LOGIN不慮の事故で人生を終えたはずの彼が、次に目覚めるとそこは学園。高校生として第二の人生が始まっていた。 さらに、隣の席には“最推し”に激似のクラスメイトがいて――!? 画面越しの存在が、今ではすぐ隣で息をしている。近すぎる距離に理性は崩壊寸前! オタクの愛と現実が激突する、尊死確定の学園ラブコメディ、開幕。
View More翌日。すべては一見、何事もなかったかのように正常だった。窓の外から陽光が差し込む。空気は静かだ。亀裂もない。影の異変もない。まるで昨夜のすべてが――ただの錯覚だったかのように。航平はベッドの端に腰かけ、俯いたまま、自分の手を見つめていた。指先がわずかに強張る。――静かすぎる。不自然なほどに。「……お前もそう思うか?」声がドアのところからした。航平が顔を上げる。奥田がドアにもたれかかっていた。すでに着替えは済ませている。表情はいつも通り。だが――どこかが違う。「ああ」航平は短く応じた。「綺麗すぎる」奥田がかすかに笑う。ほんのわずかに。「お前もそんな言い方するようになったんだな」航平は答えなかった。ただ立ち上がり、歩み寄る。二人は少し距離を保ったまま立ち止まった。互いに近づかない。だが感じている――あの“何か”が。まだそこにあると。空気の中に、もう一層密度が増したような。見えないのに、確かに二人の間に存在している。「昨夜――」航平が口を開いた瞬間。次の一秒で、言葉が止まった。忘れたわけではない。ただ――一つの声が、同時に二人の頭に浮かんだ。【ここで話すな】二人は同時に沈黙し、視線を交わす。「……お前が言ったのか?」「違う」ほぼ同時に返答した。空気が一瞬で冷え込む。外の温度ではない。あの“つながり”が――介入している。「選別してる」奥田が低く言った。「俺たちに、言わせないようにしてるんだ」航平は眉をひそめる。「偏りが出てきたな」これは単なる共有じゃない。――“傾向”がある。――“判断”がある。さらに分析しようとした、その時――次の瞬間。航平の呼吸が、突然乱れた。何の前触れもなく。心拍が跳ね上がる。血が一気に巡る。まるで――感情を無理やり引き上げられたかのように。「……待て」低く言い、額に手を当てる。「どうした?」奥田が問いかけた、その途中で止まる。同じ感覚が、彼の中にも現れたからだ。心拍の加速。熱を帯びた呼吸。そして――出所のない感情の高まり。二人は同時に硬直する。「俺じゃない」航平が歯を食いしばる。「俺もだ」奥田の声が低く沈む。そして次の瞬間、二人は同時に理解した。「……あれか」空気が一気に張り詰める
世界は崩壊の縁で――止まった。その一瞬。何かが「引っかかった」ように。影はすでに形を成している。航平のものでもない。奥田のものでもない。それは――二人のあいだに挟まれた、「第三の存在」。輪郭は曖昧。だが、二人分の気配を同時に帯びている。圧迫。鋭さ。そして――隠しきれない共鳴。空気が震える。壁面に細かな亀裂が走る。現実は、今にも再び引き裂かれそうだった。「持ちこたえろ」奥田の声は低く、落ち着いている。だが呼吸はすでに乱れていた。航平は歯を食いしばる。「大丈夫だ」二人の手は、まだ強く絡んだまま。離れない。近さのためではない。――離した瞬間、制御が崩れるからだ。影が二人のあいだでうねる。境界を探るように。ときに航平へ。ときに奥田へ。不安定に、傾き続ける。「選んでる」航平が低く言う。「違う」奥田は即座に否定した。「選ばせてるのは、俺たちだ」空気が一瞬、止まる。その一言が――核心を掴んだ。影が大きく震えた。見抜かれたかのように。次の瞬間。「第三の存在」の圧が――一気に増す。外へ、広がろうとする。二人から離れ、独立しようとする。「まずい」航平が低く言う。「分離する気だ」奥田の手が強く締まる。「なら、“外”をなくせばいい」航平が一瞬、息を呑む。「どういう――」言い終える前に、奥田は動いていた。一歩、踏み込む。距離を取るのではなく――さらに近くへ。ほとんど触れるほどに。二人のあいだの空間が、極限まで圧縮される。「外なんてない」奥田が言う。低い声。だが、はっきりと。「なら、こいつは中にいるしかない」その瞬間、航平は理解した。対抗でも、抑圧でもない。――封じる。「第三の存在」に、逃げ場を与えない。ただ二人のあいだに――閉じ込める。むしろ――依存させる。「本気か?」航平が低く問う。呼吸は完全に乱れていた。奥田は彼を見る。危うく、しかし冷静な目で。「言っただろ」「離れるなって」空気が一瞬、固まる。それから――航平はわずかに笑った。軽く。だが、はっきりとした決断を帯びて。「いい」そう言って――次の瞬間。彼は逆手に奥田の手を強く握り直す。試すような力ではない。――固定する。二人は同時に力を込めた。影
部屋は再び静けさを取り戻した。だがその静けさは――おかしい。終わりではない。むしろ――均衡しすぎている。最初にそれに気づいたのは航平だった。視覚ではない。呼吸だ。自分の呼吸のリズムが――引きずられている。さっきまで、確かに落ち着いていたはずなのに。なのに今は。息を吸うたびに――もう一人の呼吸と、重なる。航平ははっと顔を上げた。奥田も、同じようにこちらを見ている。二人は同時に理解した。「……お前も?」「うん」ほぼ同時に口を開く。その瞬間。空気が――わずかに震えた。外からではない。二人の間で。見えない何かが――“揃えられた”かのように。奥田の眉がわずかに寄る。「動くな」そう言った。だが今回は、航平への制止ではない。どちらかといえば――自分を抑え込むような響きだった。航平は動かない。だが彼の影が――先に動いた。ゆっくりと。足元から伸びていく。だが分裂ではない。それは――奥田の方へと滑っていく。奥田の影も動いていた。引かれているのではなく――自ら近づいていく。二つの影が床で交わる。ぶつかることも、溶け合うこともなく――ただ重なる。その瞬間。二人の身体が同時に震えた。呼吸が乱れ、心拍が崩れる。まるで――互いに“聞こえた”かのように。「……やめろ」奥田が低く言う。さっきよりも抑えた声で。だが影は止まらない。むしろ、よりはっきりと輪郭を帯びていく。立体を持ち始める。地面から這い上がってくるかのように。航平の指がわずかに震えた。「これは……」言葉が続かない。あまりにも感覚がはっきりしている。――それはそれぞれの“影”ではない。ひとつの“接続”だ。奥田もそれを察した。彼は素早く航平の手首を掴む。今度は抑えつけるためではない。確かめるためだ。「俺を見ろ」航平は顔を上げ、彼の目を見る。次の瞬間――像が重なった。外界が変わったのではない。知覚だ。航平の目に映ったのは――奥田だけではなかった。一瞬、もう一人の“彼”。より鋭く、より冷たく、何も抑えていない存在。そして奥田も――見ていた。航平の瞳に過ったものを。迷い。衝動。抑え込まれたあとの渇望。すべてが――むき出しだった。空気が一気に危うくなる。「……さっき、何を考えてた
空気はもう流れていなかった。まるで一時停止を押されたみたいに。航平の手首は掴まれていた。強く。さっきのような、探る力ではない。それは——支配だった。奥田はうつむいている。前髪が少し目を覆い、表情は見えない。だがその圧は、さっきより重く、より危険なものになっていた。「放せ」航平は低く言った。それはお願いではない。警告だった。奥田は動かない。次の瞬間——彼は、わずかに笑った。とても小さく。しかし明らかに異質だった。「さっきは、まだ確かめたかったんじゃないのか?」低い声。少し掠れている。「今は怖くなったのか?」航平の心臓が一気に沈む。——違う。その口調は。「……お前は誰だ」航平は直接問う。もう回り道はしない。奥田の指がわずかに強くなる。問いに答えるように。あるいは、それを——楽しむように。「もう会っただろ」彼は言う。「ただ——」首を少し傾ける。影と動きが完全に重なる。「“それ”より、俺の方が少しだけ分かってる」「お前が、何を見たいのか」空気が一気に締まる。航平の呼吸が止まる。「奥田」彼は声を落とす。「聞こえてるか」一秒。二秒。返事はない。だが——奥田の指先が、わずかに震えた。ほんの小さな動き。しかし航平は見逃さない。「……まだいるのか」影が小さく笑う。「それは面白いな」次の瞬間——奥田が一気に力を込めた。航平を壁へ押し付ける。「ドン」強くはない。だが、十分にリズムを崩す。距離が消える。呼吸が混ざる。「集中しろ」耳元で低く言う。「さっき、お前も——」腕を掴み、押さえ込む。「考えてただろ?」航平の呼吸が乱れる。「お前——」言い切る前に、奥田はさらに近づく。ほとんど触れる距離。「思ってるだろ」「押さえるのは、お前だけだと?」その一言で、すべてが剥がれる。航平の瞳が揺れる。——見抜かれた。影が奥田の背後で揺れる。拍手するように。「そうだ」それは低く言う。「それでいい」「もう隠すな」奥田の動きはさらに露骨になる。もう抑えていない。指の圧が強くなる。呼吸も乱れる。それは暴走ではない。むしろ——ようやく解放されたようなものだった。「俺を見ろ」命令するような声。航平は無意識に顔を上げる。その目が合った瞬間
遠くの戦場から吹いてきた風が、城下へと流れ込む。乾いた砂塵と、まだ消えきらない血の匂いを運びながら。城壁の上で、号角が鳴り響いた。低く、厳かに。――騎士団、凱旋。城門がゆっくりと開かれる。重たい木の扉が左右に分かれ、まるで「外の世界」と「内の世界」を再び繋ぎ直すかのようだった。すでに人々は集まっている。歓声を上げる者、涙を流す者、そして隊列の先頭を必死に探す者。オクダは先頭にいた。鎧には戦いの痕が残り、マントは風に裂かれて一角がほつれている。陽光が肩当てに落ち、冷たい白い光を反射した。その表情は静かだった。これまで幾度となく繰り返してきた帰還と、同じように。――本来
西川はゆっくり体を起こし、ベッドサイドのテーブルへ手を伸ばした。スマートフォンを手に取る。画面が点灯した。時刻はすでに零時を回っている。チャットアプリの一覧が、整然と並んでいた。
校舎の裏手にある空き地は、いつもと変わらず静かだった。グラウンドの端から風がゆっくりと吹き抜け、草の先をかすめてかすかな音を立てる。空は澄みきっていて、余計な喧騒もない。わざわざここまで来て邪魔をするような人もいない場所だ。洗い流されたように澄んだ空気の中で、呼吸さえもいつもよりはっきりと感じられる。二人は並んで階段に腰を下ろしていた。夕陽が斜めに差し込み、二人の影を長
航平は窓の外を見た。運動場では、誰かがリレーの練習をしている。掛け声が途切れ途切れに聞こえてくる。「たいていのものってさ」航平は静かな声で言う。「見られる前から、もうそこにあるんだよ。」