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第848話

作者: 小春日和
この海城では、福本陽子にとって入るのはたやすくとも、出るのは至難となるだろう。

「福本家の旦那様ご意向は――ただ一人の娘を、ボスにしっかりと守ってほしいというものです。海城で万が一のことがあれば……」

馬場はそこで言葉を濁したが、立花にはその真意が伝わった。

立花は眉間を揉みながら、低く答える。「わかった。住みたいのなら住ませろ。自滅さえしなければ、守ってやるのも吝かではない」

女など所詮は踏み石にすぎない。いずれ福本家の力を掌中に収めれば、黒澤とて恐れるに足らぬ――そう確信していた。

「かしこまりました。すぐに部屋を整えさせます」

「うん」

立花は短く応じたが、今夜の真奈の声が自然と脳裏に浮かんだ。

Mグループの支配者。

だが、その肩書きがどうしたというのか。

結局は、薬さえ使えば同じように支配できるのだ。

立花は冷然と吐き捨てた。「一時は持ちこたえられても、一生など到底無理だ」

そろそろ、二度目の発作の時期だろう。

真奈、あの薬がなければどうやって強がりを続けるつもりだ?

夕暮れ時、佐藤邸の晩餐会は幕を閉じた。伊藤と幸江は、部下たちに指示を飛ばしながら後
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