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第3話

Author: スキ
翌日、私は朋花と亮介の家を訪ねた。

朋花がSNSに載せていた写真を手がかりに、2人の住むマンションを探し当てた。

インターホンを何度も鳴らし、しばらくしてようやく朋花がドアを開けた。私を見るなり、彼女の目が赤くなった。

「乃絵……」

私は朋花の脇をすり抜け、家の中を見渡した。

玄関にはスリッパが3足並び、靴箱の上には子どもの工作が置かれていた。冷蔵庫にも、子どもが描いた家族の絵が貼られていた。

絵の中では、パパとママが男の子と手をつなぎ、3人の頭上には大きな太陽が描かれていた。

壁に飾られた写真も、3人で写った家族写真ばかりだった。

その真ん中には、子どもが生まれた日に撮った写真が飾られていた。

亮介は生まれたばかりの千隼を抱き、朋花は病院のベッドにもたれていた。顔色は悪かったが、幸せそうに笑っていた。

写真の下には、日付が書かれていた。

6年前の9月12日。

指先が強張った。

その日は、亮介と一緒に結婚式用のスーツを見に行く約束をしていた。

午後から夜まで待って、ようやく届いたのは、たった1通のメッセージだった。

【プロジェクトで急な問題が起きた。結婚式はもう少し先にしよう】

あのとき、私はウェディングドレスのカタログを抱え、自分に言い聞かせていた。

大丈夫。彼はただ忙しいだけ。

けれど、私が結婚式を先延ばしにすると告げられたその日、彼は朋花と千隼と一緒に家族写真を撮っていたのだ。

背後で、朋花が涙声で謝った。

「乃絵、ごめんなさい……」

私は振り返らなかった。

「この何年か、私が亮介の悪口を言うたびに、あなたも一緒になって彼を責めてくれたよね?」

朋花はさらに激しく泣いた。

私は乾いた笑いを漏らした。

「結婚してくれないし、いつも海外にばかり行ってるし、私のことなんてそれほど好きじゃないのかもって話すたび、あなたは私を抱きしめて、考えすぎだよって言ってくれた。

朋花、私を抱きしめながら、何を考えてたの?」

朋花は口元を押さえ、立っているのもつらそうなほど泣いていた。

亮介が駆けつけてきても、最初に口にしたのは私を気遣う言葉ではなかった。

部屋の様子を見るなり、彼の顔色が変わった。すぐに朋花に向き直り、問い詰めた。

「どうして家に入れたんだ?千隼もいるのに」

私は小さく笑った。

「今になっても、あなたがいちばん心配なのは子どものことなんだね」

亮介は眉をひそめた。

「乃絵、そんなこと言うな」

「私がどうしたっていうの?」

声がひどく震えた。

「8年もあなたを待って、やっと目にしたのが、あなたたち3人の家族写真だった。

亮介、私のこの8年は何だったの?」

亮介は喉を鳴らした。

「俺が何とかする」

また、同じ言葉だった。

この8年間、何度も聞いてきた。

結婚式を延期したときも、婚姻届を出すのを先延ばしにしたときも、私が1人でウェディングドレスの店に残り、閉店まで待ったときも、彼は何とかすると言った。

けれど、結局彼がしたのは、私を置き去りにし、別の女性と子どもとの家庭を築くことだった。

言い争う声が大きくなる中、子ども部屋のドアが開いた。

恐竜のおもちゃを抱えた千隼が、怯えた様子でこちらを見ていた。

「お姉さん、僕のパパを取っちゃうの?」

私はその場に凍りついた。

亮介はすぐに千隼を自分の後ろにかばった。

「千隼、部屋に戻りなさい」

けれど、千隼はすっかり怯えてしまっていた。

朋花はしゃがみ込み、震える声でなだめた。

「千隼、大丈夫。ママはここにいるからね」

3人が抱き合う姿を見て、全身から力が抜けた。

もう何も聞きたくなかった。

亮介が誰を愛しているのかも、朋花が後悔しているのかも、2人がどうやって私を騙してきたのかも。

何もかも、どうでもよかった。

私は背を向けて家を出た。

エレベーターの前まで来たとき、背後から朋花の慌てた声が響いた。

「千隼?」

私は振り返った。

子ども部屋のドアは開いたままで、中は空っぽだった。

さっきまでそこにいた千隼の姿が、どこにもなかった。

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