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第8話

作者: 金魚の記憶
「放っておけばいいよ」

「日和、落ち着きすぎでしょ」

「じゃあ、どうすれば?」

私はピルケースのふたを閉じた。

「あの子が待ってるのは、わたしの返事じゃない。玲司が、なだめに駆けつけてくれること」

美緒は鼻で笑った。

「なら、残念でしたって話ね。あんたの元婚約者、昨日病院の会議で告発されたらしいよ」

手が止まった。

「告発って、何の?」

「匿名のタレコミがあってね。汐音のために長年、ルール違反までして個室や専門医を回してたって。証拠の記録付き。病院が本格的に調査するらしいよ」

私は何も言わなかった。

あの記録は、湊市を離れる前に、私がまとめたものだった。復讐のためじゃない。ただ、あの人たちのために取り繕ってやる気が、ふいに消えただけだった。

すぐに玲司から電話がかかってきた。この番号だけは、まだ拒否していなかった。

出るなり、彼は言った。

「お前がやったんだろ」

「そう」

彼の息が、重く沈んだ。

「これが昇進の審査に響くって、分かってるのか」

「分かってる」

「日和、前はこんなじゃなかっただろ」

また、その言葉だ。

コップをテーブルに置いた。

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