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第892話

Autor: タロイモ団子
「でも、私が最初から欲しかったのは、あなたの心だけだったのよ!」

望美は成哉の黒い瞳をじっと見つめ、魂を揺さぶるような切実な声を絞り出した。

成哉ははっと表情を強張らせた。立ち去ろうとしていた足が、ぴたりと止まる。

その視線が望美の顔に注がれた。今の言葉にどれほどの真実が含まれ、どれほどの嘘が混じっているのかを見極めようとするかのように。

だが、望美はまばたきひとつせず、美しい瞳で成哉をまっすぐに見つめ返した。

「私たちの間には、もう子供がいるのよ。私が望んでいるのは、ただ穏やかに暮らすことだけ。それ以外には、もう何もいらないわ」

成哉はその場に立ち尽くした。目の前にいる望美の痛々しいほどに可憐な姿が、記憶の中にある温厚で優しかった頃の面影と重なり合う。

成哉の瞳に、再び迷いの色がよぎった。

望美はその隙を逃さず、少しずつ成哉へと歩み寄った。低く柔らかな声に、どこか甘い響きを滲ませる。

「成哉、私に対して、もう本当に何の感情も残っていないの?自分が欲張りすぎたことは分かっているわ。でもそれは全部、あなたを心から愛しているからこそなのよ」

瞳に涙をいっぱいに溜めたまま
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