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第84話

Auteur: 風待 栞
グラスを差し出し、灼也の持つそれに合わせようとした、その刹那。灼也はひらりと身をかわした。「すみません、鷹司さん。俺はみーちゃんの付き添いで来ただけなので」

雅の顔から、さっと血の気が引いた。もう片方の手は無意識にドレスの生地を強く握りしめ、差し出したグラスは行き場を失って宙を彷徨う。

灼也に声をかけたこと自体を、心の底から後悔した。みーちゃん……なんと親密な響きだろう。大勢の目の前で、灼也はこんなにもあっさりと自分の面子を潰したのだ!

彼女は必死で平静を装い、グラスを引いた。「……どうぞ、ごゆっくり」

それだけを絞り出すと、雅はすごすごとその場を立ち去るしかなかった。

その一部始終を見ていた水琴は、思わずぷっと噴き出してしまう。あの灼也が、人をやり込めることにも長けているとは意外だった。「灼也様のあの一言、雅さんは今頃、腸が煮えくり返っているでしょうね」

灼也はさして気にも留めず、肩をすくめてみせる。「事実を伝えたまでさ」

すると、隣で聞いていた紗音が口を尖らせた。「まだ言ってなかったけど、わたしも兄様も、水琴お姉ちゃんのために来たんだからね!」

司会者がパーティーの
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