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50.1歳の誕生日とサプライズ②

last update Huling Na-update: 2025-07-09 21:57:50

みんなで賑やかに誕生日を祝った後、三上先生は私に小さな包みを差し出した。

「華ちゃん、これは君に」

まさか私にまでプレゼントを用意してくれているとは思わず、驚いて目を見開いた。シンプルな包装紙を開けると、中から現れたのは小さなブランドのロゴが入った口紅だった。ケースは上品なゴールドでキャップには繊細な彫刻が施されている。そして、その側面に「Hana」と私の名前が刻まれていた。

「ずっと母親として本当に頑張ってきたからね。子どもたちももう歩けるようになったし、これからはお出かけする機会も増えると思って。少しでも華ちゃんが自分自身を大切にできる時間が作れるといいなと思ってね」

三上先生の言葉に胸がいっぱいになった。子育てと孤独に必死で自分のことを考える余裕などほとんどなかった。瑛斗と別れてから、おしゃれをすることも誰かのためにメイクをすることもすっかり忘れていた。そんな私の気持ちを三上先生は察してくれていたのだ。

「三上先生……ありがとうございます」

私の母親としての頑張りを認め、そして、私という一人の女性のことも気にかけてくれていた。この別荘に来てから、私を「華」として見てくれたのは、三上先生が初めてだったかもしれない。その細やかな気遣いと優しさが温かかった。

「慶くんと碧ちゃんが歩けるようになったら、公園とか二人が遊べるところにも行きませんか?二人にも別荘の庭以外の景色を見せてあげたいし、華ちゃんの気分転換にもなったら嬉しいな、と思って」

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