登入朝の教室は、いつもより少しざわついていた。
窓から差し込む春の日差しが教室を明るく照らし、
あちこちに笑い声が響いている。
「今日席替えだってさ」
誰かのその一言で、教室の空気が一気に変わる。
「それほんと?」
「え、マジ?くじ?」
「運悪かったら最悪じゃん」
「隣イケメンがいいー!」
「東堂くんの隣とか絶対緊張するよ!」
そんな声があちこちから聞こえる。
女子たちも楽しそうに話していた。
私はというと、正直あまり気にしていなかった。
(まぁ、誰とでもいいし)
そんな軽い気持ちだった。
「そんなに騒ぐこと?」
首を傾げながら言うと、
「いぶは興味なさそうだね。」
近くの女子が笑う。
この子は昨年も同じクラスで
私のことをあだ名でいぶと呼ぶ。
「うーん、誰とでもいいかな。」
「そう言う人に限って良い席を引くんだよ。」
「そうなの?」
私は本当にあまり気にしていなかった。
隣が誰でも、きっと楽しく過ごせる。
そう思っていた。
ホームルームが始まり、
先生が教室に入ってくる。
「はい、お前ら静かにー。」
それでも教室はどこか落ち着かない。
先生は苦笑しながらプリントの束を持ち上げた。
「そんなに楽しみか?」
「うん!」
「先生早くしよー!」
「はいはい、じゃあ、席替えのくじを配るぞー」
一人ずつくじを引いていく。
紙を開く瞬間、みんなの表情が変わる。
「頼む!」
「窓側!!」
「あー終わった!」
悲鳴や笑い声が次々と聞こえてくる。
「伊吹、何番?」
後ろから陸が覗き込んでくる。
「えっと……」
紙を開く。
「……前の方。」
「いいじゃん、見やすいじゃん。」
「そういう問題じゃない。」
そんなやり取りをしていると、
先生が黒板に新しい座席表を貼った。
一瞬、教室が静かになる。
次の瞬間。
「えっ」
思わず声が出た。
私の席の隣。
そこに書かれていた名前は。
東堂湊。
「…え?」
「隣…湊?」
思わず本人を見る。
湊も座席表を見つめたまま動かない。
「……マジか。」
陸の声が、少しだけ低くなる。
玲央は黒板を見て、小さく息を吐いた。
「終わったな。」
「何が?」
「いや、なんでも。」
私は意味が分からず、首をかしげる。
湊は特に表情を変えずに、席を見ていた。
でも、ほんの少しだけ動きが止まっていた気がした。
席移動が始まる。
私は机を持って、指定された場所に向かう。
「よいしょっと。」
机を置いて椅子に座ると、
そのすぐ隣で、湊が一瞬だけこちらを見た。
近い。
今まで向かい合ったり、
歩いたりすることはあったけど
こうして授業中に隣に座ることは
初めてだった。
「よろしく。」
湊が少し小さく笑う。
それだけ。いつもより短い。
「うん。よろしく。」
私も笑って返す。
でも、いつもより少しだけ近い距離。
「ねえ湊」
小声で呼ぶ。
「ん」
「なんかさ、隣って変な感じだね。」
「……別に。」
そう言いながら、
湊はほんの少しだけ椅子を動かした。
「え、私そんなに邪魔?」
「違うよ。」
「じゃあ何?」
「…近い。」
「え?」
私は自分の椅子を見る。
「あ!ごめん!」
慌てて少し離れる。
「気にしなくていいよ。」
湊は小さく笑った。
その笑顔を見て、私もなんとなく笑ってしまう。
後ろの席から、陸がこっちを見ているのが分かる。
玲央は何も言わず、ペンを回していた。
でも空気だけは、少し違った。
授業中。
「伊吹。」
湊が呼ぶ。
「なに?」
「教科書見せて。」
「忘れたの?」
「ロッカー。」
「もう。」
私は教科書を机の真ん中へ寄せた。
二人で一冊の教科書を見る。
肩が少しだけ触れた。
「あ、ごめん。」
慌てて離れる。
「気にすんな。」
湊は何事もなかったようにページをめくる。
だけど、その耳は少しだけ赤かった。
私は気付かなかったけれど。
陸がその様子を見つめていた。
「なんかさぁ……」
小さく呟く。
後ろの席の玲央が小さく笑う。
「席替えって、こういうことだよな。」
「なんで湊の隣なんだよ。」
そんな声は私には届かなかった。
その日の放課後。
チャイムが鳴り、一日が終わる。
「湊、陸、玲央。帰ろ。」
私が席を立ち上がると、
三人も立ち上がって鞄を持った。
友達に
「また明日。」
と言いながら教室を出る。
三人で校門を出て歩く。
今日はやけに静かだ。
私は何も考えていなかった。
ただ、隣の席になっただけ。
それだけのこと。
そう思っていた。
だけどまだ私は知らない。
この小さな席替えが、
少しずつ私たちの関係を変えていっていた。
更衣室の扉を開くと、夏の日差しが眩しく差し込んできた。「おーい! 伊吹!」先に着替え終わっていた陸が、大きく手を振る。「ごめん、お待たせ!」そう言って三人の方へ歩いていくと、陸が一瞬だけ目を丸くした。「……。」「え、なに?」「いや、なんでも。」照れくさそうに視線をそらし、頭をかく陸。その反応が少しおかしくて、私は思わず笑ってしまった。「似合ってるじゃん。」玲央がさらっと言う。「ありがとう。」自然に褒められると、少しだけ照れくさい。そして最後に、湊と目が合った。「……。」なぜか何も言わない。「な、なに?」思わず聞き返すと、湊は少しだけ困ったように笑った。「……似合ってる。」たったそれだけ。なのに胸がどきりと鳴る。「……ありがと。」小さく返事をすると、湊は照れ隠しをするように海の方へ歩き出した。「よし! 泳ぐぞー!」陸が勢いよく走り出す。「待って!」四人で海へ向かう。足元に冷たい波が押し寄せてきて、思わず声が漏れた。「冷たっ!」「伊吹、こっち!」湊が笑いながら手を振る。その瞬間。「えいっ!」陸が海水を思い切りかけてきた。「きゃっ!」「ははっ! 大成功!」「もう、陸!」私は両手ですくった海水を思い切り陸へかけ返す。「うわっ!」その様子を見て玲央まで笑い出した。「玲央も!」「え、ちょっ──」気づけば四人で水を掛け合い、大笑いしていた。子どもの頃と何も変わらない。それなのに。胸の中だけは、少しずつ変わっている。ひとしきり遊んだあと、砂浜へ戻る。「喉乾いたな。」陸が自販機を指差した。「飲み物買ってくる。」「俺も行く。」玲央も立ち上がる。「伊吹たちは?」「私はここで待ってる。」そう答えると、湊も砂浜に座った。二人きり。波の音だけが静かに聞こえる。「楽しい?」湊が海を眺めたまま聞く。「うん。すごく。」「よかった。」その優しい横顔に、また胸が熱くなる。ふと風が吹き、私の麦わら帽子が砂浜を転がった。「あっ!」追いかけようと立ち上がる。でも、その前に湊が走り出していた。波打ち際で帽子を拾い、砂を払って私に差し出す。「はい。」「ありがとう。」帽子を受け取る瞬間、指先が少しだけ触れた。その一瞬だけで、心臓が大きく跳ねる。「……顔、赤いけど大丈夫?」
海へ行く朝。私は鏡の前に立って、じっくりと自分を見ていた。「……大丈夫。」白いTシャツにデニムのショートパンツ。その下には、昨日まで悩みに悩んで決めた水色の水着を着ている。昨日、那月が「絶対こっち!」と勧めてくれたもの。自分ではまだ少し慣れない。鏡の中の私は、いつもと同じようで。でも、今日は少しだけ違って見えた。「伊吹ー!朝ごはんできたよ!」一階からお母さんの声が聞こえる。「今行くー!」私は鏡から離れた。そして、もう一度だけ自分の姿を確認する。……変じゃないよね。そんなことを考えている自分が少し恥ずかしくなった。「だって今日は海でしょ?」小さく呟く。ただ四人で海に行くだけ。いつもと同じ。そう思おうとしても。昨日から、どうしても気になってしまう。もし湊が見たら。「……何考えてるの。」私は自分で自分に突っ込み、慌てて部屋を出た。リビングへ行くと、お母さんが朝食を並べていた。「おはよう。」「おはよう、伊吹。」席に座ろうとした瞬間、那月が私の服を見て笑った。「その服かわいい!」「ありがとう。」「水着も?」「……うん。」「やっぱり水色にしたんだ!」那月は満足そうに頷いた。「絶対似合うって言ったもん。」「はいはい。」「湊お兄ちゃんにも見せるんでしょ?」「……っ!」思わず箸を落としそうになる。「なんでそうなるの!」「だって今日一緒に海行くんでしょ?」「そうだけど……。」「じゃあいいじゃん。」那月は楽しそうに笑う。私は何も言い返せず、黙って朝ごはんを食べた。「水分もしっかり取るのよ。」お母さんが言う。「はーい。分かってるよ。」朝食を食べ終え、玄関で靴を履く。「行ってきます!」「楽しんできてね!」「湊お兄ちゃんによろしくー!」「もう!そういうこと言わないで!」笑い声を背中に受けながら、私は家を出た。駅前に着くと、玲央がベンチに座って待っていた。「おはよう。」「おはよう!」少しして陸が走ってくる。「セーフ!間に合った!」「またギリギリ。」玲央が呆れたように言う。「今日は寝坊してないから!」「それ、昨日も聞いた。」「今日は本当!」そんな会話をしていると。「悪い、待った?」聞き慣れた声がした。振り向く。湊だった。黒いTシャツに薄いデニム。飾らない服
翌日。昼食を食べ終わって部屋に戻ると、スマホが震えた。四人のグループLINEだった。【水曜日、何時集合にする?】陸からのメッセージだった。【朝の九時くらいでいいんじゃない?】玲央がすぐに返す。【早くない?!】私は思わず笑って送ると、【海なんだから早いほうがいいでしょ。】またまた玲央からの返信に湊からも返信が来た。【俺もそれでいい】たった一言。それだけなのに、私の口角が上がった。【じゃあ九時ね!】送信してから、スマホを胸元に置く。「……楽しみだな。」もちろん、海に行くことが。陸も玲央も一緒だから。昔から何度も四人で遊びに行っていた。それなのに、今年は少しだけ違う。体育祭の日、湊が走っている姿を見た時も。夏祭りで迷子になった私を、湊が見つけてくれた時も。胸が変に騒がしかった。_________________海へ行く約束をしてから三日が経った。私は朝から自分の部屋でクローゼットを開けていた。「……どうしよう。」ベッドの上には、水着が二着。昨年着たネイビーの水着。そして、先日買ったばかりの淡い水色の水着。どっちにしよう。「うーん……。」鏡の前で合わせてみる。昨年のでもいい。でも、新しい方も着たい。「決まんない……。」その時だった。「お姉ちゃーん!」勢いよく部屋のドアが開く。「……ノックしてよ。」「ごめんごめん。」笑いながら入ってきた妹は、ベッドの上の水着を見て目を丸くした。「え!海!?」「うん。」「いいなー!」妹は新しい水色の水着を手に取る。「こっち可愛い!」「そうかな?」「絶対こっち!」私はもう一度鏡を見る。確かに可愛い。でも。「派手じゃない?」「全然!」妹は腕を組んで私を見る。「……お姉ちゃんさ。」「ん?」「誰か意識してる?」「え?」思わず固まる。「そんなに悩むなんて珍しいじゃん。」「海だからだよ。」「ふーん。」その返事に、妹はにやっと笑った。「湊お兄ちゃん?」「なっ……!」思わず声が裏返る。「違う!」「じゃあなんで顔真っ赤なの?」「暑いだけ!」「部屋クーラーついてるけど?」「……。」何も言い返せない。妹はケラケラ笑いながら部屋を出ていこうとする。ドアの前で立ち止まり、「私はその水色が好き!」と言い残して階段を
「暑っ……。」駅前を歩きながら、陸が首元をあおぐ。「さっきからそれしか言ってないね。」]私は笑って陸の方を見る。「だって暑いんだから仕方ないだろ。」「確かに今日は暑い。」湊も苦笑する。「まだ夏休み始まったばっかりなのに、これじゃ先が思いやられるな。」玲央が空を見上げる。真っ青な空に、入道雲が大きく浮かんでいた。「でも夏って感じする!」私は嬉しくなってそう言う。「暑いの嫌いじゃなかった?」陸が聞く。「嫌いだけど、夏は好き。」「矛盾してる。」「いいの!」四人で笑いながら歩く。こういう何気ない時間が、私は好きだった。特別なことなんて何もない。ただ一緒に歩いて。くだらない話をして。笑っているだけ。それだけなのに、今年は少しだけ、胸がくすぐったかった。四人は商店街を抜け、いつものアイス屋へ向かった。小さい頃から夏になると必ず来るお気に入りのお店。「ここ来るの久しぶりじゃない?」伊吹が店を見上げる。「昨年も来た。」玲央が即答する。「……そうだっけ?」「来た。」「覚えてない。」「伊吹はすぐ忘れるからな。」陸が笑う。「失礼な!」そんなやり取りをしながら、店の前に並ぶ。「私はソーダ!」「俺はチョコ。」「抹茶。」「バニラ。」それぞれアイスを受け取り、店の前のベンチに並んで座る。「やっぱ夏はアイスだな。」湊が満足そうに笑う。「おいしい!」私もアイスを食べる。「冷たっ……!」「当たり前だろ。」「分かってるよ!」また笑い声が響く。しばらくアイスを食べながら、四人で夏休みの予定を話していた。「そういえば、海行きたいって言ってたよな。」湊が私を見て言う。「うん。行きたい!」「じゃあ行く?」湊はあっさり返した。「え?」「海。」その一言で、みんなの動きが止まる。「いいじゃん!」陸が身を乗り出した。「毎年行ってるし。」玲央も珍しく反対しない。「今年も行こうぜ。」「じゃあ決まり!」私はわくわくしながら笑う。「いつにする?」四人でスマホを見ながら予定を合わせる。「来週の水曜日なら全員空いてる。」「じゃあ水曜!」「決定!」こうして、今年最初の海の日が決まった。「楽しみだな。」湊が笑う。「うん!」私も笑って頷く。その笑顔を見て、湊も少しだけ嬉しそうに目を細め
終業式が終わり、ついに夏休みが始まった。朝。目覚まし時計を気にしなくていいだけで、少し幸せな気分になる。「夏休みだー!」ベッドの上で大きく伸びをする。窓を開けると、蝉の鳴き声が一気に部屋へ飛び込んできた。夏だ。昨日まで制服を着ていたのが嘘みたいだった。その時、スマホが震える。『暇。』送り主は陸。思わず笑ってしまう。『夏休み初日の感想がそれ?』送ると、すぐに返事が来た。『暇だから遊ぼう。』『急すぎる!』そこへまた通知。今度は四人のグループだった。湊『今日みんな暇?』まるで示し合わせたみたいなタイミング。玲央『暇。』陸『暇。』私は笑いながらスマホを打つ。『みんな暇なんだね。』少しして湊からメッセージが届く。『駅前集合で。アイス食べ行こう。』『行く!』送信ボタンを押した瞬間、自分でもびっくりするくらい返事が早かった。「……。」私はスマホを見つめる。やっちゃった。こんなの、楽しみにしてたみたいじゃん。いや、楽しみなんだけど。「はぁ……。」顔が熱い。恋を自覚した途端、全部が気になってしまう。服は何を着よう。髪は巻こうかな。いや、気合い入れすぎ?鏡の前で何度も着替えては首を傾げる。「伊吹ー!」一階から母の声が聞こえた。「そろそろ出る時間じゃない?」「今行くー!」結局、白いTシャツにデニムといういつもの服を選んだ。駅前に着くと、一番最初にいたのは玲央だった。「早いね。」「五分前だし。」うん、玲央は相変わらずだ。「お待たせ!」次に陸が走ってくる。「暑すぎ……。」「走ってきたの?」「二度寝した。」「珍しい!」そんな話をしていると、「悪い、待った?」最後に湊が現れた。その瞬間。自然と目で追ってしまう自分がいた。黒いTシャツに、ベージュのパンツ。シンプルなのに、なんだかよく似合っている。「伊吹?」「えっ?」「ぼーっとしてた。」「してない!」慌てて目を逸らす。陸はその様子を横で見て、小さく眉をひそめた。玲央だけが気付いたように、そっと苦笑する。「じゃあ行くか。」湊の一言で、四人は歩き出した。駅前から歩き出す。蝉の声が響く道を、四人で並んで歩いた。「そういえばさ。」陸が口を開く。「夏休み、何する?」「宿題。」玲央が即答した。「真面
花火が夜空に大きく咲いた。「きれい……。」思わず声が漏れる。色鮮やかな光が夜空いっぱいに広がり、ゆっくりと消えていく。「毎年見てるのにな。」湊が笑った。「うん。」「でも、何回見てもすごい。」私は小さく頷いた。その時だった。「伊吹ー!」遠くから私を呼ぶ声が聞こえた。「いた!」陸が人混みをかき分けながら駆け寄ってくる。その後ろには玲央の姿もあった。「よかった……。」陸は私の顔を見るなり、安心したように息をついた。「ごめん、陸。」「怪我は?」「してない。」「ならいい。心配したんだからな。」陸は少しだけ眉をひそめた。「電話もつながらないし。」「ごめん…。」「人混みで一人になるな。」そう言って軽く頭をぽんと叩く。昔から変わらない。陸なりの優しさだった。「俺も探した。けど見つからなくってさ。」「ごめんね。」「無事ならそれでいい。次から気を付けろ。」そう言いながらも玲央はどこか安心したように笑った。その様子を見た湊は、小さく息を吐いた。四人そろって、もう一度花火を見上げる。しばらく誰も言葉を発しなかった。夜空には次々と大きな花が咲いては消えていく。色とりどりの光が私たちを照らしていた。屋台の賑わいも。子どもたちの笑い声も。今はどこか遠くに聞こえる。私はただ静かに花火を見上げた。こうして四人で並んで花火を見るのは、もう何回目だろう。小さい頃は、何も考えずに笑っていた。中学生になっても。高校生になっても。ずっと変わらないと思っていた。だけど、今年だけは違う。同じ景色なのに。私の心は、少しずつ変わっているようで。そう思いながら私は口を開いた。「今年の花火、昨年よりすごくない?」空を見上げてそう言うと、「それ毎年言ってる。」玲央がぼそっと言う。「え、そうだったっけ?」「うん、言ってるな。」陸も頷きながら笑う。「伊吹は毎年同じこと言うよな。」「そんなに同じこと言ってる?」「昨年は『来年も来ようね。』って言ってた。」湊が思い出したかのように笑う。「言ったかも。」「俺、ちゃんと覚えてる。」そう言って湊は私と目を合わせた。その一言に、私は胸が温かくなっていくのを感じた。昔の何気ない言葉まで覚えてくれていた。そんなことが、少し嬉しかった。「来年も四人で見られるか