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0050-逃げない

Penulis: chocho
last update Tanggal publikasi: 2026-03-05 08:29:57

カーテンの隙間から入り込む空気が、静かに流れている。

その静けさは、完全な無音ではない。

どこかで世界全体の音量が下げられたような――

すべての音がやわらかく包まれ、輪郭を失い、ゆっくりとした質感に変わっている。

そんな空間の中で、あの一言だけが、やけに鮮明だった。

――「じゃあ、教室で。」

奥田の声は高くもなく、

わざとらしい間もなかった。

ごく普通の日常の一文。

強調もなく、引き伸ばしもなく。

ただ、そっと落ちて、それで終わる。

だからこそ、そこには余計な解釈の余地がなかった。

曖昧な飾りも、

余分な温度もない。

それなのに、なぜか無視できない。

それは――

ちょうどいい距離だった。

扉の前に立ち、

近づきもせず、離れもせず。

ただ一つのことを確認するような距離。

「また、会う。」

布団の中で、俺の呼吸が少しずつ整っていく。

さっきまで聞こえていた足音は、

もう廊下の奥へ消えていた。

すべては元通り。

けれど、

何かが確かに変わっている。

外の世界じゃない。

変わったのは――俺だ。

ゆっくりと手を伸ばす。

布団の温もりから離れ、

空気に触れた指先が、わずかに冷える。

その感触が、
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