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第85話

Auteur: 風待 栞
スクリーンが、ぱっと明るくなる。映し出されたのは、薄暗がりの中、男が女に乱暴に絡んでいる一枚の写真だった。

これは……!

会場全体が息を呑む。次の瞬間、無数のフラッシュが焚かれ、記者たちが狂ったようにシャッターを切り始めた。名家のスキャンダル――その誕生の瞬間を、誰もが見守っていた。

雅は、まだスクリーンを振り返らない。階下の客たちの反応だけで、計画の成功を確信していた。彼女は興奮に声を震わせ、壇上から水琴を指差す。「この写真に写っているのは静沢水琴!A大学の心理学講師にして、私の元・義姉ですわ!皆様に告発いたします!この女は、結婚中でありながら不貞を働き、あちこちで男を誘惑するような、恥知らずな女なのです!」

灼也様が怒りに顔を歪め、水琴を突き放す――その光景が雅の脳裏に浮かんだ。

さあ、どんな顔で怯えているかしら。彼女は嘲るように水琴の方に目をやった。

だが、雅の期待は裏切られる。灼也は感情の読めない無表情でスクリーンを見つめ、水琴に至っては、口の端を緩やかに吊り上げたまま、余裕の笑みすら浮かべている。

そして隣の紗音は……なぜか、今の自分とそっくりな、期待に満ちた興
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    荒い息を吐きながら、水琴はふっと表情を和らげた。いや、和らげたというより、冷酷なまでの冷静さを取り戻したのだ。「それに、一つ勘違いしていませんか?」水琴は真っ直ぐに臣の目を見据えた。「確かに私は彼女の犯罪の証拠を集めました。けれど、それを警察に提出するより前に……彼女は逮捕されたんです」つまり、今回の逮捕劇に水琴は一切関与していないということだ。臣は驚愕に目をカッと見開いた。自分の耳を疑う。水琴が通報したわけじゃない……!?じゃあ、一体誰が……「お前以外に、わざわざ警察に通報する動機のある奴なんていないはずだ。他の人間が首を突っ込む理由がない」臣は眉間を深く寄せた。水琴は自嘲気味にクスッと笑う。「鷹司さん、忘れないでください。紗夜さんの敵は私だけじゃないということを。例えば……彼女を身代わりに仕立て上げようとしている、音羽琉里さんとかね」――音羽琉里!!その名を聞いた瞬間、臣の脳裏に稲妻が走った。そうだ、琉里だ!紗夜が怯えながら口にしていた言葉を思い出す。琉里は、自分の悪事が水琴に暴かれるのを恐れ、すべての罪を紗夜に着せようと画策していたのだ。すべてを理解した臣は、深く、重い溜息をついた。そして、申し訳なさそうに水琴へと視線を下げる。「水琴……これまでのことは、確かに紗夜が悪かった。雅もお前に酷いことをした。今、雅は精神病院に入れられ、紗夜も警察に捕まっている」臣は絞り出すように言葉を続けた。「……腹にいる子供に免じて、せめて減刑の嘆願書を書いてはもらえないか?」水琴からの嘆願書さえあれば、もし裁判になったとしても情状酌量で罪が軽くなるかもしれない。臣にとっては、それが最後の希望だった。「お断りします。嘆願書なんて絶対に書きません」水琴は一秒の躊躇もなく、冷たく言い放った。「水琴、頼む……」それでも食い下がろうとする臣の言葉を、水琴は容赦なく遮る。「鷹司さん。私たち、もう離婚したんですよ?だったらお互いの目の前から完全に消え去るのが筋じゃありませんか?なのに、どうしてこうも未練がましく付き纏うんです?……正直言って、本当に鬱陶しいんです」水琴は不快げに眉をひそめた。事あるごとにしゃしゃり出てきては、自分を罠に嵌めようとする雅や紗夜への嫌悪感。そして何よ

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    そして、呆然と立ち尽くす雅を視界の端に留めながら、スーツケースのハンドルを握りしめると、一度も振り返ることなく、その家を後にした。鷹司家の重々しい門を抜けると、一台の真っ赤なオープンカーが目に飛び込んできた。運転席から、親友の鹿耶が身を乗り出し、サングラスを額に押し上げながら、芝居がかった投げキスをよこす。「お姫様、ご乗車を。鹿耶様が、最高の祝賀会に連れてってあげる」祝賀会とは言ったものの、離婚したばかりの水琴の心情を慮ってか、鹿耶が連れて行ってくれたのは、落ち着いたジャズが流れる隠れ家のようなミュージックバーだった。離婚の経緯を話すと、鹿耶は呆れ返ったようにグラスを置いた。「また

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