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絆の証明

作者: 吟色
last update 最終更新日: 2025-09-05 06:06:34

翌夜、予告通りオブシディアン機関が再び現れた。

しかし、今度はクロたちも準備していた。

「来たな」

学院屋上で、7人が待ち受けていた。

敵を迎え撃つ陣形で、全員が戦闘態勢を整えている。

「今度は逃がさない」

空から降下してくる黒ローブの集団。

その中央に、いつもの指揮官が立っていた。

「準備していたか」

男が冷笑する。

「だが、無駄だ」

指揮官が手を振ると、これまでとは違う装置が現れた。

巨大な魔法陣が空中に展開され、学院全体を覆い始める。

「これは……」

フィアが顔を青くする。

「魔力遮断結界……」

「正解だ」

指揮官が得意げに答える。

「この結界内では、一切の魔術が使用不可能」

「なっ……」

クロが雷を出そうとするが、何も起こらない。

ジンも同じだった。

「魔力が……封じられている……」

他の仲間たちも、魔術が使えない状態になっていた。

「これで、ただの子供だ」

敵の術者たちが、武器を構えて近づいてくる。

魔術が使えない以上、物理的な戦闘しかできない。

「くそ……」

カイが拳を握るが、炎が出ない。

「魔術なしで、どうやって戦えって言うんだよ」

絶望的な状況だった。

しかし、その時――

「大丈夫」

サクラが前に出た。

「魔術が使えなくても、私たちには別の力がある」

「別の力?」

「絆の力よ」

サクラが振り返って微笑む。

「魔術がなくても、心は繋がってる」

その言葉に、クロははっとした。

(そうだ……魔術がすべてじゃない)

「みんな、手を繋いで」

クロが提案する。

「魔術じゃない方法で、力を合わせよう」

7人が手を繋ぎ、円を作った。

魔力は使えないが、心は繋がっている。

「……気持ち悪い儀式だな」

指揮官が嘲笑する。

「魔術も使えないのに、何ができる」

しかし、その時――

7人の周囲に、微かな光が生まれた。

魔力ではない。

心の光。

絆の証明。

「何だ……あの光は……」

敵が困惑する中、光はどんどん強くなっていく。

「これは……魔術じゃない」

「純粋な精神エネルギーです」

Dr.シュタイナーの声が、通信機から響いた。

「信じられない……魔力を使わずに、エネルギーを生成している」

光が最高潮に達した時、魔力遮断結界が崩壊した。

バリバリと音を立てて、結界が粉々に砕け散る。

「馬鹿な……我々の結界が……」

「絆の力は、どんな結界でも破れるってことだ」

クロが立ち上がる
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