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57.三上と華の新たな関係 (前編)

last update Last Updated: 2025-07-12 20:57:00

先生は昼から数時間おきに様子を見て慶の様子を観察してくれていた。日中は少し下がるものの夕方になるとまた体温が上がる。調子が悪いこともあり、ぐったりとし声を掛けてもこちらを見るがいつものような笑顔はない。ご飯も二口だけ食べてあとは口にしなかった。

そして夜の23時を回ると昨夜と同じ40℃近くまで体温が上がってきた。

「うーん、熱がまた上がってきたね。夜になると体温が上がるのはメカニズムだから問題ないと思うけれど……。もう夜遅いし部屋に戻るよ。華ちゃんも心配で寝れないかもしれないけど休める時に休んでね。何かあったら遠慮せずにすぐに来てくれていいから。」

「……はい。」

昨夜と同じ体温まで上がったことで痙攣した時の様子を思い出し眠れそうになかった。また一人になるのが怖くてすごく心細かった。

「あの……、先生も今日はこの部屋で一緒にいてくれませんか?」

私は三上先生の服の袖を掴むと、そう口にしていた。

「え?」

「昨日のことを思い出すとまだ怖くて……。」

「華ちゃん…。分かったよ、側にいる。華ちゃんが安心できるように側にいるから」

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