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第812話

Auteur: 桜夏
雅人の父はそれを聞き、スマホをきつく握りしめると、「……うむ」とだけ、呻くように応えた。

電話が切れると、彼は厳しい表情で唇を引き結び、雅人のオフィスへと向かった。

――早急に手を打たねば、取り返しがつかなくなる。

新井家は既に真相を嗅ぎつけている。否、ほぼ確信していると言って過言ではない。しかも、先代からの両家の付き合いまで持ち出してきている。

相次ぐ凶悪事件に、新井家が黙っているはずがない。もはや金で解決できる問題ではないのだ。

蓮司の元妻が傷つけられただけなら、まだ弁解の余地はあったかもしれない。だが、蓮司本人まで巻き込んでしまった。

彼は交通事故に遭い、肋骨を二本も折った。彼は、新井のお爺さんにとって唯一の嫡孫であり、未来の新井グループを継ぐ男なのだ。

だから、もし剛が彼らに見つかれば、橘家と新井家は、修復不可能な仇敵となるだろう。

そんな事態を、彼が望むはずがない。ましてや橘家は今、京田市に大型物流拠点のプロジェクトを控えている。新井家の妨害が入れば、計画は頓挫する。

それゆえ、人情の面からも、利益の面からも、彼は事の重大さを痛いほど理解していた。

しかし
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