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402.内部の膿

last update Last Updated: 2026-01-17 19:57:02
瑛斗side

午後の商談を終えて社長室に戻ると、部屋の前で空が険しい表情で待ち構えていた。

「おかえりなさい、瑛斗。待っていたよ」

その声の低さと張り詰めた空気から、朝の個人情報流出の件が厄介な様相を呈していることが容易に想像できた。

「ああ、色々とすまなかった。話をゆっくり聞こう。……その顔だと、あまり芳しくない事実が判明したようだな」

俺の問いに、空は小さく溜息のような息を漏らす。部屋に招き入れて、コートを脱いで鞄を置いてすぐにソファに座り本題へと入った。

「それで、現在の状況はどうなっている」

「今のところ、コールセンターへの問い合わせは一旦落ち着いている。被害が報告されているのは『東京都在住』の顧客だけなんだ。他の地方拠点や、神奈川、千葉といった近隣県の顧客からは一件も報告がない」

「そうか……全データが流出したという最悪のケースは免れたことになるな。だが、なぜ東京だけなんだ?」

「そこが問題なんだ。セキュリティ部門に詳しく確認したところ、うちのデータベースはエリアごとに閲覧用のパスキーや権限が細かく分けられている。全エリアの情報を一括で閲覧・抽出できるのは、瑛斗と僕、そして営業管轄部門の統合責任者である役員二名の計四名だけだ。他の従業員は、それぞれの担当エリアの権限しか与えられていない。つまり、今回東京のデータだけがピンポイントで反応したということは、必然的に『東京エリアの閲覧権限を持つ者』のPCから情報が抜き取られたか、あるいは内部の人間が故意に流出させたことになる。そして、本社の人間である可能性が極めて高いんだ」

「本社の人間? なぜそう断定できる」

「実は、東京の支店や営業所のスタッフは、勤務地が東京でも住んでいるのが東京郊外の割合が多いから、閲覧エリアを『関東広域』に設定されているケースが多い。だが、本社部門のスタッフは直接営業を行わないから、権限が『東京都のみ』に限定されているらしいんだ。ハッカーなら情報はあればあるだけ欲しいはずだし、わざわざ東京分だけを選別して抜く手間はかけない。抜き取るなら根こそぎ奪うのが定石だ。……となると、これは外部からの攻撃に見せかけた、内部の人間による極めて限定的なリークの可能性が出てくる」

「内部の犯行か……。ハッキングによる痕跡は本当になかったのか?」

「今のところ不審なログは見つかっていないらしい。
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