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第109話

Author: 桜夏
「ガス漏れなんて知らなかったんだ。普段、料理なんてしない。知っていたら、透子を置いて美月だけを連れて逃げるはずがないだろう?」

「それは奥様ご自身に直接お伝えください。もしかしたら、まだ聞いてくださるかもしれませんが」

大輔は深いため息を漏らした。

「じゃあ、まだチャンスはあるってことか?透子にちゃんと説明できる!」

蓮司の目がきらりと輝き、興奮した声が弾んだ。

万に一つも望みなどない。あんなに断固とした態度で去っていったじゃないか。心はもうボロボロに傷ついているに違いない。

だが大輔は思い出した。奥様がかつて語った言葉を――蓮司という男は、自分に都合のいいことしか聞き入れないのだ。

だから彼は無理やり笑顔を作ると、そう告げたのだった。

「……どうぞ、ご尽力ください。努力さえすれば、後悔は残らないでしょうから」

「後悔などするものか。透子に謝って、すべてを説明すれば、あいつは絶対に俺を許す」

蓮司は再び闘志を燃やし、自信満々に言った。

大輔は彼を見つめた。さっきまで死にそうな顔をしていたかと思えば、次の瞬間にはまるで別人だ。テンションの浮き沈みが激しすぎる。

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