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116.すぐバレる嘘、裏で動く人物

last update Huling Na-update: 2025-08-12 19:57:03

「相原専務、私は専務のことを信じているが、今回の件について、君からも話を聞かせてくれないか」

人事部門の役員がいる手前、俺は空のことを「相原専務」と呼び真偽を尋ねた。緊張した面持ちでじっと空を見つめると、空から『大丈夫だよ』と言っているかのような穏やかな視線が返ってきた。

「今回の件ですが、十分に配慮したつもりですが、不快に思わせてしまったのは私に落ち度があったと思います。申し訳ございません。しかし、訴えにあるような性的な会話は一切しておらず、接触ももちろんありません」

空は落ち着いた口調で、キッパリと断言した。

「そして、証拠となるものがないとのことですが、私の方で今回のヒアリングした相手との全ての音声データを残しています。この録音は、報告時に私が故意に事実を隠蔽したり、細工したりはしていないと示すために保管しておいたものであり、業務報告以外では一切使用していません。ファイルのログイン履歴などを調べていただいても結構です」

「そうなのですか!それではその音声をすぐに我々で解析して……」

役員は安堵の表情を見せたが、空は冷静にそれを遮った。

「そのことですが、こちらが勝手に音声を聞いたら、それもプライバシーの侵害と訴えられかねません。ですので、音声データがあることと真相を確かめるため、確認していいか承認を得てからの方がいいかと。データの存在を知ったら、考えを改めるかもしれません。」

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