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ナマハゲ

last update Last Updated: 2025-04-12 12:04:46

「悪い子は居ねがー! 階段はねえがー!」

 ナマハゲと化したヨルハゲは、疲れなどどこ吹く風とばかりに両手を広げて疾走し、モンスターを見つけては、

「言うこど聞がねゴブリンはいねがー!」

 と蹂躙を繰り返した。何故ナマハゲをチョイスしたかは気分である。

 そろそろナマハゲごっこが飽きてきた時、16階への階段を見つけた。2時間以上は探しただろう。

「そろそろヘトヘトだ。早く休みたいよ」

 さすがに疲れの色が見えてきたのか、肩を落として溜息を吐く。トボトボとした様子で階段を降りると、先程までと代わり映えのしない16階の景色が視界に広がる。

「お花畑とか山岳地帯とか風景が変わってくれると盛り上がるんだけどねー……。セーフゾーンまであと少し、気合入れていきましょ!」

 深夜なので叫び声はあげなかったが、あと少しとばかりに更にスピードを上げ、セーフゾーンの明かりを目指して突き進む。30分ほど経っただろうか、ひときわ明るい光の漏れだす通路が見える。

(黒川選手、ゴールです!)

 着替える事など頭から抜け落ち、ただただ目的地にたどり着いた嬉しさから、ゴールテープを切るようにバンザイしながらセーフゾーンへと飛び込んだ。

「は?」

 ゴブリン20体、ゴブリンリーダー10体、ゴブリンアーチャー10体、ゴブリンメイジ10体が突如出現した。そう、モンスターハウスだ。

「ゲヒャゲヒャ!」

「ギヒィギヒィ!」

 ゴブリンたちは醜悪な笑みを浮かべ、罠に獲物が飛び込んできたことを心底喜んでいるようだ。

 ステータスを確認すると、MPは500を切っていた。

「俺を嵌めたのがそんなに嬉しいか……。 怒ったかんなっ!」

 慣れていないため、プリプリと可愛らしく怒ると、まるで鬼でも乗り移ったかのように怒気を発し、弾丸のようにモンスターの集団に突撃した。

「オラッ! スカタン! おたんこなす!」

 聞き慣れない悪口を吐きながら、質量を持った左右の影の爪が、弧を描く

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