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第5話

مؤلف: ライチ
正幸は慌てて振り返った。

少し離れた場所では、人々が大混乱に陥っていた。パトカーのサイレンと救急車の音が入り混じっている。

なぜだかわからないが、正幸の胸のうちに、これまでにない不安が込み上げてきた。

無意識にそちらへ駆け寄ろうとしたが、その手首を弥生に掴まれる。

「あなた、お腹が痛いの……」

正幸の顔に迷いの色が浮かんだ。それでも結局、アクセルを踏み込み、まずは弥生をかかりつけの産婦人科に運ぶことにした。

心の中で自分に言い聞かせる。世の中、足の不自由な人間は大勢いる。まして相手は妊婦だ。詩織であるはずがない、と。

車を発進させると、さっきまで苦しんでいた弥生が、急に静かになった。

甘えるような声で正幸に話しかける。

「ねえ、あなた。男の子と女の子、どっちが好き?」

正幸は適当に考え、心ここにあらずで答えた。

「どっちでもいいよ」

実は、正幸と詩織の間にも、かつて子どもができたことがある。

ただ、彼女が妊娠した矢先に、正幸は破産した。

あの頃は借金取りに追われて、自分たちの生活で手一杯で、子どもを育てる余裕などなかった。

だから詩織は泣く泣く子どもを堕ろ
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    正幸は慌てて振り返った。少し離れた場所では、人々が大混乱に陥っていた。パトカーのサイレンと救急車の音が入り混じっている。なぜだかわからないが、正幸の胸のうちに、これまでにない不安が込み上げてきた。無意識にそちらへ駆け寄ろうとしたが、その手首を弥生に掴まれる。「あなた、お腹が痛いの……」正幸の顔に迷いの色が浮かんだ。それでも結局、アクセルを踏み込み、まずは弥生をかかりつけの産婦人科に運ぶことにした。心の中で自分に言い聞かせる。世の中、足の不自由な人間は大勢いる。まして相手は妊婦だ。詩織であるはずがない、と。車を発進させると、さっきまで苦しんでいた弥生が、急に静かになった。甘えるような声で正幸に話しかける。「ねえ、あなた。男の子と女の子、どっちが好き?」正幸は適当に考え、心ここにあらずで答えた。「どっちでもいいよ」実は、正幸と詩織の間にも、かつて子どもができたことがある。ただ、彼女が妊娠した矢先に、正幸は破産した。あの頃は借金取りに追われて、自分たちの生活で手一杯で、子どもを育てる余裕などなかった。だから詩織は泣く泣く子どもを堕ろした。その後、詩織の右足は借金取りに切断されてしまった。それ以来、正幸はただひたすら、詩織を大切にしようと心に決めていた。弥生は正幸の心ここにあらずの態度を見抜いて、不満だった。彼女にはわかっている。正幸の気持ちが詩織に向いている。あの泥棒猫、本当に憎たらしい。足が不自由なくせに、まだ正幸にまとわりつくなんて。幸い、もう手を回して詩織を痛めつけてやった。これで二度と、自分の男を奪おうなんて思わないはずだ。弥生が何か言いかけたちょうどその時、突然、腹部に痛みが走り、苦痛の叫び声をあげた。正幸はもともと苛立っていたところへ、さらに不愉快そうに眉をひそめる。「もう病院に向かってるんだ。いい加減、芝居はやめろ。本当にそんなに痛いのか」弥生の額からは冷や汗が止めどなく流れ、痛みで顔が歪んでいる。正幸の冷たい口調など気にする余裕もなく、彼の手をぎゅっと握りしめた。「痛い……早く病院に連れてって」正幸が振り返ると、シートが真っ赤に染まっている。ただごとではないと察し、すぐにアクセルを踏み込んだ。できる限り急いだものの、病院に着いたときにはす

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