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99.仮面の下の素顔

last update Data de publicação: 2026-09-17 05:46:02

 男は壁に背を預けたまま、低い声で言った。

「でも、本人だったとして……問題はそこからだろ」

 君代の表情が変わる。

「ええ」

「記憶をなくした今のあいつが、錦戸に対してどういう感情を持ってるのか。そこがまだわからない」

「そうね」

 理聖がかつて、錦戸大翔のもとでどれほどの仕事をしていたのか。そして、その圧倒的な実力がどれほどのものだったのか。

 二人は知っている。

 だからこそ――錦戸と唯一渡り合える可能性がある男として、理聖を利用しようとしていた。

「だけど、彼は今、恋人と平和な日々を過ごそうとしているわ」

 君代の声に、わずかな苛立ちが混じる。

「花屋で働いて、恋人と笑って……過去など必要ないと言わんばかりにね」

「……平和ボケしてんのかよ」

 男が吐き捨てる。

「それじゃあ困るんだよな。錦戸大翔……あの隻眼の化け物は、深凪組のトップとして今も絶対的な権力を握っている。真っ当なやり方じゃ、到底首には届かない」

「ええ。だからこそ、かつて錦戸の狂犬として血の雨を降らせたもう一匹の化け物……理聖をぶつけるしかないのよ」

 錦戸大翔を殺す。

 そのために、理聖の力が必要なのだ。

 
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