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番外編①・第三話。

Author: 愛月花音
last update Last Updated: 2025-04-08 17:40:31

 それが会ってハッキリすると、無性に腹が立ってきた。

 ウジウジしていないで、ちゃんと向き合ってほしい。その櫻井課長にも。

「まぁ……簡単に忘れられるものではないだろう。焦らずに居ることだな。いずれは時間が解決してくれる」

「青柳さん……」

「……そう言って欲しいのか? 俺に」

「えっ?」

 そう思ったら、自分でも驚くぐらいに亜季に説教をする青柳。

 そこまで言うつもりはなかったが、口が動いたら止まらなかった。そこで、ようやく気づいた……自分の気持ちに。

(俺は、吹っ切ってほしかったんだ)と……。

 ずっと櫻井課長のことを考えないでほしい。そのためにも、ハッキリさせてほしかったのだろう。

 上手くいけば仕方がないが、もしダメだったら。踏ん切りがつくはずだ。本気で

ぶつかった相手なら、言わないよりも言った方がスッキリする。

 なんより、彼女に笑ってほしかった。沈んだ姿は似合わないと思った。

「やり直したいと思うなら動け。君が動かない限りは何も変わらない」

「……まだ……やり直せるでしょうか?」

「さあな。そんなの俺に聞いても分からない。で、どうするんだ?」

 青柳の言葉に、亜季は静かに前を見る。

 動かないと何も変わらない。それは自分自身にも言っていることだ。

「私……追いかけます。課長とやり直したいから」

「……そうか」

 青柳は、これ以上は何も言わなかった。彼女が決めたことだからだ。

 食事を済ませてお店を出ると、亜季は頭を深く下げて、お礼を伝えてきた。

「ご指摘ありがとうございました。私……目が覚めました!」

「どうやら、ちゃんと前を向く気になれたようだな」

「青柳さん……」

 青柳は静かに微笑んでみせる。

 亜季の顔を見ると、どこかスッキリしていた。きっと、自分のやるべきことを見つかったのだろう。

(ああ、彼女は笑うと魅力的な人だな)

 やっと彼女の微笑む姿を見ることができたのに、気持ちは切なかった。

 でも……これで良かったのかもしれない。そう青柳は思った。

「もし、ぶつかってみてダメなら、また俺に連絡して来い。相談でも愚痴でも聞いてやる」

「ありがとうございます!」

 青柳はそう言ったが、そこに本音が隠れていた。でも、それは言わないつもりだ。

 彼女が、ちゃんと向き合って、会いに向かうまでは。

 そして亜季は頭を下げると、青柳とそのまま別れた。

 
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