時、正幸は私の前にひざまずいて震えながら、必ず償うと誓った。

それなのに、今こうして私を汚しているのも彼だった。

絶望が胸のうちを覆い尽くした。私は病室の窓を押し開け、必死の思いでよじ登った。

風のうなり声が耳をつんざく。その時、正幸からメッセージが届いた。

【世間の目をそらすためだったんだ。悪く思うなよ】

【海外で特注の最新の義足を取り寄せたんだ。もう南の屋敷に届けてある。両親を連れて、そこに住めばいい】

私は返信しなかった。

そして、目を閉じると、そのまま飛び降りた。

正幸、もし人生をやり直せるなら、どうか私たちが道ですれ違っても、知らぬ顔でいてほしい。

正幸がちょうど弥生にシートベルトを締めてやったところで、ビルから人が墜落する影が目に入った。

直後、耳をつんざくような悲鳴が響き渡る。

「足のない妊婦さんが飛び降りた!母子ともに助からないって!」

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