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第1221話

作者: 小春日和
「大奥様……」

中井は一瞬、動きを止めた。

冬城おばあさんは何よりも面子を重んじてきた人だ。これまでこんな屈辱を受けたことなど、一度もない。

もし彼女がこのトラクターに乗って帰ることになれば――それは、いっそ命を奪われるよりも屈辱的なことだった。

なのに、彼女は同意したのだ。

「もういい。反対したってどうにもならないでしょう……まさか、本当に歩いて帰るつもり?」

冬城おばあさんの表情は見るに堪えなかった。

この猛暑のなか、ハイヒールで2キロも歩けというのか。それはまさしく命に関わる。

どれほど不本意であろうとも、いまはもう、選択肢がなかった。

それを悟った中井は、しぶしぶ頭を下げた。「……かしこまりました、大奥様」

伊藤がトラクターを二人に渡そうとしたその時、幸江が彼に目配せをした。

その合図を受けた伊藤は、動きを止め、ゆっくりと後ろに下がる。

「……何のつもり?」冬城おばあさんは険しい声で言った。

「いえ、大したことではない。ただ、私と冬城おばあさんには何のご縁もないよね。そんな私物を持って行かれるとなると……多少は対価をいただかないと、筋が通らないかと」

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