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第9章2節「局に潜む影、交錯する視線」

last update Last Updated: 2025-12-16 19:00:33

 王立監察局──。

 王都でも屈指の厳格さと中立性を誇る場所。

 石造りの塔は曇天の下で重々しくそびえ立ち、近づくだけで胸に圧力がかかるような気がした。

 レオンはヒスイの横で、変わらず落ち着いた表情をしている。

 それでも、彼の指先から伝わる力はいつもよりわずかに強く、ヒスイを守る意思がにじみ出ていた。

「ヒスイ。何があっても、私のそばを離れないでください」

「うん……」

 局の扉が重く開く。

 中には魔力の検知結界がいくつも張られており、ひとつひとつを通るたびに空気がわずかに震えた。

 そのたびにヒスイの魔力偽装護符が、胸元でかすかに熱を持つ。

 ばれていない……はず。

 けれど緊張は、否応なしに高まっていく。

「レオン殿。例の件について伺いましょう」

 応対に現れたのは、監察局副長の ライオネル=クレイド。

 レオンと親しいという噂もあり、実直な性格で知られる人物だ。

 だが今日の彼の顔には、明らかに警戒と苛立ちが混じっていた。

「レオン殿。あなたが“汚染の痕跡が意図的なもの”と言い切ったと聞きましたが……本当に確証が?」

「はい。解析の詳細と魔術官の証言も揃っています。汚染は外部からの魔力干渉によるものと断定できます」

「……では」

ライオネルの視線がヒスイに向く。

「彼女が狙われたと?」

 鋭い視線。

 その裏には“何が目的なのか”を探る思考がある。

 ヒスイの喉がひりついたけれど、真正面から視線を受け止めた。

「ヒスイさん。怖い思いをされたでしょうが……ひとつ、伺っていいでしょうか」

 レオンがすぐに身を寄せる。

「副長。ヒスイに対して過度な圧をかけるのは控えていただきたい」

「申し訳ない。しかし、狙われた理由を突き止めるには、

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