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第674話

Author: タロイモ団子
しかし理玖は子供のように首を横へ振ると、さらにソファの奥へ身体を沈め、その場から一歩も動こうとはしなかった。

紬は小さく奥歯を噛み締め、何とか彼の大きな身体を起こそうと腕に力を込める。

だが、もともと男女の筋力差は歴然としている。

理玖がほんのわずかに腕へ力を込めて引き寄せただけで、紬はあっけなく体勢を崩し、再び彼の厚い胸の中へ倒れ込んでしまった。

何度も繰り返される攻防に、紬の額には細かな汗がじんわりと浮かぶ。

呼吸を整えながら、彼女は半ば冗談めかして口を開いた。

「りっくん、本気で少しダイエットを考えたほうがいいんじゃなくて?」

すると耳元すぐ近くで、男の低く掠れた笑い声が響いた。

二人の距離は、お互いの吐息が触れ合うほど近い。

紬のわずかに乱れた、どこか艶を帯びた呼吸が、そのまま理玖の鼓膜を震わせていく。

理玖は胸の奥で燃え盛る想いを、もはや抑え切れなかった。

灰色の瞳は、目の前の潤んだ紅い唇へと吸い寄せられるように釘付けになる。

紬の心臓は、早鐘のように激しく打っていた。

ふと顔を上げた瞬間、彼女の視線は、澄み切った灰色の瞳と真正面からぶつかる。

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