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第9話 割れたものの名前

Author: 星宮 凪
それから半年、怜司から連絡はなかった。

金沢店で始めた地域イベントが評判を呼び、私は北陸エリアの統括候補に選ばれた。

母も仙台の家を整理し、金沢へ移ってきた。

母は時折、怜司のことを尋ねた。

「本当に、もう戻るつもりはないの?」

私は笑って首を横に振った。

「お母さん。未練があることと、一緒にいて幸せになれるかどうかは別だよ」

二月の終わり、怜司の母が店を訪ねてきた。

以前よりひと回り小さく見えた彼女は、私に深く頭を下げた。

「あなたに支える役目を押しつけて、自分の息子が誰かを支えられる人間か、考えもしなかった。本当にごめんなさい」

私は彼女を許すとも、許さないとも言わなかった。

ただ、遠くから来た客として温かいお茶を出した。

帰り際、彼女は怜司が入院したことを告げた。

過労と胃潰瘍だった。

「あなたには連絡しないでくれと、あの子に言われていたの。でも、このまま黙っていたら、私が後悔すると思って」

迷った末、私は東京へ向かった。

病室の怜司はひどく痩せていた。

私を見ると驚き、それから困ったように笑った。

「どうして来たの?」

「お見舞い」

「来なくてよかったのに」

私は果物の詰め合わ
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    それから半年、怜司から連絡はなかった。金沢店で始めた地域イベントが評判を呼び、私は北陸エリアの統括候補に選ばれた。母も仙台の家を整理し、金沢へ移ってきた。母は時折、怜司のことを尋ねた。「本当に、もう戻るつもりはないの?」私は笑って首を横に振った。「お母さん。未練があることと、一緒にいて幸せになれるかどうかは別だよ」二月の終わり、怜司の母が店を訪ねてきた。以前よりひと回り小さく見えた彼女は、私に深く頭を下げた。「あなたに支える役目を押しつけて、自分の息子が誰かを支えられる人間か、考えもしなかった。本当にごめんなさい」私は彼女を許すとも、許さないとも言わなかった。ただ、遠くから来た客として温かいお茶を出した。帰り際、彼女は怜司が入院したことを告げた。過労と胃潰瘍だった。「あなたには連絡しないでくれと、あの子に言われていたの。でも、このまま黙っていたら、私が後悔すると思って」迷った末、私は東京へ向かった。病室の怜司はひどく痩せていた。私を見ると驚き、それから困ったように笑った。「どうして来たの?」「お見舞い」「来なくてよかったのに」私は果物の詰め合わせをテーブルに置いた。怜司は弱音を吐くこともなく、ただ尋ねた。「お母さんは元気?」「元気だよ」「店は?」「順調」そこで、会話は終わったように思えた。私は立ち上がり、帰ろうとした。怜司は布団をめくり、見送ろうとした。「寝ていて」「エレベーターまででいい」廊下は長かった。怜司は私の隣をゆっくり歩いた。怜司の手が何度か私の手に触れそうになり、そのたびにそっと離れていった。エレベーターの扉が開く直前、怜司が尋ねた。「紬。もし、あのとき沙耶がいなかったら、僕たちは結婚していたと思う?」私は少し考えた。「していないと思う」怜司の表情がこわばった。「どうして?」「沙耶さんが、私たちが別れた原因じゃないから」「沙耶さんは、もともとあった問題を早く表に出しただけ」私は怜司を見た。「沙耶さんがいなくても、仕事や友人、家族がいた」「私が絶対に離れないと思っている限り、怜司はいつも私を後回しにした」エレベーターが到着した。扉の外に立つ怜司の目が、赤くなっていた。「これから先は?」「私を待たないで」「それでも、僕が待ちたいと言ったら?」「待つかどうかは怜司

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