เข้าสู่ระบบ華side数日後の大寄せ茶会の当日。 会場となった由緒ある庭園の茶室には、朝から独特の緊張感と熱気が満ちていた。参加者たちは、北條先生の点前をひと目見ようと、次から次へと入れ替わり立ち替わり訪れる。先生の流れるような所作が進む中、私は半東(はんとう)として、訪問してくださったお客様と言葉を交わしたり、お茶菓子や配膳が滞りなく進んでいるか全体に目を配っていた。 先生がお茶を点てることだけに集中できるよう、舞台裏の綻びを一つひとつ繋ぎ合わせるのが半東である私の役目だった。北條先生ほどの知名度ともなると、参加者は優に百人を超え、一人ひとりとゆっくりと言葉を交わす余裕などないまま、訪問してくれた方が少しでもお茶に興味を持ってもらえたり、楽しんでもらえるよう出来る限りの配慮を尽くした。無事に茶会が終了し、最後のお客様を見送った後の控室。安堵の溜息が漏れる中、北條先生が、今日のために尽力してくれた裏方の方々に丁寧にお礼を言っていった。「お疲れさまでした。今日は本当にありがとうございました。……今日の茶会がこれほど素晴らしいものになったのは、ひとえに皆さまのご協力があってのことです。別室に全員分の仕出し弁当を用意してあります。持ち帰っていただいても、この場で召し上がっていただいても構いません。本日は、誠にありがとうございました」先生が深く頭を下げると、張り詰めていた空気がふわりと解け、一同が解散していった。配膳を手伝ってくれた鮮やかな辻が花の着物姿の真珠さんが、私の方へ歩み寄ってきて親しげに微笑んだ。
華side「華さん、今度の茶会ですが真珠さんも参加されるそうで。終わった後に三人で食事でもどうですか? 真珠さんも華さんに会いたいと言っていましたし、もし都合がつけば、と思って」お稽古の後片付けをしていた私に、北條先生が穏やかに提案してきた。「あ、はい。分かりました。大丈夫です、予定を空けておきますね」「良かった。彼女にも伝えておきます。きっと喜びますよ」以前、経団連のパーティーであった京都の抹茶製造メーカーの令嬢の真珠さんは、関東への進出を目指す会社の意向で、営業のため東京に足を運ぶ機会が増えていた。明るく社交的な彼女の名前を聞いて、私は少しだけ心が軽くなるのを感じた。このところ気分が落ちていて、自分から外に出かけることはなくなっていた。北條先生の教室に来るか、家で静かに過ごすかの二択。レッスンの時以外は、神宮寺家の人たち以外と会話をする機会さえ失われていたのだ。(いつまでも沈んでいるのは良くないわ……。北條先生にも余計なご心配をおかけしているし、早く気持ちを切り替えなくちゃ)自分に言い聞かせてはいるが、あれから二か月足らずの間に瑛斗の熱愛記事は三回も世に発表された。その中には、あの日、神宮寺家のポストに直接放り込まれていた写真も使用されている。
瑛斗side「本日より一条ホールディングスの副社長に就任しました三村ジョニーです。よろしくお願い致します」役員会の承認は、大口株主たちの後押しもあり驚くほどスムーズに通ってしまった。三村が初出社の今日、役員会議の冒頭で彼は堂々とした態度で挨拶を述べた。「三村さん、社長の一条です。これからよろしくお願いします」「ああ、一条社長。こちらこそ、よろしくお願いします」彼が差し出した手を握った瞬間だった。三村の手が、一瞬だけ万力のような力強さで俺の手を握り返してきた。驚いて顔を上げると、三村は何事もなかったかのように平然とした顔で、薄く微笑んでいる。「……すみません。ここは日本でしたね。前の職場で握手をした時に力を込めるのが風習であって、つい癖で……」(本当かよ……こいつ、今わざとやったんじゃないのか?)手のひらに残る鈍い痛みと三村の底知れない眼差しに、俺は苛立ちと強い疑念を覚えた。しかし、周囲の役員たちは彼の爽やかな振る舞いに、早くも好意的な視線を向けている。得体のしれない男だ。そう直感して警戒を強めていたが、三村の社内への浸透スピードは俺の想像を超えていた。端正な顔立ちとスマートな
瑛斗side「……三村ジョニーの素性を徹底的に調べさせてください。今のこの混乱した時期に、どこの誰ともわからない人間を入れるリスクは大きすぎる」「構わん。だが決定は覆らんぞ。来週には役員会で承認を得る」有無を言わせぬ父の言葉を背に、俺は経歴書を掴んで会長室を後にした。すぐさま空を社長室に呼び出し、閉め切った室内で書類を突き出した。「空、大至急この『三村ジョニー』を洗ってくれ」経歴書を手渡すと、空は眼鏡の奥の瞳を鋭くして興味深げに書類に目を通した。「三村ジョニーか……。聞いたことがないな。経営アドバイザーと言っても、彼自身に会社を経営した経験はなさそうだ。一条のような大手の副社長に据えるには、少し怪しさと疑問が残るね」「ああ。それにもう一点、気になることがあるんだ。そこについても調べてもらえるか?」俺が抱いた「直感」とも呼べる違和感を伝え、空に三村の徹底的な身辺調査を指示した。二日後、空が持ってきた報告は、表面上は非の打ち所がないエリートのそれだった。「三村は、瑛斗より四歳年上で日本人の父親とアメリカ人の母親から生まれたクォーターがだ。その関係で名前が『ジョニー』とカタカナ表記になっているらしい。母方の祖父母も国際結婚のようで、その影響もあって日本語、英語以外にも数カ国
瑛斗side「週刊誌の件だが、我々が想定していた以上の反発が来ている。このまま無視し続けるわけにはいかない状態だ。世間の不信感を払拭するために、実効性のある対応策を出さねばならない。そこで、一条家とは関係のない人物を副社長に任命することにした。経営の透明性を示すための『監視役』だ」「監視役……? 外部の人間をいきなり副社長の座に据えるというのですか。そもそも副社長は、玲が結婚した際に無理やり作らせたポジションです。彼女がいなくなった今、会社は正常に動いており、新しく置く必要などありません。もしどうしてもというなら、相原がいます。彼こそが適任だ」「相原空――。お前が相原君を推す理由はわかる。彼は確かに優秀な人材だ。しかし瑛斗、彼はお前の親友であり、プライベートの話まで共有する間柄だろう」「それは……」父の指摘は正論だった。空は部下である以上に、俺にとって公私ともに信頼のおける人物であった。「そんな人間をこのタイミングで副社長に就任させれば、世間は『自分の言いなりになる人間で周りを固めた』と捉えかねない。不祥事の最中に身内で固めるのは火に油を注ぐようなものだ。もし相原君を引き上げたいなら、まずこの事態を収拾させ周囲を納得させてからにしろ」父はそう言い切ると、デスクの上に一枚の書類を滑らせた。そこには「経歴書」という文字とともに、一人の男の写真があった。落ち着いた薄茶色の髪をオールバックに整え、高い鼻梁にくっきりとした二重。怜悧な知性を感じさせる顔立ちの男だ
瑛斗side「まずいな……。一部の人間が反応し始めている」SNS上では、一条グループから一時期大量の退職者が出たことについて、現場サイドや知人の証言という形で投稿が瞬く間に拡散されていった。そのほとんどが記事を鵜呑みにした者たちの憶測であり、信憑性の乏しい内容ばかりだったが、話題は時に真実を飲み込んでいく。「一部の株主が敏感に反応して問い合わせも増えているらしい。これ以上、事態が大きくなるのならば、会社として正式なコメントを発表すべきだね。無言を貫くのは『逃げ』と捉えられるリスクがある」空の助言に従い、翌日、俺たちは異例のスピードで公式見解を発表した。週刊誌の内容は事実無根であり、彩菜さんとの熱愛関係もパワハラによる離職もすべて否定した。このまま世間の関心が他へ移るのを待つしかない――そう願っていた俺の望みは、あまりにも残酷な形で打ち砕かれることになった。二週間後。続報として世に放たれたのは、俺と彩菜さんが夜道で手を繋いでいる瞬間と抱き合っている二枚の写真だった。記事は彩菜さんを「金への執着が異様に高い女」と卑下し、俺を「冷酷で人を利用する非道な男」として断罪していた。名家に生まれた若き経営者たちが、金と権力に溺れて堕落しているという大衆が最も好む物語に仕立て上げられていた。「ふざけるな!なんだこの記事は。今までの写真もすべてでたらめだ! 合成か加工に決まっている!」







