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第5話

Author: 春桃烏龍
明日奈は救急車で病院へ運ばれ、医者に傷の手当てをしてもらった。

彼女が家に戻るまで、洋介と友沢から罪悪感を示すような電話の一本もかかってくることはなかった。

その代わり、恵美のSNSのタイムラインは絶えず更新されていた。

恵美が投稿した写真から、洋介と友沢が彼女に付き添って幸魂神社(さちみたまじんじゃ)へ願掛けに行ったことが分かった。

彼らは百年樹に赤い紐を結んでいた。

今後の幸せと無事を祈願するという。

【こういう神頼みって、元々は信じてないんだけど、隣にいるこの二人がすごくご利益あるって言うから、まあ、彼らのために信じてあげることにしましょう】

その下には、恵美のマネージャーからのコメントがあった。

【早く正妻の座に就いて、あのクソ女を排除しなきゃね】

この「クソ女」が、明日奈を指していることは疑いようもなかった。

これらを見ても、明日奈は何の反応も示さなかった。

彼女の意識は、とっくに過去へと飛んでいたからだ。

この幸魂神社は、洋介と友沢、そして彼女だけの秘密基地だった。

幼い頃から病気がちだった彼女を、洋介と友沢はよくここに連れてきてお祈りをしてくれた。

「明日奈、ここのご利益が本物かは分からない。だけど、お前のためになることなら、俺も友沢も何だって試したいんだ」

そんな場所でさえ、彼らは恵美を連れて行ったのだ。

明日奈は我に返り、自嘲の笑みを浮かべた。

幸い、あと二日もすれば自分はここを去るのだから、と。

洋介と友沢が帰ってきたのは、翌日の朝だった。

彼女の頭に包帯が巻かれているのを見て、二人の瞳には一瞬、罪悪感の色がよぎった。

友沢は手に持っていたたこ焼きを、昔のように彼女に差し出した。

「明日奈、これ、兄さんと一緒に『たこマン!』で買ってきたんだ。熱いうちに早く食べろよ」

紙袋の中には、たこ焼きが三つしか残っていなかった。

しかし、『たこマン!』は普通、十個入りでしか売っていない。

そして、明日奈は彼ら二人がそこのたこ焼きを好きではないことを覚えていた。

唯一の説明は、これが恵美の食べ残しだということだ。

明日奈はちらりと見ただけで、粥をすすりながら顔を戻した。

「いらない。私、『たこマン!』のは好きじゃないから」

洋介が訝しげに尋ねた。

「お前、『たこマン!』が一番好きじゃなかったか?」

「ついさっき、嫌いになった」

明日奈の返事を聞いて、リビングの空気は沈黙に包まれた。

友沢は気まずそうに笑い、話題を探し始めた。

普段は無口な洋介までもが、それに二言三言相槌を打った。

明日奈は何かおかしいと感じ取った。

「何か用?」

洋介と友沢は顔を見合わせた。

互いに相手に口火を切らせたいようだ。

最終的に、口を開いたのは洋介だった。

「明日奈、恵美が最近風邪気味でな。今夜、ステージの裏で彼女の代わりに、あの代表曲を歌ってはくれないか?」

恵美のその代表曲は、明日奈が大学時代にレコーディングしたものだった。

ただ、発表する前に、洋介に言われて恵美に譲ったのだ。

恵美は元の歌い手ではないのだから、当然歌えるわけがない。

明日奈は洋介と友沢を長い間見つめ、とても静かな声で尋ねた。

「二人とも、この歌の意味を知ってる?」

この歌は、彼女が亡くなった両親を偲ぶために作ったものだった。

歌詞には両親への想いが溢れんばかりに綴られており、そして、自分はこれからもちゃんと生きていくと、両親に伝えていた。

歌うたびに、彼女は泣いてしまう。

両親が交通事故で、肉塊になるまで轢かれた光景を思い出してしまうからだ。

それは、癒えかけた傷口を、もう一度引き裂かれることに等しい痛みだった。

それなのに今、洋介は恵美のキャリアの肥やしにするために、彼女にこの歌を歌えと強要している。

明日奈は彼らに答えを迫らず、胸の奥から込み上げてくる苦しさを押し殺した。

「これが、二つ目の用事ってこと?」

洋介は何かを説明しようとしたが、魔が差したかのように、ただ「ああ」とだけ応えた。

友沢も何を言うべきか分からなかった。

「明日奈、このイベントが終わったら、兄さんと一緒にモルディブに遊びに行こう。お前、一番行きたがってただろ?」

「行かない」

そう言うと、明日奈はまっすぐ別荘を出て、タクシーでイベント会場へ向かった。

恵美の楽屋へ着いた途端、明日奈は彼女とマネージャーの会話を耳にした。

「恵美さん、江口様、本当にあなたに優しいんですね。ショーのトリを、はいって即決してくださるなんて」

「あんな馬鹿二人、私にメロメロで頭がおかしくなってるのよ。私が言えば何でも聞くんだから。あなた、見てなかった?あの二人が私のために、明日奈をどれだけ酷い目に遭わせてるか」
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