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第1227話

Author: 桜夏
悠斗は立ち上がり、口元に笑みを浮かべると、手土産とファイルを手にエレベーターホールへと向かった。

エレベーターが十階に到着すると、スティーブがすでに待機しており、恭しくお辞儀をして悠斗を招き入れた。「新井部長、こちらへどうぞ」

雅人のオフィスに入ると、雅人はまだ書類にサインをしており、顔を上げようともしなかった。

悠斗はそれを屈辱とは感じず、手土産をデスクに置き、礼儀正しく謝罪の言葉を述べた。

雅人は顔を上げず、淡々と言った。「君の兄の件については、すでに新井家の人から謝罪を受けている。君がわざわざ二度手間をかける必要はない」

悠斗は微笑んで答えた。「兄が度々、栞お嬢様に迷惑をおかけしました。

新井グループと瑞相グループは提携関係にありますし、兄は今、病院におりますので、弟である僕が代わって、その謝罪の気持ちを直接お届けに上がった次第です」

事情を知らない者が聞けば、さぞ仲の良い兄弟だと思うだろう。

だが、雅人も、傍らに控えるスティーブも知っている。二人が骨肉の争いを繰り広げていることを。

悠斗のその言葉は、あまりにも白々しく、偽善に満ちていた。

雅人もまた、悠斗の下心が別のところにあることを見抜いていた。

デスクの前で。

雅人からの返答がないまま二秒が過ぎ、悠斗は自ら言葉を継いだ。「思えば、兄と栞お嬢様の関係は、悪縁と言いますか……」

雅人は不機嫌そうに遮った。「もういい。無駄話は聞きたくない」

雅人はこれっぽっちも聞きたくなかった。透子と蓮司の関係など、微塵も残したくはないのだ。

雅人は相手の意図を質した。「単刀直入に、用件を言え」

この時間に悠斗が訪ねてきて、わざわざ「兄に代わって謝罪する」などと言うのは、雅人に協力を求めているからに他ならない。ビジネス面で蓮司を叩き潰すために。

雅人としても、それは望むところだ。そうでなければ、悠斗をここまで通しはしなかっただろう。

何しろ、蓮司は本当に腹立たしく、いつまでも付きまとってくる。

どうすることもできないが、足元をすくって苦しめることくらいはできる。

雅人の言葉を聞き、悠斗はすぐに微笑んで手元のプロジェクトファイルを差し出した。

そして、十分な誠意を見せた。プロジェクトの長期利益の四〇パーセントを、「利発」には入れず、すべて雅人に渡すというのだ。

「橘社長にとっては端金
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