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第2話

作者: 蘇蘇
そんな汐の様子を見て、京弥の表情はいっそう険しさを増した。彼は冷ややかに彼女を射抜くように見つめ、怒りを含んだ声で言い放つ。

「ないなら、さっさと消えろ。避妊具を買ってこい」

汐は何も言わず、床に散らばった金を拾い集めて外へ出た。

買い物を済ませると、それをドアの前に置き、自分の部屋へ戻って鍵を掛けた。

その晩、隣室からの物音は途切れることがなかった。

まるで意図的な復讐であるかのように、京弥は行為に及びながら、深雪に甘い愛の言葉を囁き続ける。

「いい香りだ。愛してるよ。

お前もずっと俺を愛してくれ。どこにも行かないって、約束してくれ。いいだろう?」

それはすべて、かつて彼が汐を抱き寄せながら囁いてくれた言葉だった。

当時は暮らしも苦しく、6坪にも満たない賃貸アパートに身を寄せ合っていたけれど、二人は確かに心から愛し合っていた。

京弥と添い遂げ、男の子と女の子を一人ずつ授かり、幸せな一生を送る――汐は数え切れないほど、そんな未来を夢に描いてきた。

けれど、その思い出は水泡のように儚く弾け、二度と戻ってはこない。

彼女は一晩中泣き明かし、目覚めたときには枕がぐっしょりと濡れていた。

汐は自分に言い聞かせる。彼のために泣くのは、これが最後よ。

階下へ降りると、二人はすでに起きていた。これまで京弥が連れ込んできた女たちは、一度もこの家に泊まったことがない。

深雪が初めてであり、ここで朝食を取る唯一の女となった。

家政婦たちがいつも以上に慌ただしく動き回っているのを見て、汐は今日が深雪の誕生日であることを悟った。京弥は彼女のために、この屋敷で盛大なバースデーパーティーを開くつもりなのだ。

パーティーが始まると、社交界の友人たちが大勢押し寄せ、まるで深雪こそがこの家の女主人であるかのように、親しげな挨拶を交わしていた。

京弥もまた、深雪にこれ以上ないほどの花を持たせた。手を取ってエスコートしながら来客の杯を受け、深雪がキャンドルの火を吹き消して願い事をした後には、数億の価値があるダイヤモンドのネックレスを惜しげもなく贈る。

高揚した二人は、招待客全員の前で熱い口づけを交わした。

会場に割れんばかりの拍手が響き渡る中、人々が汐に向ける視線には、隠そうともしない同情が混じっていた。

「奥様があんな状態だなんて、本当にお気の毒ね」

「今や社交界全体の笑いものだって、知らない人はいないわよ。私だったら恥ずかしくて、どこかに隠れちゃうわ」

「それなのに、あの人、何食わぬ顔で。これっぽっちも反応がないなんてね」

汐は自嘲気味に唇を歪めた。これまで味わってきた苦痛があまりにも多すぎて、この程度のことが何だというのだろう。

パーティーの最中、人目のない場所で深雪が汐に近づいてきた。

「私に何か言うことはないの?どうして何も聞こうともしないの?」

汐は淡々と首を振る。

「聞く必要なんて、もうないから」

深雪は汐の親友だった。だから当時の事情も、すべて知っている。

この数年間、深雪は汐がどれほど絶望の中でもがいてきたかを、すぐ傍で見てきた。

京弥から送られてくる他の女との情事の写真を目にして、汐が目を真っ赤にして泣き崩れる姿を、何度見ただろう。

そのたびに深雪も胸を痛め、今すぐ京弥に電話して真実をすべてぶちまけてやりたいと憤っていた。

それを止めたのは、いつも汐だった。何をしても、二人の結末は変えられないのだから、と。

今、深雪は両目を真っ赤にして汐を見つめている。その瞳にはあまりにも多くの感情が入り混じり、とても読み取れなかった。

「汐、あんたのそういうところが一番嫌い。まるで何も気にしていないみたいな顔をして。あんたは何も知らないのよ。私がずっと前から密かに京弥を好きだったことも……

京弥の心には、あんたしかいなかった。この数年、あんたが彼のために死ぬほど苦しんできたのは知ってる。

でも、あんたが去った後、京弥がどんな日々を過ごしてきたか、知ってる?

あんたのために毎日酒に溺れて、血を吐くまで飲んで。二人で借りていたあの部屋に一人で閉じこもって、一晩中過ごしてたのよ。

あんたの写真をずっと財布に入れて持ち歩いて……暴力団に遭った時なんて、何度も刺されながら、その財布だけは必死に守り抜いたわ。あんたが残した唯一の形見を奪われないためにね。

成功してあんたを無理やり妻にしたのも、他の女を連れ帰ってくるのも、ただあんたに折れてほしいだけ。『まだ愛してる』って一言さえ言えば、彼はなりふり構わずすべてを捨てて、あんたの元に戻るつもりだったのよ。

あんなにプライドの高い人が、あんたのためにここまで自虐的なことをした。京弥はあんたを憎んでる。でも、それ以上に愛してるのよ」

そこで深雪は一拍置き、続けた。

「……分かってる?私、あんたが憎いよ。あんな仕打ちをしたのに、京弥があんたを諦めきれないのが、憎くてたまらないの。

本当は、京弥は私と付き合うつもりなんてなかった。これまで彼が連れてきた女たちはみんなあんたに似ていたけど、私はあんたにこれっぽっちも似ていない。

それでも、私は彼の傍に一番長く残る女になるわ。なぜか分かる?

私が彼に嘘をついたからよ。あの時の腎臓は、私がドナーになってあげたんだってね」

汐はただ静かに聞いていた。一言も発しない。

沈黙を保つ彼女を前に、深雪の呼吸は次第に荒くなっていった。しばらくして、深雪は絞り出すように言う。

「汐、今年の誕生日プレゼント、まだもらってないわ。私が欲しいのは、たった一つ。京弥の心よ」

それを聞いて、汐は長い沈黙に落ちた。

深雪が返事はないものと諦めかけた、その時――汐はようやく口を開く。

「……いいわよ」

深雪は笑った。その瞳には涙が浮かんでいた。

「譲ってくれるなら、徹底的にやって。彼の心から、あんたを完全に消し去ってあげる」

言葉が終わるや否や、深雪は手すりを掴んでいた手を離し、目を閉じて、そのまま後ろへと倒れ込んだ。

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