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情報を求めて

Auteur: 液体猫
last update Dernière mise à jour: 2025-04-25 17:49:00

 太陽が真上に差し掛かった頃、|華 閻李《ホゥア イェンリー》は眠りから覚めていた。

 うーんと上半身だけを伸ばし、少し体をひねる。

「はあ、よく寝た。って、もうお昼……なのかな?」

 お腹の虫がぐるぐる鳴った。お世辞にも肉づきがいいとは言えない薄いお腹を|撫《な》でる。

 ふと、自身にかけられた布に気づいた。これは誰のだろうかと小首をかしげ、大きな瞳をまん丸にさせる。

 そんな子供の細く長い銀の髪は太陽の光を浴び、とても美しい。髪を耳にかける仕草には|儚《はかな》さがあり、|陽《ひ》の光が彼の|見目麗《みめうるわ》しさを引きたてていた。

「この服は|思《スー》……じゃ、ないよね?」

 見覚えのある服だった。

 上は白で下にいくにつれて黄色くなっていく、特徴ある服である。これは|黄族《きぞく》のものだった。

「あれ? もしかしてこれ、先生の?」

 先生がかけてくれたのだろうか。

 周囲を見渡す。しかしそこには|爛 春犂《ばく しゅんれい》はおろか、優しい青年の|全 思風《チュアン スーファン》すら見かけなかった。

 唯一いるのは、二匹の獣である。

 一匹は白い毛並みに黒の|縦《たて》じま|模様《もよう》が入った、仔猫のような見目をした|白虎《びゃっこ》だ。もう一匹は|躑躅《ツツジ》と名づけた|蝙蝠《こうもり》である。

 どちらもかわいらしい姿で、一緒に丸くなって寝ていた。

 |華 閻李《ホゥア イェンリー》は、無防備な二匹を軽く|撫《な》でる。

「ふふ、どっちも可愛いなあ」

 体毛の少ない|蝙蝠《こうもり》は存外ツルツルとしていた。|白虎《びゃっこ》の方は、もふもふとし

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