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第4話

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朋花の顔が、さっと青ざめた。

子ども部屋に駆け込み、ベランダや洗面所まで探し回る。千隼を呼ぶ声は、だんだん上ずっていった。

「千隼!」

亮介も慌てていた。管理人に電話をかけながら、階段へと駆けていった。

私は玄関に立ち尽くした。心臓が嫌なほど速く打っていた。

ついさっきまで部屋にいたのに、どうして急にいなくなったの?

もう気まずさを気にしている場合ではなかった。私も2人と一緒に千隼を探し始めた。

エレベーターや階段を調べ、中庭から地下駐車場まで走り回った。何度も千隼の名前を呼び、すぐに声がかれた。

昨夜、ハイヒールで擦りむいたかかとの傷から、また血がにじんできた。1歩踏み出すたびに、鋭い痛みが走る。

それでも、足を止めなかった。

朋花は今にも倒れそうなほど取り乱していた。

支えようと手を伸ばすと、朋花は熱いものに触れたように、さっと手を引いた。

拒まれたことが、思いのほかこたえた。

1時間後、管理人から連絡があった。防犯カメラには死角があり、今のところ、千隼がどこへ行ったのか確認できていないという。

朋花はとうとう耐えきれなくなった。

髪を振り乱し、真っ赤な目で私の前に詰め寄った。

「乃絵、私を恨むなら好きなだけ恨めばいい。私に何をしたっていいから、子どもには手を出さないで」

私は朋花を見つめ、息が詰まった。

「私は千隼を隠してなんかいない」

「じゃあ、どうしていなくなったの?」

朋花の声はかすれ、涙が次々と頬を伝った。

「もう、あの子しかいないのに……」

その言葉が、何よりこたえた。

以前、彼女は私を抱きしめて言ってくれた。

「乃絵には私がいるよ」

それなのに今、朋花は亮介の隣に立ち、私が子どもを使って仕返しをするのではないかと疑っていた。

亮介も、いら立ちを隠そうともせず私を見ていた。

「乃絵、これ以上みっともない真似はするな」

亮介の言葉に、心がすっと冷えた。

「あなたも、私が千隼を隠したって思ってるの?」

亮介は私を見据え、聞いたこともないほど冷たい声で言った。

「あの子が朋花にとってどれだけ大切か、分かってるだろ。それなのに、子どもに八つ当たりするなんて。

八代乃絵、お前、いつからそんなにひどい人間になったんだ?」

その瞬間、私は何も言えず、その場に立ち尽くした。

私だって、さっきからずっと一緒に探していた。

喉が痛くなるまで千隼の名を呼び、かかとからにじんだ血が靴の縁を赤く染めるほど歩き回った。

それなのに、2人には何も見えていなかった。

千隼がいなくなった途端、真っ先に疑われたのは私だった。

説明しようとした、そのときだった。

朋花が突然手を振り上げ、私の頬を思いきり叩いた。

頬に焼けつくような痛みが走った。

朋花は息もできないほど泣きながら、私を見つめた。

「乃絵、もし千隼に何かあったら、この先、絶対にあなたを許さないから」

朋花は言葉を切り、震える声で続けた。

「今日から、私たちはもう友達じゃない」

私は彼女を見つめたまま、涙さえ出なかった。

ずっと昔、朋花は私をかばおうとして、誰かに突き飛ばされ、階段から落ちたことがあった。額を5針も縫うけがだった。

私は泣きながら、痛くないのかと尋ねた。

それでも彼女は笑って言った。

「何言ってるの。私たち、親友でしょ?」

あんなに仲がよかった私たちが、こんなふうに終わるなんて。

そのとき、亮介のスマホが突然鳴った。

管理人からだった。マンションの裏門近くにあるコンビニで、千隼らしき子を見かけた人がいるという。

朋花はすぐに向きを変え、外へ走っていった。

亮介もその後を追い、私には何も言わなかった。

痛む頬に手を当てると、乾いた笑いが漏れた。

結局、最後まで私は1人きりだった。

2人が戻ってくるのを待つつもりはなかった。

家に帰ると、前からまとめてあった荷物を引きずり出し、タクシーで空港へ向かった。

保安検査を受けてから搭乗するまで、スマホの電源は1度も入れなかった。

飛行機が雲の上に出てから、ようやく窓の外を見た。眼下で街が少しずつ小さくなっていった。

あの街には、8年間愛し続けた人がいる。

そして、かつて誰よりも大切だった親友もいる。

けれど、もう……

私はSIMカードを折って、使えないようにした。

亮介、朋花。

もう会うことはない。

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Aktuellstes Kapitel

  • 連絡先に隠された、もう一つの家庭   第10話

    亮介が凪浜市に滞在して3日が経った。無理に近づこうとはせず、毎日会社の前に立ち、私が出勤してから退勤するまで見ていた。3日目の夕方、朋花もやってきた。千隼は連れていなかった。彼女は1人で通りの向こう側に立ち、紙袋を手にしていた。私を見つけると、たちまち目が赤くなった。「乃絵……」私は足を止めた。亮介は少し離れたところに立ったまま、こちらへは来なかった。朋花は紙袋を差し出した。紙袋には、2人の思い出の品がいくつか入っていた。大学時代に2人で撮ったプリクラ。朋花が額を5針縫うけがをしたあと、私が買ってあげたヘアピン。それから、私が贈ったお守りのペンダント。朋花は涙声で言った。「本当は、こんなものをいつまでも持っている資格なんてないよね」私は受け取らなかった。朋花の手が、宙で止まった。長い沈黙のあと、彼女はゆっくりと手を下ろした。「あの日、千隼がいなくなったとき、乃絵を疑うべきじゃなかった。それに、あなたを叩いたりして……本当にごめんなさい」涙が頬を伝った。「謝ったくらいじゃ、どうにもならないって分かってる。でも、私は本当に、あなたにひどいことをした」彼女を見ていると、ふいに、ずっと昔のことを思い出した。狭いベッドで2人並んで寝た夜、朋花は1枚しかなかった厚い布団を私にかけ、自分は寒さに震えていた。胃が痛くて動けなかったときには、私を背負って病院の廊下を走ってくれた。体を大事にしない私に、泣きながら文句を言っていたこともあった。あの頃、彼女が優しかったのは本当だ。それでも、裏切られたことに変わりはない。私は静かに口を開いた。「朋花、私たち、昔は本当に仲がよかったよね」朋花は、さらに激しく泣き始めた。「だから、もうここで終わりにしよう」朋花の肩がびくりと震え、顔がみるみる青ざめた。ようやく亮介がこちらへ歩いてきた。私を見つめ、かすれた声で言った。「乃絵、俺と朋花は離婚するつもりだ。千隼のことは俺も責任を持って育てる。でも、お前にしてしまったことも、できる限り償いたい」私は首を横に振った。「あなたが私にしたことは、もうなかったことにはできないよ」「じゃあ、あの8年間はどうなるんだ?」彼の目には、深い痛みがにじんでいた。

  • 連絡先に隠された、もう一つの家庭   第9話

    凪浜市で新しい仕事を見つけた。給料はそれほどよくない。それでも、もう誰かの都合に合わせて予定を変えなくていい。毎朝、海に架かる橋を渡るバスに乗る。窓の隙間から潮風が吹き込み、ほのかな塩の匂いが鼻をかすめる。しばらく風に当たっていると、少しずつ頭がすっきりしていく気がした。最初の1か月は、夜中に何度も飛び起きた。あの個室で聞いた、電話越しの声。千隼に、パパを取っちゃうのかと尋ねられたこと。朋花に頬を打たれた瞬間。目を覚ますと、部屋は真っ暗で、窓の外に街灯がぼんやりとにじんでいるだけだった。以前は、悪夢にうなされるたびに亮介が私を抱きしめてくれた。「怖がらなくていい。俺がいるから」けれど、彼は朋花や千隼にも、同じように「俺がいる」と言っていたのだ。少しずつ、1人で暮らすことにも慣れていった。1人で病院へ行って、足の傷を診てもらう。1人で食事をする。着なくなった服を処分する。ある週末、朋花からもらったマフラーを紙袋に入れ、マンションの下にある古着の回収ボックスに入れた。手を離した瞬間、胸がちくりと痛んだ。それでも、もう拾い上げる気にはならなかった。2か月後、亮介が私を見つけた。その日、仕事を終えて会社のビルを出ると、街灯の下に彼が立っていた。ずいぶん痩せていた。顎には青いひげが伸びている。私に気づくと、彼の目がぱっと輝いた。「乃絵」私は足を止めた。潮風が頬をかすめていった。彼の声を聞いても、昔のように胸が高鳴ることはなかった。懐かしいはずの声が、もう戻れない過去から聞こえてくるようだった。亮介が近づいてきた。声はかすれていた。「ずっと探してたんだ」私は彼を見つめた。「何のために?」亮介は小さく喉を鳴らした。「千隼は見つかった」「知ってる」「俺たち、お前を誤解してたんだ」私は小さく笑った。「それで?」その言葉に、亮介は黙り込んだ。謝罪も言い訳も、後悔を伝える言葉も、きっと何度も考えてきたのだろう。それでも、いざ私を前にすると、うまく言葉にできないようだった。「乃絵、俺が悪かった。お前を騙して、ずっと1人で待たせてしまった。千隼がいなくなったときも、あんなひどいことを言ってしまった。本当にすまなかった」亮介の目が赤

  • 連絡先に隠された、もう一つの家庭   第8話

    15日後、朋花は同窓会のグループチャットに長文のメッセージを投稿した。メッセージでは、7年間結婚していることを隠していたこと、亮介が海外出張だと言っていた日の大半は実際には朋花と千隼と過ごしていたことを明かした。さらに、千隼がいなくなったあの日、私も一緒に探していたのに、亮介と2人で私を疑ってしまったことも認めていた。投稿のあと、グループチャットにはしばらく誰からも返信がなかった。以前、私を羨ましがっていた同級生たちが、遠慮がちに尋ね始めた。【乃絵は?】【今、どうしてるの?】朋花は何も答えなかった。彼女にも、私がどこにいるのか分からなかったからだ。亮介がそのメッセージを読んだとき、彼はまだ私の部屋にいた。私が残していったものを、次々と段ボール箱に詰めていた。ペアのマグカップ、マフラーの入っていた箱、3年前の結婚式の招待状。それに、私が書き込んだ結婚式の進行表もあった。どのページにも、私の字で細かく書き込まれていた。ヘアメイクの開始時間、式場に向かう時間、披露宴で各テーブルを回る時間。朋花が当日着るドレスの色まで、細かく書き込んであった。亮介はその1行を見つめているうちに、目を赤くしていった。結婚式を1度延期しても、もう1度延期しても、亮介は私がいつまでも待つと思っていた。私が彼を愛しているから。彼を諦められないから。けれど、どれほど深く愛していても、失望が重なれば、いつか気持ちは冷めてしまう。亮介は、そのことを分かっていなかった。朋花は千隼を連れて、家を出た。引っ越す日、千隼は恐竜のおもちゃを抱え、玄関に立っていた。小さな声で亮介に尋ねた。「パパ、お姉さんはまた帰ってくる?」亮介は答えられなかった。朋花はしゃがみ込み、千隼の頭をそっと撫でた。「もう帰ってこないよ」千隼は目をぱちぱちさせた。「僕があの日、勝手にいなくなったから?」朋花の目が、また赤くなった。「違うよ。悪いことをしたのは、大人のほうだから」亮介はそばに立ったまま、胸が詰まる思いだった。朋花は鍵を靴箱の上に置いた。「亮介、私たちも、もう終わりにしよう」亮介は顔を上げ、彼女を見た。朋花は静かに続けた。「あのとき、子どもを産むと決めたのは、怖かったから。そのあ

  • 連絡先に隠された、もう一つの家庭   第7話

    亮介がウェディングドレスの店を訪ねたのは、私がいなくなってから3日目のことだった。店員は私のことを覚えていた。あの日、私がドレスを試着している最中に階段から落ち、足首がひどく腫れていたことも。「病院にお連れしようとしたんですが、彼氏が迎えに来てくれるから大丈夫だっておっしゃって……」店員は亮介を見ながら、少しためらいがちに続けた。「そのあと、ずっと入口で待っていらしたんです。外が暗くなってから、ようやくウェディングドレスの入った袋を持って、1人で帰られました」亮介はその場に立ち尽くし、顔をこわばらせた。あの日、私から電話がかかってきたことを思い出していた。電話越しの私の声は、痛みで普段とは違っていた。けれど、あのとき亮介は千隼と一緒に親子教室にいた。先生に促され、父親たちが子どもを抱っこしてゲームをしていた。朋花はそのそばで笑っていた。私からの着信に気づくと、亮介は教室の外へ出て電話に出た。迎えに来てくれるかと尋ねる私に、彼はこう言った。「乃絵、俺は本当に疲れてるんだ。そんな些細なことでわがまま言わないでくれ」その夜、亮介が帰宅したとき、私はもう眠っていた。ベッドのそばに痛み止めが置いてあるのを見ても、彼はただ、私の肩まで布団をかけ直しただけだった。翌日、彼は花を買ってきて、何事もなかったかのように私の機嫌を取った。店員は袋を1つ取り出した。「こちらは、八代さんがお忘れになったヘアピンです。取りに来ていただこうと思っていたんですが、何度電話してもつながらなくて」そのヘアピンは、朋花と一緒に選んだものだった。結婚式の日には、これをつけたら絶対に似合うと言ってくれた。亮介はヘアピンを受け取った。握る指先が、少しずつ白くなっていった。ウェディングドレスの店を出た亮介は、次に私が勤めていた会社へ向かった。同僚によると、私は数日前には退職を申し出て、引き継ぎも進めていたという。「しばらく休みたいって言ってました。どこへ行くのか聞いても、教えてくれませんでした」私は衝動的に姿を消したのではない。ずっと前から、この街を離れる準備を進めていたのだ。亮介は、そのことにまるで気づいていなかった。朋花も私を探していた。何度もメッセージを送ったが、どれも送信エラーになって

  • 連絡先に隠された、もう一つの家庭   第6話

    飛行機が着陸したころ、空はようやく明るくなり始めていた。私は窓際の席に座り、見知らぬ街の明かりを眺めていた。客室乗務員が降機を案内しても、しばらく席を立てなかった。周りの乗客がほとんど降りてから、ようやくゆっくりと立ち上がった。かかとは痛みで感覚がなくなりかけていた。昨夜の傷が靴下に張りつき、少し動かすだけでも、また傷口が開きそうだった。スーツケースを引きずって空港を出た。冷たい風が頬に当たったとき、私はずっと泣いていたのだと気づいた。ここは凪浜市。思いつきで選んだ街ではない。大学を卒業した年、私は凪浜市にある会社から内定をもらっていた。あのころ、亮介は起業したばかりで、食事をする暇もないほど忙しかった。彼は私を抱きしめて言った。「乃絵、行かないでくれないか。俺にはお前しかいないんだ」朋花も笑いながら、引き止めた。「凪浜市は遠すぎるよ。本当に行っちゃったら、私、どうしたらいいの?」それで、私は残ることにした。あのときは、彼を愛していたからここに残るのだと思っていた。今思えば、私は何年もの間、自分から同じ場所にとどまり続けていただけだった。まずは病院へ向かった。医師はかかとの傷を処置しながら、眉をひそめた。「どうしてこんなになるまで受診しなかったんですか?」私は自分の足元を見つめ、小さく答えた。「歩き回っていて……」医師はそれ以上何も聞かず、薬を処方してくれた。緊急連絡先の欄に記入しようとして、ペン先が止まった。以前なら、迷わず亮介の名前を書いていた。急性胃腸炎で病院に運ばれたとき、駆けつけた彼のネクタイは曲がっていた。私の手を握り、これからはどこにいても真っ先に自分を頼ってくれと言ってくれた。その後も、彼は仕事であちこち飛び回っていた。ただ、私のために戻ってくることはなくなった。私は連絡先の欄を空白のままにして、用紙を看護師に返した。看護師から、できれば誰かの連絡先を書いておいたほうがいいと勧められた。私は首を横に振った。「大丈夫です」病院を出ると、新しい携帯回線を契約した。以前使っていたSNSのアカウントにも、ログインしなかった。2人が私を探しているのかも、後悔しているのかも、知りたくなかった。私は小さな部屋を借りた。窓からは海が

  • 連絡先に隠された、もう一つの家庭   第5話

    亮介と朋花がマンションの裏門近くにあるコンビニに駆けつけると、千隼はレジの横に座り、泣いていた。手にはいちご味のキャンディーを握りしめ、目は真っ赤になっていた。朋花が駆け込んでくるのを見ると、すぐに椅子から飛び降り、その胸に飛び込んだ。店員がそばで事情を説明した。千隼は1人で店に入ってきて、背伸びをしながらキャンディーをカウンターに置き、1個いくらなのかと尋ねたという。「ママが泣いてるから、甘いものを食べたら泣かなくなるって言ってましたよ」それを聞いた朋花はその場にしゃがみ込み、千隼を抱きしめて泣いた。肩が小刻みに震えていた。「ママはここにいるよ。大丈夫だからね、千隼。怖がらなくていいから」千隼は小さな手で朋花の服をぎゅっとつかみ、しゃくり上げながら尋ねた。「ママ、あのお姉さんって悪い人なの?」朋花の泣き声が、ぴたりと止まった。コンビニの明るい照明が彼女の顔を照らしていた。唇を何度か動かしたものの、すぐには言葉が出てこなかった。そばに立つ亮介も、まだ動揺を隠せずにいた。千隼の言葉を聞くと、亮介の表情もこわばった。長い沈黙のあと、朋花は千隼をいっそう強く抱きしめ、震える声で答えた。「違うよ。悪いのは、ママなの」亮介ははっとしたようにきびすを返し、外へ飛び出した。朋花が顔を上げた。「亮介?」彼は振り返らず、短く言い残した。「乃絵がまだ上にいる」けれど、亮介が部屋に戻ったとき、そこに私の姿はなかった。リビングの明かりはまだついていた。子ども部屋のドアは開いたままで、床には千隼が置いていった恐竜のおもちゃが散らばっていた。亮介は管理室へ駆け込み、防犯カメラの映像を確認した。画面には、1人でマンションのエントランスを出ていく私の姿が映っていた。うつむいたまま、ゆっくりと歩いていく。かかとの傷がまた開き、1歩踏み出すたびに鋭い痛みが走った。遠ざかっていく私の後ろ姿を見つめながら、亮介の呼吸は次第に速くなった。彼は私に電話をかけた。1回、2回、3回。何度かけても、電源は切られたままだった。朋花は千隼を抱いたまま、亮介の後ろに立っていた。泣き腫らした目で、監視カメラに映る私の寂しげな後ろ姿を見つめ、震える声で尋ねた。「乃絵、家に帰ったのかな……?」亮介は答えず、車

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