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第881話
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離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい 第899話
九条時也はまず九条津帆の様子を見に行った。月は明るく、星はまばらだった。海のテーマで飾られた子供部屋で、小さな九条津帆はすやすやと眠り、片腕が布団からはみ出していた。九条時也はベッドの脇に座り、小さな腕を布団の中に戻した。彼は息子の顔を優しく撫で、その幼い顔を見ながら、九条津帆が日に日に大きくなっていくのに、自分が一緒に過ごした時間はあまりにも少なかったことを嘆いた。以前、彼にとって子供を持つということは、ただ子孫を残すことだった。しかし、九条津帆の成長を通して、彼は家族の温かさを実感し、今では九条津帆を深く愛している。九条津帆が成長し、結婚して子供を持つ姿をこの目で見届けたいと願っている。九条津帆は寝返りを打ち、寝言で「パパ」と呟いた。九条時也の心は、父親としての愛情でいっぱいになった。しばらくそこに座っていた後、彼はゲストルームへと向かった。ゲストルームにはベッドサイドランプの柔らかな光が灯り、水谷苑の寝顔に淡く降り注いでいた。どこか現実離れした美しさを醸し出していた。九条美緒は母親の腕に抱かれていた。小さな手で母親を抱きしめ、白い頬を母親の首にすり寄せ、ぐっすり眠っていた。吐息までもが甘い香りがした。九条時也は優しく微笑んだ。彼はベッドの脇に座り、子供の頬をつまんだ後、水谷苑の方へと手を伸ばした。布団の中に手を滑り込ませ、彼女の柔らかな体に触れ、ゆっくりと愛撫し始めた。水谷苑の呼吸は少し速くなった。彼女が目を覚ましたことに気づきながらも、九条時也は手を離さず、そのまま彼女の体を愛でながら、何気なく話しかけた。「部屋は気に入ったか？デザイナーに頼んで、女性が好きな丸いベッドに変えてもらったんだ」水谷苑は抵抗しようとしたが、彼はさらに強く握り締めた。彼女は小さな叫び声を上げた。薄暗い光の中、九条時也の視線は深く、大人の男の色気を漂わせていた。彼は意図的に彼女を誘うように、低い声で尋ねた。「ウォークインクローゼットで......どうだ？」水谷苑は静かに目を閉じた。黒い長い髪が枕に広がり、白い肌をより一層引き立て、儚げな美しさを醸し出していた。九条時也は彼女のこの表情が一番好きだった。彼はもう我慢できなくなり、今すぐにでも彼女を抱き上げて愛し合いたいと思った。まさにその時、九条
離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい 第898話
太田秘書は笑顔で言った。「住み慣れた家ですから、何の問題もありませんよ！」九条時也は笑って言った。「彼女が俺に慣れてくれるかが心配なんだ！実は、苑は時々、ちょっとしたワガママを言うんだ。お前は知らないだろうけど、今は彼女のご機嫌取りに必死だよ」太田秘書は内心、呆れていた。会社に住み込みで1週間。もらったのは社長からのノロケ話だけだった。九条時也はジャケットを手に取り、退社した。......夜になり、街ゆく人はまばらになった。露出の多い服を着た女たちが、道端で客引きをしていた。男たちと値段交渉をする姿は、見ていて痛々しい。九条時也は二度目の偶然に、田中詩織と出会った。前回と同じように、田中詩織はみすぼらしい格好をしていた。安い赤いワンピースを着て、男たちに体を売っていた。男たちは彼女を値踏みするような目で見ていたが、結局、金を差し出した。田中詩織は男の腕に抱きつき、ラブホテルへと向かおうとした。その時、彼女の視線が釘付けになった――九条時也の姿が目に入ったのだ。今回、彼は一人で、以前と変わらず、洗練された雰囲気を漂わせていた。田中詩織の唇は震えていた。彼女は我を忘れて彼の車の窓を叩いた。目に浮かぶのは、彼への懇願だった。自分を哀れんで、この苦境から救い出してほしい。自分の体を売って生きていくのはもう嫌だった。暗い夜。二人の間には車の窓一枚しかなかった。彼女は彼から目を離さなかった。車の窓は乱暴に叩かれ続けていた......九条時也は青信号に変わったのを見て、喉仏を上下に動かし、アクセルを踏んだ――田中詩織は夜の風に吹かれながら、一人取り残された。すると、先の男が戻ってきて、彼女をラブホテルへ引きずりながら、汚い言葉を浴びせた。それは聞くに堪えない、屈辱的な言葉だった。しかし、田中詩織は黒いロールスロイスが去っていく方向を、じっと見つめていた。九条時也からもらったお金は、男に騙し取られていた。彼女は男が真剣に自分との人生を考えていると信じていた。しかし、60億円もの大金が、こっそりギャンブルで使い込まれていたのだ............九条時也の車はゆっくりと別荘へと入っていった。彼はすぐに二階へ上がらず、リビングのソファに座り、タバコに火をつけた。薄い青
離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい 第897話
水谷苑は彼に寄りかかり、ドキドキしていた......その晩、彼は彼女のマンションに泊まった。彼は大人しくゲストルームに泊まったが、寝る前に子供たちに「おやすみ」のキスをしに来た。ついでに、彼女にも深いキスを落とした。二つの唇は、そっと触れ合い、重なり合った。......翌日、九条時也は会社に行く用事があった。太田秘書が水谷苑の引っ越しを手伝いに来た。彼女の荷物はそれほど多くなかった。帰国して間もない上に、必要なものは後から買い足せばいいからだ。午後3時、二台の黒い車が九条時也の別荘に到着した。高橋は使用人たちを連れて待機していた。水谷苑が九条津帆と一緒に車から降りてくると、高橋は目に涙を浮かべ、思わず「奥様」と呼びかけた。水谷苑は特に訂正せず、高橋の手を握り、感動したように言った。「長年、お疲れ様。美緒ちゃんを立派に育ててくれて、ありがとう......本当に人懐っこくて、可愛い子ね」高橋は涙を拭って言った。「私こそ、お気遣いなく。九条様は本当に苦労なさっていました。昼はお仕事で忙しいのに、夜は美緒様のお世話でした。出張の時もいつも一緒でしたし......」奥様、一つお伝えしたいことがあります。九条様は口には出しませんでしたが、あなたのお帰りをずっと待っていました。毎年春には、美緒様を連れて、香市にある河野さん夫婦のお墓参りに行っていました！奥様......」高橋はそれ以上は言わなかったが、水谷苑には彼女の言いたいことが分かっていた。高橋は慌てて涙を拭き、九条津帆を抱き上げて何度もあやした。九条津帆が小さい頃からずっと一緒にいたので、何年も離れていたら、寂しくないはずがない。高橋は九条津帆の小さな顔に頬をすり寄せ、涙を流した。九条津帆は少し照れていたが、高橋に抱きつき、大人しくしていた......高橋は声を詰まらせながら言った。「津帆様は、全然変わっていませんね。相変わらず可愛らしいです」九条美緒はむくれた。彼女は高橋の足にしがみつき、「美緒も可愛いもん！」と言った。高橋は彼女を抱き上げ、腰が砕けそうになりながらも、満面の笑みで言った。「二人とも、かわいいですよ」......九条時也は水谷苑の意思ををとても尊重していた。彼は水谷苑のためにゲストルームを用意していた。ゲストルームといっても、
離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい 第896話
二人はその2階建ての建物から出た。外は夕闇が迫り、空にはわずかに夕焼けの名残が見えている。小さな建物からは何かが壊れる音が聞こえてきた。佐藤潤が怒って何かを投げつけたのだろう。水谷苑は足を止めた。九条時也は彼女の方を向き、静かに尋ねた。「心が揺らいでいるのか？今の選択を間違えたと思っているのか？」水谷苑は空の夕焼けを見上げ、かすかに微笑んだ。「あんなに怒るなんて、体に悪いだけなのにね」あの時、佐藤玲司の言葉を聞いて、もし父親は怒らず、自分に佐藤玲司を拒ませていたら......こんなことにはならなかったのに。過去を振り返っても良いことはない。水谷苑は九条時也に「行こう！」と淡々と言った。二人は車に乗り込んだ。水谷苑はシートベルトを締めながら尋ねた。「どうして私がここにいるって分かったの？」九条時也は冗談めかして言った。「お前にはGPSを仕掛けてあるんだ」水谷苑はじっと彼を見つめた。九条時也は彼女の柔らかい頬に触れ、低い声で言った。「津帆から電話があったんだ。お前が連れ去られて、血を抜かれたって......彼が俺に助けを求めたから、来たんだ！」彼の言葉は真偽入り交じっていた。水谷苑はどれが本当でどれが嘘か分からず、それ以上聞くのはやめた。そして、街灯の光をぼんやりと眺めながら、静かに考え事をしていた。九条時也は長い指でハンドルを握り、時折、彼女の方をちらりと見ていた。車が交差点で止まると、彼はダッシュボードからタバコを取り出し、火をつけて吸ってから、彼女の方を向いて言った。「俺と一緒に暮らそう」水谷苑は静かに説明した。「あんな風に言ったのは、その場しのぎだったのよ」しかし、明らかに彼女の説明は効果がなかった。九条時也は彼女をじっと見つめ、ゆっくりと口を開いた。「その場しのぎでも、お前が握ったのは俺の手だ。近づいたのは俺のそばだ......苑、一緒に暮らそう。復縁を迫るつもりはない。ただ、お前と津帆の面倒を見たいだけだ。それに、美緒に会いたがってたじゃないか。美緒もお前が好きだ」彼がそう言うと、胸が締め付けられるような思いと、かすかな甘さがこみ上げてきた。車内は薄暗く、女物の香りと男の匂いが混ざり合い、曖昧な雰囲気を作り出していた。さらに、九条時也が彼女の手に優しく触れた。彼の手は大き
離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい 第895話
彼女の言葉には含みがあり、佐藤潤はそれに気づいた。彼は冷笑した。「彼を憎んだことないって言うなら、俺を憎んでたってことか！あの時、お前を海外にやったのは仕方なかったんだ。お前も分かってくれると思っていたんだが......今さら戻ってきて、佐藤家には入らないくせに、玲司と彼の妻を仲違いさせ、玲司は家に寄りつかなくなり、美月も倒れてしまった」水谷苑は聞き返した。「それを玲司に言うべきではないの？」佐藤潤は口を開こうとした、その時――秘書が入ってきて、水谷苑の前に煎れたお茶を置いた。「水谷さん、どうぞ」水谷苑は軽く頷いただけだった。置かれたお茶に目もくれなかった。佐藤潤はその様子に気づき、少し間を置いてから、今日の本題、つまり水谷苑への決定事項を告げた。「明日、津帆くんを連れて、屋敷に戻ってこい。お前はこれからも俺の娘だ。玲司と彼の妻のことは心配いらない。二人には家を出て独立させようと思っている」......水谷苑は呆然と聞いていた――実は彼女もかつては佐藤潤を尊敬していた。彼が守ってくれる時は本当に頼りになる良い父親だった。しかし、敵になると、彼はすぐに冷酷な人間になる。佐藤家に戻すのは、佐藤玲司のためなのだ。自分は、またしても犠牲者なのだ。水谷苑は小さく笑い、佐藤潤を見て尋ねた。「本当のところは、親心なの？それとも、玲司のために私を閉じ込めたいの？」佐藤潤の顔色は、みるみる悪くなった。水谷苑は目を伏せた。「真相を突かれたようね」佐藤潤のこめかみがぴくぴくと痙攣した。潤は目を伏せた苑を見つめた。かつてあれほど可愛がっていた娘が、今ではまるで疫病神のように自分を避けられている。確かに私心はある。だが、それは佐藤家のためを思ってのことなのだ......再び佐藤家の令嬢として暮らせるというのに、一体何が不満なのだろうか。佐藤潤は低い声で言った。「俺に親心がないと言うが、お前はどうだ......俺のことを少しでも考えたことがあるのか！」「言ったはずよ。佐藤家の家柄、私には到底及ばない」「苑......」佐藤潤が怒りを爆発させようとしたその時、秘書がドアをノックした。「潤様、九条社長がいらっしゃいました！」佐藤潤は激怒した。「どの九条社長だ？」秘書が答えるより早く、ドアが開き、
離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい 第894話
夕方、水谷苑は九条津帆を迎えに行った。そして、車に乗り込もうとしたその時、聞き慣れた声が聞こえてきた。「苑様、少しお時間をいただけますか」水谷苑は顔を向けると、佐藤潤のそばにいる遠藤秘書の姿があった。スーツ姿の遠藤秘書は、温厚で上品な様子だった。彼のそばには黒服の男が二人付き添っており、明らかに佐藤潤のボディーガードだった。彼らも水谷苑を「苑様」と呼んでいた。水谷苑は、遠藤秘書の言葉の裏に何かを感じ取った。彼女は微笑み、「そんな呼び方、やめてください」と控えめに答えた。遠藤秘書は本当に丁寧で、恭しい口調で言った。「苑様が帰国されてから、まだご自宅に帰られていません。潤様はあなたに会いたくて仕方がないのです。やむを得ず、苑様にオフィスまでお越しいただくようお願い申し上げました」遠藤秘書の態度はとても丁寧だ。しかし水谷苑は、この誘いを断ることはできないと分かっていた。黒服の男たちがいるのは、飾りではないのだ。彼女は少し考えてから、遠藤秘書に言った。「分かった、行こう。でも、その前に津帆を家まで送ってください。もし津帆に何かあったら、あなたを許さないから」遠藤秘書はすぐに答えた。「かしこまりました。苑様、ご安心ください」水谷苑はしゃがみ込み、九条津帆のランドセルを直し、優しく彼の顔を撫でながら言った。「ママはちょっと用事があるから、このおじさんに送ってもらって、先に帰っててね」九条津帆はもう7歳で、大人の事情も少しは理解できるようになってきた。白い小さな顔に、恐怖の色が浮かんでいた。「彼らは、ママの血を採るの？この前、僕みたいに？」遠藤秘書はバツが悪そうだった。前回の件は、佐藤家のやり方が確かに良くなかった。きれいごとでは済まされない。しかし、自分は佐藤潤の秘書だ。何も言えるはずがない。水谷苑は優しく微笑んだ。「大丈夫よ。ママは大人だから。ちゃんと自分の身は守れるわ」津帆は小さな声で言った。「パパがいたら大丈夫なのに！パパなら誰でもやっつけられるもん......パパがいれば、津帆は何にも怖くない」この言葉を聞いて、水谷苑の胸は締め付けられた。彼女は九条津帆に尋ねた。「パパと暮らしたいの？」九条津帆は力強く頷いた。彼は少し考えてから、続けた。「今のパパが好き。僕にも、美緒にも優しいし....
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