LOGIN「あるよ」真奈は少し考えてから言った。「遊園地にも行ってみたいし、ショッピングもしたい。値札を気にせずにお金を使う生活もしてみたい。それに旅行もしたいな。色んな街を見て回りたい」真奈の目は、未来の世界への憧れでいっぱいだった。真奈のその瞳を見つめ、冬城は沈黙した。「私にそんなこと聞いてどうするの?どうせ一緒に遊びに連れてってくれないんでしょ」冬城は突然、前世で真奈がいつも冬城と新婚旅行に行きたがっていたことを思い出した。しかし実際には、結婚式すら挙げていなかった。冬城はいつも「忙しい」を口実に、真奈のあらゆる要求を拒んでいた。冬城は言った。「行きたい場所を考えておけ。決まったら秘書に航空券を手配させる」それを聞いて、真奈は呆然とした。「でも、明日は定期テストがあるのに……」「君の成績なら、定期テストを受けなくても影響はないだろ」冬城は言った。「人生一度くらい好き勝手してもいいだろ。今回は、君が行きたい場所なら、どこでも付き合うよ」「どこでもいいの?」「どこでも構わない」「じゃあ、海外に行きたい」「わかった」「丸々7日間も行くつもりよ!」「一学期を全部使って、世界を回るって言っても、別に構わない」真奈はますます驚いた。「あなたの会社はどうするの?」冬城は胸の家紋バッジを外すと、そのまま窓から投げ捨てた。「会社なんてどうでもいい」この重荷には、もううんざりしていた。真奈の目がきらりと輝いた。冬城が自分と世界旅行をする気だとは思ってもみなかった。「じゃあ、北半球から始めましょう!世界一周するわよ。あなたのお財布、大丈夫?」「それは君が心配することじゃない。君は、どこへ行きたいかだけ考えていればいい」真奈が望むなら、どこでも。冬城は、世界のどこへだって真奈を連れて行くつもりだった。「私、行ってみたいのは……」真奈はよく考えてから言った。「フランスに行ってみたい。あそこはロマンチックな街だって聞くけど、一度も行ったことがないの」冬城は、すぐ横にいる真奈を見つめた。真奈は本来、瀬川家のお嬢様だ。行きたい場所があるなら、すぐ飛び立てる立場だったはずなのに。冬城はこれまで、真奈の苦しみをちゃんと見ようとしてこなかった。例えば、お嬢様である真奈が、実はずっと親戚の家
翌日、担任教師は再び保護者を呼び出した。今回もやって来たのは冬城だった。担任教師は諭すように言った。「冬城さん、真奈さんは昨日の宿題をやってきていません。真奈さんの話では、今あなたと一緒にお住まいだそうですが、本当ですか?」冬城は横にいる真奈を一瞥した。真奈はまるで他人事のように窓の外を見つめていた。「ええ」「冬城さん、確かに今は21世紀ですし、考え方も昔ほど堅くありませんが、真奈さんはまだ未成年です。今一番大切なのは勉強であって、恋愛ではありません。ですから……」担任教師自身、かなり言いづらそうだった。未成年で婚約者がいて、高校二年生で婚約者と同棲しているなんて、普通じゃない。こんな話が広まったら、周りにどう思われるか分かったものじゃない。「彼女の宿題は私がみます。ご心配ありがとうございます」冬城は傍らにいる真奈を見て言った。「鞄を持て、今すぐ帰るぞ」冬城の様子があまりにも厳しかったので、担任教師は慌てて立ち上がり言った。「冬城さん、本校は家庭内暴力には反対です。真奈さんはただ宿題をやってこなかっただけですから、きちんとやればいいんです。暴力は絶対にやめてください」「誰が暴力を振るうと言いました?」冬城の問い返しに、担任教師は気まずそうに咳払いをした。「だって、あなたが怖そうに見えるから、先生は私がDVに遭うんじゃないかと心配したのよ」横で聞いていた真奈は、完全に他人事みたいに口を挟んだ。冬城が真奈を一瞥すると、真奈は何も言わなかったふりをして、うつむいて自分のつま先を見つめた。車中。冬城が言った。「静かに勉強できる環境を整えてやったのに、宿題をやらない。俺が監視していないと、宿題をやらないってことか?」「いや、あなたが監視していても、やらないと思う」真奈は言った。「そもそも学校の宿題って多すぎるんだよね。生徒に考える時間を与えないくらい詰め込んで、短期記憶だけ鍛えて何の意味があるの?卒業して大学に入る頃には、もうそんな記憶はすっかり忘れてるわ。だったら若いうちにもっと意味のあることをした方がいいと思う」「何なら意味があると思う?」「自分が好きなことをするの」真奈が言った。「例えば、私は絵を描くのが好き、ピアノを弾くのも好き、今はただの趣味だけど、いつかはそれで食べてい
冬城は真奈の後ろについて行った。真奈はすっかり冬城家に興味津々で、あちこちを見て回っている。メイドが近づいて言った。「瀬川さん、客室はすべて二階にございます」「あ、そうなんだ!」真奈はメイドの後ろについて行った。冬城家の屋敷は巨大な迷路のようで、高校二年生の真奈にとっては、どこを見ても新鮮だった。冬城は真奈の後ろ姿を見て、思わずほのかな笑みを浮かべた。真奈が喜んでくれるなら、自分がしてきたことも、無駄じゃなかったと思える。「この部屋にしよう。広くて綺麗だし」真奈が選んだ部屋を見たとき、冬城の表情が一瞬固まった。メイドも呆然として言った。「瀬川さん、こちらは旦那様のお部屋です」それを聞いて、真奈も呆然とした。「あなたの趣味も私と似てるんだね。私もこの部屋が一番いいと思ったのに」「構わない、どうせ俺は滅多に帰ってこない。気に入ったなら使え」「じゃあ遠慮なく」そう言って、真奈はさっさと部屋に入った。冬城のベッドは輸入品で、とてもふかふかしていた。真奈は横になった瞬間、すっかり気に入ってしまった。「温かい牛乳を用意しろ」「どうして私が寝る前に温かい牛乳を飲むのが好きだって知ってるの?」「……女ならみんな好きだろ」その返答に、真奈は少しだけ疑いの目を向けた。でも、冬城が自分にここまで良くしてくれていることを考えて、真奈は深く考えなかった。とにかく、冬城が自分を調査したことはもう知っているんだし、生活上の些細なことを知っていても不思議じゃない。「ゆっくり休め。俺はまだ仕事がある」「あっ!ちょっと待って」真奈は突然ベッドから起き上がり、興味津々で聞いた。「あなたの家には人がたくさんいるけど、家庭教師もいるの?」「いない。もし学びたいなら呼ぶが」「勉強したいわけじゃないの、ただ、今日あなたが遅くまで遊ばせてくれたから、まだ宿題が終わってないの」「つまり、誰かに代わりに宿題をやらせたいと?」冬城がそんなに早く見抜いたのを見て、真奈はうなずきまくった。「そうそう、そういうこと!」「一つだけ言っておく」「承諾してくれたの?」「寝言は寝て言え」「……」真奈の表情は一気に曇った。冬城は言った。「宿題をする時間はちゃんと与えたはずだ」「そんな短い時間で何ができ
真奈は慌てて身を抱くようにして言った。「私はまだ高校二年生なのに、さっきまであなたを紳士だと思っていたのに。もしかして私を家に連れ込んで、それから私に……」話が進むにつれ、冬城の表情はますます険しくなった。「君は俺を何だと思っているんだ?」「初対面で家に連れて行こうとする危ないおじさん」「……」冬城はできるだけ口元が引きつらないようにしていた。十七歳の真奈の頭の中には、いったい何が詰まっているんだ?どうしてそんな発想になる?「よく聞け。君には今、二つの選択肢しかない。今すぐ俺の車に乗るか、それとも叔父の家に戻ってこれまで通り我慢するかだ」「……」冬城は続けた。「君の叔母が最近君に優しくなったのに気づいているだろう。はっきり言っておくが、それは君が今、俺の婚約者だからだ。もし俺が君との婚約を破棄したら、これから何年も君は苦労する。そして保証するが、俺が婚約破棄した女を、海城で引き取る男はもういないぞ」冬城の脅しは効果的だった。真奈は完全に黙り込んだ。「……車に乗ります」真奈はすぐに車に乗り込んだ。最初からそう言ってくれていれば、真奈はとっくに車へ乗っていた。寒い中で無駄に悩まずに済んだのに。車内では、二人は向かい合ったまま無言だった。冬城家に着いて、真奈は冬城の家がこんなに大きいことに驚いた。瀬川家も大きいが、冬城家の屋敷は瀬川家の数倍も大きかった。「これから君はここに住む。俺は普段ほとんど帰らない。せいぜい仕事終わりに寝に戻る程度だ。それなら君も俺に邪魔される心配はないだろう」それを聞いて、真奈はぽかんとした。「あなた……土日休みじゃないの?」「……」冬城は真奈をばかを見るような目で見た。その瞬間、冬城の頭に浮かんだ疑問は一つだけだった。真奈はどうしてこんなに頭の悪い質問をするんだ?「すみません。こういう大社長って、毎日お茶を飲んで、鳥かご持って散歩して、面倒なことは全部部下がやってくれるものだと思ってました。自分たちは世界中飛び回って遊んでるだけかと。私の偏見でした」「確かに君の言う通りだね」「え?」「俺たちみたいな人間は、普通の仕事には顔を出さない。国家元首と会ったり、国際会議に出たり、財界人と交流したり、パーティーに出席したりする程度だ。たまに記者会見を開い
「でも結局、どうして私を選んだのか話してないよね?私たちって前から知り合いだった?でも会ったことないし」真奈は冬城を不思議そうに見つめながら言った。「さっきから色々話してるけど、結局それって話逸らしてるだけじゃない?」「ただ伝えたかったのは、昔俺は彼女を失ったが、神は、もう一度やり直す機会をくれた、たとえそれが夢でも、俺にとっては何より大切な時間なんだ。俺なりに変わろうとはしている。だが、俺は本当に人を愛するってことを理解できないかもしれない」冬城にできたのは、冬城の婚約者という立場を使って、真奈が外部からのいかなる危害も受けないように守ることだけだった。冬城の方法は間違っていたかもしれないが、これが冬城が考え出せた最善の方法だった。真奈は言った。「それ違うと思う。誰かを好きになったからって、自分まで変えなきゃいけないわけじゃないでしょ。他の人のために自分を見失うなんて、悲しいよ。愛し方は人それぞれなんだから、その人が受け入れられなかっただけ。でも、いつかきっと、あなたの愛し方を好きになる人もいるよ」冬城は目の前の真奈を見つめ、現実世界の真奈の姿がまた見えてきたようだった。現実であれ夢であれ、真奈の性格がどう変わろうとも、真奈の魂だけは変わらない。真奈はあの真奈のままで、どんな人生を歩んでも、彼女は変わらず眩しいほど輝いている。「美味しいか?」「悪くないよ。ただ、ステーキがちょっと焼きすぎかも」真奈は食事をしながら、赤ワインまで飲んでいた。こういう生活こそ、瀬川家のお嬢様にふさわしいものだった。なのに、夢の中では、真奈はまだ両親を失ったあの真奈のままだった。おそらく冬城の心の奥底では、ずっと時間が巻き戻せたらと思っていたのだろう。もしすべてをやり直せるなら、冬城が救いたいのはこの時期の真奈なのだ。冬城は真奈が自分の肩にもたれかかり、これから先、二度と風雨に晒されなくて済むように願っていた。夕食を済ませた後、真奈は自然に店の外へ出た。「今日はご馳走さまでした。あなたの話を聞いてたら、婚約するのも悪くないかもって思えてきた」「どこがだ?」「お金持ちでハンサム、大人で頼れる。何より、あなたみたいな社長って、毎日が接待や出張でしょ。お金だけくれて家に帰ってこない旦那とか、最高じゃない?」「……」冬城
冬城はただ真奈の前に座って見つめていた。その目はまるで真奈の全てを見透かしているみたいだった。真奈はこのような視線が好きではなかった。それはまるで、一枚一枚自分の殻を剥がされていくような感覚だった。心の奥まで裸にされるみたいだった。「……吸えばいいんでしょ」真奈は目の前のタバコの箱を取り、中から適当に一本を抜き出した。真奈はそれを口にくわえたが、火をつけようとした時、冬城が口を開いた。「火をつけながら、一服吸い込むんだ」「……」真奈はその動作を試みようとしたが、火をつけるという最初の段階で、自分には全くできないことに気づいた。「私がタバコを吸えないから何だっていうの?」真奈は手に持っていたタバコの箱を置き、言った。「そうよ、私はタバコを吸えない。吸えるふりをしていただけ。告げ口したら?」そう言うと、真奈は椅子にもたれかかり、どうにでもなれという態度を見せた。冬城は言った。「告げ口するとは言っていない」「え?……告げ口しないの?」真奈は疑わしそうに冬城を見た。冬城は言った。「君は学校でわざと悪い生徒を装い、三日に一度は騒ぎを起こしている。問題を起こして、周囲を遠ざけているのも、結局は自分を傷つけられたくないからだ」「で、でたらめを言わないで!」真奈の目には、見透かされた慌てが一瞬よぎった。真奈は言った。「なんで私が傷つくの怖がらなきゃいけないの?私は瀬川家のお嬢様よ!」「君は瀬川家のお嬢様だが、同時に叔父の家に預けられている」冬城の言葉は、真奈の身にまとった最後の羞恥の布を剥ぎ取るかのようだった。「優秀すぎれば叔母に目をつけられる。かといって出来が悪すぎれば、瀬川家の面子を潰すことになる。だから君は、わざと強そうに振る舞ってる。そうすれば、誰も簡単には君を傷つけられないからな」「それは全てあなたの勝手な推測よ。証拠もないのに、勝手に決めつけないで」真奈は視線をそらし、言った。「私はもともと賢くない人間ですから、冬城社長にはがっかりさせてしまいましたね」「本心を話したくないなら、それでも構わない。俺はただ、君に辛い思いをさせたくないだけだ」冬城は淡々と言った。「俺の婚約者になるなら、他は保証できなくても、少なくとも海城で好きなように生きることは保証する。また、誰にも傷つけさせない
とはいえ、真奈はこの件を特に気に留めてはいなかった。佐藤茂が彼女をデビューさせようとしたのも、さほど真剣ではなかったのかもしれない。ちょうど瀬川家が破産したことで、彼女のデビューが世間の支持を得やすく、佐藤家やMグループにとっても話題作りに最適だっただけのこと。それに、彼女自身の契約書には、辞めた場合は違約金を支払うといった条項はひとつも見当たらなかった。初日は、真奈にとってただの環境慣らしだった。その夜、高橋は練習生全員たちのプロフィールを彼女に見せた。先頭に立ち、冷ややかな雰囲気を纏っていたあの少女の名前は天城吹雪(あましろ ふぶき)。父親が取締役である少女は清水雅美(
彼女の記憶の中で、前世の瀬川家が財務面で不祥事を起こしたことなど、一度もなかった。この件はあまりにも不気味だ。「社長!」大塚が慌てて飛び出してきたが、今は何もできず、ただ焦るしかなかった。真奈はそんな大塚に向かって、静かに首を横に振った。今は騒ぎを大きくしないことが最優先だ。このまま警察に同行し、冷静に対処するしかない。彼女がやっていないことは認めない。その頃、ネット上ではすでに「瀬川真奈、汚職と横領の容疑で逮捕」といった芸能ニュースが流れ始めていた。昨日まで彼女に同情的だった人々は、手のひらを返したように非難の声を上げていた。【金持ちにまともな奴なんていない!
「瀬川さん、他に何かご用はありますか?」「特にありません」「もう帰っていいですよ」佐藤茂は全く遠慮しなかった。真奈は、自分が彼の前ではまるで小学生みたいで、しかも説教されて頭が上がらない、そんなふうに感じていた。その頃、冬城家の中では。バンッ!冬城おばあさんが、浅井に思いきり平手打ちを食らわせた。浅井は頬を押さえ、涙をぼろぼろに流した。「あんた!どうして虹川ホテルまで行って騒ぎを起こしたのよ!あそこがどんな場所か分かってんの?自分で死にたいなら、私たち冬城家に迷惑をかけないで!」冬城はソファに腰かけたまま、一言も発さず、浅井をかばう気配すらなかった。
その中で、甘い顔立ちの少女が声を荒げた。「どういうつもり?高橋が後ろにいるからって、私たちが何もできないと思ってるの?」「瀬川、あんたがここに入れたのは、ネットでちょっとバズったからでしょ?私たちは毎日必死に練習して、実力でここにいるの。そんなズルして恥ずかしくないの?」そう言ったのは、冷たい表情の練習生だった。真奈は少し眉を上げ、問い返した。「不公平だと思ってるの?」「当たり前じゃない!」周りの人々は騒ぎ立て、顔には怒りが隠せなかった。真奈は微動だにせず、落ち着いた声で言い放った。「この世の中に、絶対的な公平なんて存在しないわ。頭を使ってのし上がる人もいれば、体を使う







