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第1065話

Author: 桜夏
そんなことをぼんやりと考えていると、また一人、こちらへやって来た。今度は、彼女の兄である聡だった。

聡は言った。「お前、こんな所で何してるんだ?さんざん探したぞ。昼食会が、もうすぐ始まる」

理恵は頷き、兄の方へ歩み寄った。

聡は妹の表情がいつもと違うことに気づき、何があったのかと尋ねた。

理恵は声を潜め、二人にしか聞こえないように、事の次第をかいつまんで兄に話した。

聡はそれを聞くと、一瞬黙り込み、ただこう尋ねた。

「本気で、橘さんにそう言ったのか?」

理恵は頷いた。

聡は、改めて妹を見つめ、どこか感心したように言った。

「大した度胸だな、お前。見直したぞ」

理恵は、言葉を失った。

……どういう意味だ?兄まで、自分をからかっているのか?

聡は、また言った。「しかし、橘さんも大物だな。それを黙って聞いて、反論もせず、お前と事を構えようともしないとは」

何しろ、どんな男であろうと、キスが下手だなどと言われれば、それは夜の営みが下手だと言われるのと同義だ。

多少なりとも、逆上するのが普通だろう。

もっとも。

あのホテルでの一件で、雅人は理恵に負い目があると感じ
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