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第572話

Autor: 風羽
数分後、九条薫は水谷燕とカフェで向かい合って座っていた。藤堂言は隣のソファで退屈そうに本を読んでいたが、二人の会話に耳を澄ませていた。

水谷燕は藤堂言を見て、悲しい気持ちになった。

かつて、藤堂言は自分を「水谷おじちゃん」と呼んでくれていたのに、今は忘れてしまっている。

彼は視線を九条薫に戻し、「大きくなったな」と言った。

彼は複雑な表情で、九条薫を見つめた。

もし九条薫が過去を覚えていたら、あれほど自分を憎んでいた彼女が、一緒にコーヒーを飲むはずがない......あの夜、彼女が車で自分を轢き殺そうとしたことを、彼は鮮明に覚えていた。

九条薫は、自分が誰なのかに気づいたのだ。

彼女はコーヒーをゆっくりとかき混ぜながら、静かに言った。「すみません、昔のことは何も覚えていない。あなたのことも......私たちに、何か特別な関係があったとは思えないけど」

水谷燕は、少し顔を上げた。

薄暗い照明の下、彼の目尻が潤んだ。

しばらくして、彼は静かに言った。「ああ、私たちはただの仕事仲間だった。君の依頼で裁判の弁護を担当した弁護士だ......君が元気そうで本当によかった」

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