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4話

Author: 東雲桃矢
last update publish date: 2026-08-06 13:41:06

 悔しくて涙が流れると、拓也は汚物を見るような目でヒカリを見て、手を離した。

「汚いから泣くな、めんどくさい」

 拓也に肩を押され、倒れてしまう。テーブルに頭を打ち付けたが、誰も心配しない。

「さっさとドレスのレンタルして、メイクでそのきったない顔どうにかしてよね」

「アンタも母親と一緒に死ねばよかったのよ、気持ち悪い」

「この恥さらしが」

「お前と結婚したがる男なんか、この世にいねーよ」

 4人はヒカリに暴言を吐き、控室から出ていった。残されたヒカリは、声を上げて泣いた。

 実母がいた頃は幸せだった。父もヒカリを溺愛していたし、母も優しくて、ふたり共ヒカリが上手く演じられた時は褒めてくれたし、上手くいかない時はアドバイスして、励まして、ヒカリが上手に演じられるまで付き合ってくれた。

 だからヒカリは、天才子役と言われるまでに成長できたし、今も成功し続けられている。

 だが、結花と再婚してからすべて壊れてしまった。

 母が亡くなった時はショックではあったが、父は母の分までヒカリを愛そうとしてくれたから、まだ救いはあった。

 泣きたくなったらヒカリを抱きしめ、一緒に泣いてくれて、その後は決まって思い出のレストランに連れて行ってくれた。

 結花が来てからは、ヒカリは嫌がらせをされるようになった。まだ子供のヒカリに家事を押し付けたり、練習してれば邪険に扱うか下手だと笑うかだった。すれ違えば足を踏まれたり、背中を押されたりしたし、視界にヒカリが入れば「醜いから視界に入らないで」と言われた。

 父に相談しても、「母さんはベテラン女優で忙しい」とか、「大ベテランのアドバイスをそんなふうに受け取るな」とか言われるだけで、ヒカリを助けてはくれなかった。

 舞花が産まれると、更に追い込まれた。私物は盗まれたり壊されたりするし、怒ったら「お姉ちゃんだから我慢しろ」と言われ、助けを求めても知らん顔するか、舞花の肩を持つか。

 服もお小遣いも、いつも舞花が優先で、新品の服を買ってもらえたのなんて数える程度で、舞花のお下がりを押し付けられることが多かった。

 ヒカリの方が年上で体が大きいから、舞花の服が小さいのは当然なのに「デブのお前が悪い」と言われた。

 舞花は毎月5千円のお小遣いを貰える上に、友達と出かける度に数千円もらえるのに対し、ヒカリは毎月千円で、友達と出かける時にはもらえない。もらえたとしてもほんの数百円だった。

 ヒカリが稼いだお金も当然のように両親が消費していたので、自由に使えるお金は毎月千円。その千円は服や筆記用具代で消えることがほとんどだったため、子供の頃は自由にお金が使えなかった。

 ヒカリが好きにお金を使えるようになったのは、高校生になって、マネージャーに相談しながら通帳を作ってからだった。

 彼氏を奪われたのも、1度や2度ではない。その度に結花には「女として劣ってるあなたが悪い」と言われてきたし、父の拓也だって「父さんだってお前なんかよりも、舞花を選ぶ」と言われてきた。

 思い出したくもないのに、過去を思い出し、更に苦しくなる。

「今度こそ、幸せになれると思ったのに……!」

 全部、舞花が壊していく。あの子はヒカリが少しでも幸せになると、笑顔でそれを踏みにじる。舞花がいる限り、自分は幸せになれない。

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