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79.パク・ミンジェの計画

Autor: 紡里
last update Fecha de publicación: 2026-11-02 20:03:18

「せっかく集まったんだから、まずは乾杯しようか」

 パク・ミンジェが笑顔でシャンパンのグラスを持ち上げた。

 イーサン・タンは不機嫌そうな顔のままグラスを手に取った。朝倉倫子あさくらりんこもそれにならったが、向かいに座る牧野真帆まきのまほが気になって、味わうどころではない。

「実は、ドクター・マキノに相談されたんだ。妹の真帆を助けてくれって」

 パクは日本で手術の助手を務めたときに、牧野拓海まきのたくみと知り合いになっている。

 蒸し魚の醤油仕立てが運ばれてきた。

 店員が蒸し魚を取り分け、各人の皿に配っていく。

「さあ、料理が冷めないうちにいただこう!」

 ミンジェが笑顔で箸を手に取った。

 倫子は曖昧に微笑んだ。

 真帆は、そんな彼女を気にする様子もなく、料理を口に運んでいた。

「ドクター・リンは、自分がどんなことをされたか知りたくない?」

 パクはそのためにこの場を設けたとでも言うように、得意げな調子で問いかけてきた。

 それは目の前にいる真帆が、美琴と共謀して、何をしてきたかということだろうか。

 知りたい気持ちはある。

 けれど、聞いてしまえば、悔しい気持
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  • 離婚?上等!――クズ夫と裏切った親友を捨てた私は、世界一の外科医になって御曹司に溺愛されます!   82.イーサンの裏の顔

     郊外の閑静な屋敷に、警報音が響き渡った。 屋敷に常駐している警備員が、音のする方へ駆け出した。 お手伝いさんが、客間に泊まっているパク・ミンジェと牧野真帆に廊下に出ないように指示を出した。 現場はイーサン・タンの部屋の前。 家族の部屋があるエリアだ。 ドアは閉まったままで、イーサンは出てこない。 ドアの前で耳を塞いでいるのは、この家の娘メイリンだった。扇情的な露出度の高いネグリジェを着ている。 警備員は目のやり場に困りつつ、部屋から出てこないイーサンに大声で問いかけた。「坊ちゃん。痴話げんかですか? 何か問題が起きているわけではないのですね? 確認のため、ドアを開けて顔を見せてください」「警備員、いいわよ。もっと言ってやって!」 メイリンがはやし立てた。「俺の貞操の危機だ」「坊ちゃん、男が何を言っているんですか」 警備員が呆れたような声を出す。 騒ぎを聞きつけて駆けつけた家主は、その様子を見て頭を抱えた。「お前、なんて破廉恥な格好をしているんだ……」 何より、自分の娘のあられもない格好など、見たくない。 一方、娘は父親には見向きもせず、ドアを睨みつけている。足元には工具が転がっていた。鍵穴に傷がついている。「イーサン! 開けなさいよ! このうるさいのを止めなさい!」 メイリンは耳を塞いだまま、苛立たしげに足でドアを蹴りつけた。 イーサンはドア越しに声を出した。「おじさん。そこにいますか? 警報装置のBタイプです」「はあ……。そうか」 おじはため息をついてから、廊下を見回した。警備員が小さなピンを見つけて拾い上げ、おじに手渡した。 おじはそれを、騒音を出している小さな箱に刺す。 ぴたりと音が止み、廊下に静寂が戻ってきた。外から微かに虫の声が聞こえる。「この家を出たかった理由、ご理解いただけましたか?」 イーサンがドア越しに問いかける。「ああ。すまなかった。本当にこんなことをしでかしているとは……信じたくなかったよ」「……では、あとはそちらで対処してください」 自分の訴えを聞き流された苦い記憶を、イーサンは歯を食いしばって胸の奥に押し込んだ。「おいおい。こんな状態で寝るつもりか。リビングで……いや、書斎の方がいいか。話し合おう」「では、おばさんも呼んでください。メイリンを押さえられる人物が

  • 離婚?上等!――クズ夫と裏切った親友を捨てた私は、世界一の外科医になって御曹司に溺愛されます!   81.タンの一族

     イーサン・タンは朝倉倫子が少しずつ自分を意識しているのを感じて、緩む口元を手で隠した。 倫子の部屋の扉が閉まり、カチャリと鍵がかかる音がした。それを確認してから、イーサンは踵を返す。 倫子の部屋からレストランへ戻る途中で、タンの一族の重鎮から電話がかかってきた。 パク・ミンジェが持っている情報を確認するために、郊外の屋敷に案内していいと言う。そこに住むおじは、事業の傍らで諜報活動も得意とする人物だ。「これから向かうと深夜になりますよ」 今の時間なら、まだタクシーを拾えるけれど、おじに迷惑をかけるのではないだろうか。「その男が他の人間に情報を漏らす前に釘を刺しておかないといけない。マレーシアの老婦人も耄碌したようだ。墓穴を掘り続けるとはな」 ダティン・ザレハは一族の中で権力を振るううちに、それがどんな相手にも通用すると勘違いしてしまったのだろうか。 孫のヌール・ファラの失態を挽回するどころか、自らオーレリア・メディカル・グループを敵に回してしまった。更に、タンの一族も――「権力は人を狂わせますからね」「だが、イーサン。お前も一族と距離を置いていたのに、最近は会長と連絡を取っているらしいじゃないか。つまり、権力側に来るのだろう?」「必要に迫られて、やむなく――ですよ」「相変わらず、スカしているな」 その男は軽く笑って、電話を切った。   *** イーサンとパク・ミンジェ、牧野真帆を乗せたタクシーは、都会の喧騒から離れ、緑の多い高級住宅地へ向かった。 警備員がイーサンの顔を確かめてから、ゲートを開ける。 パクも真帆もレストランで陽気に振る舞っていたのが嘘のように、黙り込んでいる。「一気に酔いが覚めた。本当に御曹司だったのか」 パクがぽつりと言った。「ちょっと待って。ここってホテルじゃないの? 警備員がいるし、門もすごいし。私たち、何かとんでもないところに来ちゃった?」

  • 離婚?上等!――クズ夫と裏切った親友を捨てた私は、世界一の外科医になって御曹司に溺愛されます!   80.印象が変わる

    「ドクター・リンに被害が及んだら困ります。一族に連絡はしますから、そこで匿うかの審査を受けてください」 イーサン・タンンこれ見よがしにため息をついた。 レストランの個室から出て、イーサンは電話をかけに行った。「ドクター・リンはいいなぁ。こんなに大事に保護されて。ちょっと腕がいいくらいじゃ、医師にボディーガードなんかつかないんだよ」 パク・ミンジェは紹興酒に口をつけた。強めの酒を薄めずに飲んでいる。「倫子さんは大切にされて、ずるいですよ。羨ましいなー」 牧野真帆は、グラスに紹興酒を入れてサイダーを加えて、ジュースのように飲んでいる。 朝倉倫子は羨ましいと言われてカチンときた。「襲われる危険があるから護衛をしてもらっているのよ」 そして実際に襲われれば、イーサンが怪我をする。そんな恐怖も知らずに、なにが「ずるい」だ。 イーサンが戻って来た。 倫子の眉間にしわが寄っているのを見て、イーサンは片方の眉を上げた。「どうだった? タン一族で受け入れてくれそうかい?」 パクがそう尋ねる。「これから話し合うのですから、大人しく待っていてください。タンの方で引き受けない場合は、オーレリア・メディカル・グループの出張用のホテルを……」 そこまで言って、イーサンは言葉を切った。「正規の出張ルートで来ていたら、ホテルの手配もされているはず。仕事ではなく、休暇ですか?」 パクは目を泳がせた。「出張は、来週から。今は休暇中だ。だから、君に一緒に行って、真帆を保護してくれと頼んでほしいんだ。 真帆がドクター・リンの不名誉な噂を払拭する鍵だというのは嘘じゃない。僕は協力しているんだよ。 ドクター・リンのためなのだから、悪い話じゃないだろう?」 パクがおどけた口調で言う。「……わかりました。それでは、ドクター・リンを送り届けてから、行きましょう」「どういうこと? 私だけ先に帰るの?」 倫子は困惑した。ここにいたいわけではないが、追い出されるのは気分がよくない。「この二人はまだ食べ足りないようですから。食欲がないのに、付き合うことはないですよ」「イーサンさん。倫子さんにだけ優しいの? ずるくない?」 真帆は上目遣いで、イーサンに甘えるように見つめている。姫のようなプライドを感じさせる美琴に対して、真帆はべたっと

  • 離婚?上等!――クズ夫と裏切った親友を捨てた私は、世界一の外科医になって御曹司に溺愛されます!   79.パク・ミンジェの計画

    「せっかく集まったんだから、まずは乾杯しようか」 パク・ミンジェが笑顔でシャンパンのグラスを持ち上げた。 イーサン・タンは不機嫌そうな顔のままグラスを手に取った。朝倉倫子もそれにならったが、向かいに座る牧野真帆が気になって、味わうどころではない。「実は、ドクター・マキノに相談されたんだ。妹の真帆を助けてくれって」 パクは日本で手術の助手を務めたときに、牧野拓海と知り合いになっている。 蒸し魚の醤油仕立てが運ばれてきた。 店員が蒸し魚を取り分け、各人の皿に配っていく。「さあ、料理が冷めないうちにいただこう!」 ミンジェが笑顔で箸を手に取った。 倫子は曖昧に微笑んだ。 真帆は、そんな彼女を気にする様子もなく、料理を口に運んでいた。「ドクター・リンは、自分がどんなことをされたか知りたくない?」 パクはそのためにこの場を設けたとでも言うように、得意げな調子で問いかけてきた。 それは目の前にいる真帆が、美琴と共謀して、何をしてきたかということだろうか。 知りたい気持ちはある。 けれど、聞いてしまえば、悔しい気持ちや許せないという気持ちが湧き上がり、夜眠れなくなるかもしれない。「……今さら過去のことを聞いても、私の人生が戻るわけじゃないもの」 倫子は真帆を見た。 自分が奪われた時間は戻ってこないけれど、医師になり、未来を取り戻すことはできた。 それに対して、真帆が奪われたものは、果たして取り返しがつくのだろか?「……医師免許の不正取得に関わることなら、厚生労働省や警察に通報すべきよ。大学の入試や試験にも不正があったのなら、大学にも報告する必要があるでしょう。私が個人的に聞く話ではないと思う」 倫子が同情しても、何も変わらない。心を鬼にして、一線を引くことにした。 鮑のオイスターソース煮が運ばれてきた。「すみません。ジャスミン茶をいただけますか?」 倫子は店員に声をかけた。「かしこまりました」 店員が下がると、倫子は目の前の料理に視線を落とした。 食べる気になれない。せめて温かいお茶でも飲んで、気持ちを落ち着かせたかった。「倫子さん、冷たくない? 『再生の魔術師』ってちやほやされて、昔のことは関係ない感じ?」「なっ……」 美琴に利用された被害者かと思って

  • 離婚?上等!――クズ夫と裏切った親友を捨てた私は、世界一の外科医になって御曹司に溺愛されます!   78.日常に戻る

     まだ暑いが暦の上では秋になる頃に、朝倉倫子とイーサン・タンはシンガポールに戻った。 日本各地を巡り、倫子は依頼された手術を執刀した。イーサンは新たな病院を建てるため、地元の医療関係者と協議を重ねた。 その最中に、元夫から電話がかかってきたり、元親友が医師免許を正規に取得していないという疑惑が持ち上がったりと、心穏やかではいられない出来事が続いた。 それでも、故郷の花火を母と同級生の三枝哲郎と見ることができたのは、とてもいい思い出になった。 ただ、気になることがある。 あのとき、哲郎とイーサンのどちらを選ぶのか――という話が出た。 ただの冗談だったのか、それとも本気で考えるべきなのか。倫子には判断がつかなかった。「でも、少なくとも嫌われてはいない、ということよね」 頬に手を当てながら、倫子は考えた。夫に冷遇された経験が、倫子の自信を奪っていた。 哲郎とは高校からの付き合いだ。気心も知れているし、一緒にいて気を遣わずに済む。 右手の再手術やリハビリで、外科医としての自分があるのは、哲郎のおかげだった。 一方、イーサンは仕事上のパートナーであり、とても頼りになる存在である。彼に助けられたことは、一度や二度ではないし、いなくなったら困ってしまう。 どちらかを意識し始めると、今までどおりに接することが難しくなりそうで怖かった。 それよりも、相手から助けてもらうばかりで、自分は彼らに何かをしてあげただろうか。 考えても答えは出そうにない。倫子は小さく息を吐いた。 久しぶりに帰ってきた自分の部屋を見回す。 今回の長期出張は、週に一度掃除に入ってもらっていたので、それほど空気も澱んでいない。 スーツケースから洗濯物を出し、これから自分で洗濯するか、明日、家政婦に任せるか倫子は悩んだ。 通いの家政婦は、倫子が仕事をしている間に部屋へ入り、頼まれた家事を終えると帰っていく。鍵は入り口にいるコンシェルジュが対応してくれる。 倫子は洗濯物を手

  • 離婚?上等!――クズ夫と裏切った親友を捨てた私は、世界一の外科医になって御曹司に溺愛されます!   77.小さな亀裂

     イーサン・タンは朝倉倫子の手から受話器を抜き取った。「桐生さん。仕事先にプライベートな電話をかけてくるのは、いかがなものでしょう。冷遇していた元妻に、今さら泣きつくのはやめてください」『あ……申し訳ない。動揺してしまって、つい……』「患者さんの方が心細い思いをしているでしょうから、付き添ってあげたらいかがでしょう。失礼します」 イーサンは受話器を置いた。 倫子は自分が興奮してしゃべりすぎたことに気付いて、赤面した。 疲れすぎていて、自分のコントロールができなかった。「では、帰りましょうか」 イーサンに促されて、倫子は自分の荷物を持った。「みなさん、お騒がせしました。今の話は、どうか聞かなかったことにしてくださいね」 イーサンは人差し指を唇の前に当て、少しおどけるように言った。 倫子とイーサンが部屋を出ると、ひそひそと言葉が交わされた。「電話をかけてきた人って、桐生智也という名前だったよね」「あの美人女医の旦那さんでしょ。雑誌に出てた。IT関係の社長さん」「美人女医が首席卒業するために、朝倉先生を嵌めたって言ってた?」「そういう内容だったよね」「怖いねぇ」「でも、首席ってどこの大学かが重要じゃん。日本最高峰の大学のトップファイブに敵わないって、ざらにあるだろ。そんな肩書きにこだわられても、笑っちゃうことあるよな」「それは、自分の自慢かな?」「まあね」「そういえば、医師の国家試験を替え玉で他人に受けさせたって噂、あったよね」「本当だったのかな。だとしたら、医療を舐めてるよ。腹立つ」「美人女医の旦那さんが、朝倉先生の元夫? つまり結婚して離婚した?」「人間関係が複雑だなぁ。今の妻と子どもが入院中で、弱音を吐きたくて電話してきた?」「あんな元旦那がいたら、私だって海外の病院に就職して逃げるかも。まあ、語学力と採用されるかっていう問題はあるけど」「ふふ。あのコーディネーターが、がっちがちにガードしてたね」 智也の強引な電話は、倫子を疲れさせただけでなく、美琴への関心を集める結果になった。  *** そうとは知らない智也は、通話が切れたスマートフォンを眺めていた。「やっと本音を言ってくれたな」 智也はそう呟いた。 どんな境遇も黙って受け入れていた元妻。逆らったのは、離婚しようと言ったあのときだけだ。『職場に電話

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