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last update Last Updated: 2025-09-11 18:47:12

「アレックスさん、本当にここでこれを育てるんですか? 町を一つ滅ぼしかねないものなのに」

 時計塔の地下にある、普段は使われていない石造りの実験室。

 その中に立って、ミリーは不安を隠せないでいた。アレックスはこの部屋を急遽改造して、厳重に隔離された魔法の温室(アクアリウム)を作り上げていたのだ。

 強化ガラスと錬金術の金属でできた巨大な水槽が部屋の中央に鎮座し、無数のパイプや魔力回路が接続されている。装置は青白く光っては、低い駆動音を発していた。

「危険と可能性は常に同居する」

 と、アレックスは言った。

「だからこそこの生物を分解し、制御下に置く。そのためには、まずそのライフサイクルを完全に観測する必要がある。ここは最適な環境だ」

 彼は運河から採取してきたプランクトンの群体サンプルを、慎重に水槽の中へ移した。とぷん、と小さな音がして、群体のかけらが水槽の中に沈んでいく。

 ミリーは助手として、水槽の魔力濃度、水温、プランクトンの増殖速度などを、分刻みで記録していくことになった。

 音声記録のために連れてこられたリンギは、不安そうにミリーの肩にとまっている

(街を滅ぼしかねない怪物を、わざわざ時計塔の中で育てるなんて、正気とは思えない。でも、彼を信じるしかないんだわ。この怪物の『生態』を理解しなければ、止める方法も見つからないのだから)

 ミリーは記録用のノートにペンを走らせる。恐怖と緊張で手が震えそうになるたび、ジャーナリストの使命感とプライドとで押し殺した。

 観測を開始して、まだ数時間しか経過していない。しかし水槽の中のプランクトン群体は、アレックスの与える魔力を養分として、予測を遥かに超える速度で増殖していた。

 水槽の中は既に透明な水ではなく、黒緑色のスープのように濁り始めている。群体の一部がうごめいて、強化ガラスに貼り付いていた。ガラス越しの断面図に、ミリーは身震いする。

「アレックスさん。増殖速度が、計算の三倍を超えています!」

「……ふむ。想定以上の捕食能力だな」

 記録を続けていたミリーが、最初にさらなる異

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