共有

22.嫉妬と暴走

last update 公開日: 2026-01-24 19:03:01

麗華side

『お腹の子のことを思い出してしまって悲しいの。夜、会いに来てくれる?』

奏多にメッセージを送ったが、いつもなら数分もしないうちに返ってくるはずの返事が、今日は一向に届かない。既読すらつかないことに苛立ち、画面を叩くように何度もタップした。

昨夜、パーティーに行ってから、奏多は明らかにおかしかった。

知り合いの経営者を見つけたと言って突然私を置いて挨拶に行ったかと思えば、戻ってきても心ここにあらずといった様子で周りをきょろきょろと見渡していた。帰りの車内でも、隣に座る私に一度も視線を向けようとはせず、ただ硬い表情で窓の外を眺め、何かを激しく悔や

この本を無料で読み続ける
コードをスキャンしてアプリをダウンロード
ロックされたチャプター

最新チャプター

  • 離婚して、今さら愛してると言われても   132.甘美な嘘

    麗華side高級エステの個室でオイルマッサージを受けながら、私は昼間に遥と対面した時のことを思い返していた。「ふふ……あの女の顔。私を見つけた瞬間に顔を青ざめて必死に動揺を隠そうとする様子ときたら……。今頃は、俊さんと私が親密な関係を築いていることに、ショックと焦りで取り乱しているんじゃないかしら」私の計画は、完璧な滑り出しを見せていた。遥と住吉奏多の疑惑つき結婚秘話を、『元婚約者』として被害を受けたと暴露したあの夜。私の狙い通り、東宮俊はその餌にすぐに飛びついてきた。裏切られた可憐な元婚約者として同情を買い、連絡先を交換してからというもの、カフェやディナーなど俊と外食を重ねる時間は私の日常になりつつある。思った通り、彼は突然現れた「妹」の遥の存在を心の底では快く思っていないようだった。最初のうちは警戒心を解くことに専念して、感情的にはならずにいかにも客観的な事実を冷静に語る「思慮深い女性」を演じ続けたのだ。「遥さんは、住吉と一夜を過ごしたような記事をでっち上げて強引に結婚まで漕ぎつけたのです。あの時、住吉は成瀬家との巨大な商談を締結した直後で、周囲からは次期役員と噂されるほど高く評価されていました。私の内助の功もあって商談は成功し、落ち着いたら正式に婚約する予定だったのに……あのスキャンダルが出てしまったんです」目を伏せて、鼻をすすり泣くのを堪えているよう

  • 離婚して、今さら愛してると言われても   131.信憑性

    遥side「今のビジネスや将来のビジョンってどういうこと……? 本当に仕事の話なら、彼女じゃなくて住吉商事の社長である奏多と協議する方がビジネスとして合理的じゃないの?」社長室へ戻ってきた俊にすぐさま問い詰めると、 俊は小さく溜め息をついてからゆっくりと首を横に振る。その瞳は、どこか遠くの霧の向こうを見つめているようで、いつもの温かな兄の眼差しではなかった。「いや、話をすべきなのは彼女だ。彼女に聞きたいこと、彼女にしか分からないことがたくさんあるんだ」「……ねえ、最近麗華と頻繁に会っているようだけれど、どんな話をしているの?彼女が今までしてきたことを知っているのになんで、麗華となんか関わっているの?」「明らかにしなければならないことがある。そのためには、彼女の証言が必要なんだ……」「明らかにしたいことって……? もしかしてそのために私と住吉の結婚についても影で調べていたの?」俊の肩が一瞬だけ硬直した。その反応だけですべてを確信した。「なんでそれを……」「ごめんなさい。…&helli

  • 離婚して、今さら愛してると言われても   130.来客

    遥side午後、直人が業績の報告をするために俊のいる社長室に向かってすぐのことだった。まだ五分しか経っていないのに、スマホが鳴って画面を見ると、直人の名前が表示されている。(直人……? 向かったばかりなのに、何か資料に不備でもあったのかしら?)「もしもし、どうしたの?」「……遥。今、社長室の前まで来たんだが、俊さんは来客応対中でね。外で待機しているんだ。どうやらその来客というのが、星野社長らしいんだよ……一応報告した方がいいと思って」星野と言う言葉を聞いた瞬間、嫌な予感がして胸が大きく跳ね上がった。「嘘でしょ……? 私たちの会社とは何の取引もないはずよ。本当に、彼女なの?」「ああ。秘書に確認したから間違いない。社長室の中にいるのは間違いなく彼女だ」俊が、よりにもよって麗華を社長室に招き入れているなんて……耳を疑う情報に、指先が冷たくなる。「……打ち合わせは、もうすぐ終わるのよね?」

  • 離婚して、今さら愛してると言われても   129.空席

    遥sideこの日、直人にランチに誘われて車に乗り込むと創作和食が楽しめる落ち着いた雰囲気の店に着いた。中は全室個室で他の客の会話は全く聞こえない。「遥……この前、話をしていた住吉社長と星野麗華の件だけど……」  直人は言葉を慎重に選びながら、手元のタブレットを私の方へ向けた。「遥があの家を出てから現在に至るまで二人は独身のままで婚姻届は一度も出されていない。それと、彼女に子供がいる、あるいは妊娠していたと証言する人物は、調べてもらった限り一人もいなかったそうだよ」私は絶句した。耳を疑うような言葉に思考が追いつかない。「え、それなら……あのお腹の子は、産まれる前に……?」「ああ。残念だが、そういうことになるね。妊娠も周囲に知られていなかったということは、体型の変化が現れる前の初期の段階だったのかもしれない」心臓が冷たく収縮するのを感じた。「それなら私が離婚して家を出ていってすぐに流産したことになるわ……」

  • 離婚して、今さら愛してると言われても   128.疑問

    遥side「ねえ……今の」やっとのことで絞り出した私の声は、夜風にさらわれて消え入りそうに細かった。視界がぼやけ、街灯の明かりが歪んで滲む。そんな私を直人は言葉を失ったような切ない瞳で見つめ、私の両肩を静かに抱き寄せた。その体温だけが、今の私を繋ぎ止める。「遥……大丈夫だ。何か、俊さんには俊さんなりの理由があるはずだよ。理由もなしに、あんなふうに君を突き放すような人じゃない……」「でも…………」直人は私の言葉を遮るように、深く息を吐いた。「それにしても彼女は、なぜ今になって俊さんに近づくんだ。仮に過去のことを嘘で塗り固めて話したとしても、もう君と住吉社長は赤の他人じゃないか。もし言っていることが本当で、住吉社長と結婚する運命だったのなら、今なら何の障壁もなく結ばれるはずだ。わざわざ東宮家に踏み込んでくる必要なんてないはずなのに……」直人の指摘はもっともだった。けれど、麗華という女は、論理や合理性では測れない底なしの悪意で動いている。「きっと麗華は、私のことが憎くて、憎くてたまらないのよ。自分

  • 離婚して、今さら愛してると言われても   127.心変わり②

    遥side「このサラダ、おいしいね。無花果のドレッシングなんて珍しいけれどサッパリしていて案外合うものなんだね」直人が明るく話しかけてくるも私の耳には届かない。私の頭には麗華と一緒に車に乗り込んで去っていた光景が何度も何度も繰り返されている。(この前のカフェだけじゃなくて、今度は会社の前で堂々と会うなんて……。会社の車に乗せるのもそれほどまで麗華を信用しているという証なの?)「……遥、大丈夫?さっきの俊さんのこと、気になるよね。でも大丈夫だよ。俊さんは遥が悲しむようなことはしないよ。遥だってそう思っているでしょ?」「ええ、だけど……こんな期間を空けずに二人でいる姿を見ることなんてないから。もしかしたら、私が知らないところで頻繁に連絡をしたり会っているのかもって。それも最近ではなくもっと前から……」そう言えば麗華の就任パーティーの時も、呼ばれたのは俊と私だった。麗華の嫌がらせに反論してくれたのは直人で、俊は一言も口を出していない……考え出すとネガティブな思考が止まらない私に、直人はそっと手を重ねて優しく撫でた。「心配になるのは分かるけれど、今までの彼女の悪事を見てきたら誰も興味を持たないよ。むしろ敬遠して距離を置くはずだ。それが敢えて近づくと言うことは、それ以上の目的があるんじゃないかな?」俊に絶大な信頼を置いている直人は、私を笑顔で励まし続けてくれている。直人のようにブレずに信じ続けられる人でありたいと思うのに、過去が絡むと私の心は不安定になる。あんな過去を知ったら失望されるかもしれないという不安が常に付きまとうのだ。「今は目の前の料理を楽しもう。サラダ、美味しいから食べてみて。それともう少し一緒にいる俺のことも見て欲しいな。久々に二人きりで食事しているのにさっきからずっと上の空だ」直人が冗談っぽく拗ねた真似をしている。色んな言葉を使って場の空気を変えようとしてくれている直人。重ねられた手をひっくり返して指を絡めて、直人をじっと見つめた。「そうね、直人の言う通りだわ、ごめんなさい。……でも、私、直人が近くにいてくれて本当に良かったって思っているの。すぐ不安やネガティブになる私を直人が支えてくれて感謝している。ありがとう、直人がいてくれて良かった」直人の言う通り、無花果のドレッシングはサッパリとしているけれど、ほのかな香りもあって美味しい。直人

続きを読む
無料で面白い小説を探して読んでみましょう
GoodNovel アプリで人気小説に無料で!お好きな本をダウンロードして、いつでもどこでも読みましょう!
アプリで無料で本を読む
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status