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第18話

Auteur: 匿名
三十歳の誕生日の願い?

慎也は一瞬ぽかんとした。だがすぐに、ケーキの前で十本の指を組んで願い事をした、あの夜の光景が脳裏に浮かんだ。

詩乃の命を使って、栞の命を交換できますように。

そんなわけない。

眉をひそめながら、慎也は心の中で何度も何度も、あの死亡証明書を否定した。

あのときの願いは、誰にも言っていない。詩乃が知っているはずがない。

ぼんやりと顔を上げると、そこには栞がいた。

なんとなく、顔色が良くなっている。頬もふっくらしてきたように見えた。

その瞬間、栞が勢いよく慎也の手から死亡証明書を奪い取った。

栞は死亡証明書を素早く細かく破り、その破片を撒いた。

「慎也!騙されないでよ、こんなのに!

全部、詩乃の策略なんだから!

行方不明を装って、先生に死亡証明書を渡させただけよ!死亡証明書って、家族の署名がなきゃ発行できないのよ!

あなたはその間、上江市にいなかったじゃない!本当に死んだなら、一体誰が手続きをしたっていうの?

詩乃は絶対に逃げただけよ!」

栞の言葉が一つ一つ慎也の耳に入り込むたびに、その表情は次第に納得の色に変わっていく。彼の視線が、医師へと徐々に鋭さを帯びていった。

栞もすぐにその空気を察し、医師に向き直って目を吊り上げた。

「分かっていますか?そんな嘘の書類作ったら、証拠偽造で捕まることになりますよ!」

医師は目の前のふたりを冷静に見つめながら、静かに息を吐いた。やっぱり、詩乃の言っていた通りもう救えない二人だった。

「信じたくないなら、別にそれで構いません」バラバラになった書類の切れ端を一つ一つ拾いながら、医師は慎也の視線にまっすぐ応えた。「詩乃さんがあなたと結婚したのは、本当に間違いでしたね」

病室へ戻っても、慎也の怒りは収まっていなかった。

慎也は医師の名前をメモに控え、この件について病院に苦情の手紙を書こうと固く決意していた。

その様子に、栞の顔には一瞬の動揺が走ったが、それをすぐに抑え込み、何度も慎也の背中を優しく撫で続けた。

「慎也、そんなに気にすることないわ。あの医者も、ただ詩乃に唆されたに過ぎないのよ。

一番の問題は、詩乃がどうしてあそこまでして死んだふりなんてしたのかってことよ」

慎也は軽く笑みを浮かべた。「俺の気を引きたかったんだろ。このところずっと、君にばかり時間を使ってい
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