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希望のスピーチ、五歳の少女が語る真実

Author: 吟色
last update Last Updated: 2025-10-03 07:50:18

アリアがステージに立つと、会場が静まり返った。

大きなスクリーンに、五歳の少女の姿が映し出される。白いドレスを着て、胸には母親からのペンダント。

数千人の視線が、この小さな存在に注がれている。

アリアは深呼吸した。ペンダントが優しく光り、勇気を与えてくれる。

「みなさん、こんにちは」

マイクを通して、アリアの声が会場に響く。五歳とは思えないほど、はっきりとした発音だった。

「わたしは、アリア・ヴァルストです」

会場の空気が動く。誰もが、この瞬間を待っていた。

「わたしには、とくべつなちからがあります」

アリアが小さく手をかざすと、美しい光が広がった。会場全体が、優しい輝きに包まれる。

「わあ……」

観客たちから感嘆の声が漏れる。

「でも、このちからは、こわいものじゃありません」

アリアが続ける。

「ひとを、しあわせにするちからです」

光がさらに広がり、会場にいる全ての人を包んでいく。温かく、穏やかで、心地よい光。

「わたしが、うまれたとき」

アリアが自分の物語を語り始める。

「パパとママは、とてもよろこんでくれました」

スクリーンに、赤ちゃんの頃のアリアの写真が映し出される。リリスとカインが優しく抱いている姿。

「でも、わたしのちからを、こわがるひともいました」

「『あぶない』『かんりしなきゃ』って」

アリアの声に、少しの悲しみが混じる。

「わたしは、わるいこなのかな、って、おもいました」

会場が静まり返る。五歳の少女の純粋な告白に、多くの人が胸を打たれている。

「でも、パパとママが、いいました」

アリアが微笑む。

「『アリアは、わるくない。アリアは、アリアのままでいい』って」

「それから、ともだちができました」

スクリーンに、レオやサラ、トムたちとの写真が映る。

「レオくんは、アリアのまほうを、こわがりませんでした」

「『きれいだね』って、いってくれました」

「サラちゃんも、トムくんも、みんな、ともだちになってくれました」

観客たちは、子供たちの自然な交流の写真に見入っている。

「わたしは、おもいました」

アリアが真剣な顔になる。

「とくべつなちからを、もっていても、ともだちになれるんだって」

「いっしょに、あそべるんだって」

「いっしょに、わらえるんだって」

その言葉に、会場のあちこちで涙を拭う人の姿が見られる。

「でも、せかいには、まだ、わたしみたいなこども
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