【確認します。宿主様は好感度99%の全てを、小林恵美(こばやし めぐみ)に譲渡しますか?】【好感度がゼロになり次第、宿主様はミッション失敗と見なされ、存在を完全に抹消されます……】遠野明日奈(とおの あすな)は、魂の抜けたような声で、力なく「ええ」とだけ答えた。江口洋介(えぐち ようすけ)と江口友沢(えぐち ともざわ)が、あれほどまでに恵美を慈しみ、彼女のためならば明日奈を傷つけることさえ厭わないというのなら、いっそ自分が恵美のミッション達成を手伝い、彼女が永遠にこの世界に留まれるようにしてあげよう、と。【再考を推奨します。あと1%でミッションは成功です。それに、洋介と友沢はあなたの幼馴染。かつてはあれほどあなたに優しかったではありませんか。もう少しの辛抱で、ミッションが完了する可能性は高いのです】と、システムはあくまで無機質に続けた。ほんの少し前まで、明日奈もそう信じていた。洋介と友沢は幼い頃から共に育ち、自分を実の妹のように可愛がってくれた。これほど簡単なミッションはないとさえ感じていた。少しばかり好意を示せば、二人の好感度は上がっていったのだ。だが、彼女は自分がとんでもなく愚かだったことを、やがて知ることになる。恵美がいる限り、自分のミッションが成功することは永遠にあり得ないのだと。洋介と友沢は、恵美が攻略者であり、ミッション失敗の代償が「抹消」だと知っていた。だから、明日奈が告白を決意したあの日、彼らは氷のように冷たく、彼女を突き放した。「すまない、明日奈。俺たちは君を好きにはなれない」「もし君への好感度が高くなりすぎると、恵美がミッション失敗と見なされ抹消されてしまう。彼女が死ぬのを、黙って見ているわけにはいかないんだ」彼らは、明日奈にも攻略ミッションがあり、失敗すれば同じく抹消される運命だと知りながら、それでも恵美を生かすためだけに、頑なに好感度を99%で止めたのだった。明日奈は力なく微笑んだ。「もう、説得は要りません」【承知しました。これよりクリアランス計画を起動。七日後、この世界における宿主様の存在痕跡は全て消去され、好感度は小林恵美に譲渡されます。蓄積ポイントにより、新たな身体との交換が可能です】明日奈がシステムに礼を言った、その時だった。別荘のドアが開き、友沢と洋介が
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