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ผู้เขียน: 北川とも
last update วันที่เผยแพร่: 2026-06-03 07:00:40

 アタッシェケースをテーブルの足元に置き、寛ぐためにコートとジャケットを脱ぐ。ネクタイを解いたところで、裕貴が思いがけないことを言った。

「啓太郎、この部屋にパジャマと部屋着を置けば」

 啓太郎が目を見開いて顔を上げると、裕貴はふいっと顔を反らす。

「まあ、隣なんだから、無理にとは言わないけど……」

「ついでに、予備の布団も置こう。俺が泊まれない。年が明けたら買いに行くか」

 このとき二人の間には、なんともいえない気恥ずかしさが漂った。考えてみれば、結ばれてから初めて、裕貴と顔を合わせたことになる。本当ならクリスマスにこそ、こんなふうに気恥ずかしいが、どこか甘い空気を堪能するはずだったのだ。

「――年越しソバ、作るよ。一応、二人分の準備をしてあるんだ」

 キッチンに立つ裕貴の後ろ姿を見つめる。ふと、啓太郎はあることに気づいた。

 兄の博人がこの部屋に来てから、少なくとも啓太郎の前で裕貴は、あの大きめのカーディガンを羽織らなくなった。今も、Tシャツの上からフリースを羽織っている。そのことを指摘するのは野暮に思えて、啓太郎は何も言わなかった。

 大盛りの天ぷらソバを味わい、満
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    ****「――ピンチだったな、俺……」 マンションのエレベーターの中で、啓太郎はぐったりしながら洩らす。冗談ではなく、本当にピンチだった。 裕貴が旅行先から戻ってくる前に、わずかな正月休みを終えて仕事に戻ったのだが、いきなりハードだった。  単体試験のあとの結合試験に入ったのはいいが、あちこちで悲鳴が上がる惨状で、そこから修正を加え、クライアントプログラムを起動させたのだ。そこに至るまで、およそ三日間の時間を必要とした。  もちろん啓太郎は、いまさら珍しいことでもないが、ずっと会社に泊まり込んでいた。おかげで、正月の浮かれ気分など、すでに啓太郎には残っていない。 仕事の合間、裕貴が旅行から戻ってきたことは知っていた。裕貴から、戻ってきたとメッセージが来たのだ。できれば電話で声を聞きたかったが、仕事か、食うか、仮眠かという生活の中では、電話したところで満足な会話が成り立つとは思えず、結局、淡白な文字でのやり取りだけだった。 足を引きずるようにして通路を歩きながら、啓太郎はあることを思い出してふっと笑う。  裕貴が家族旅行に出かけるとき、自分が覚えた嫌な予感がいかにあてにならないものだったのか、いまさらながら実感したのだ。 裕貴は何事もなく無事に戻ってきたというのに――。 さっそく裕貴の部屋のインターホンを押すと、少し間を置いてからドアが開けられた。このとき、ドアの向こうから現れた裕貴の姿を見て、一瞬啓太郎は、わずかな違和感を覚えた。「おかえり」 そう言って裕貴に玄関に迎え入れられ、ドアを閉めて鍵をかけた啓太郎は、何より先に裕貴の顔を覗き込む。「何?」 裕貴が笑って首を傾げる。いつもと変わらない笑顔だと思うが、なぜかそこに、啓太郎は少しのぎこちなさを感じる。それが、違和感の正体だ。  もっとも、自分の直感があてにならないのは、啓太郎自身がよく知っている。「旅行、楽しめたか?」 啓太郎の問いかけに、裕貴は一度顔を伏せかけたが、すぐに意味ありげな流し目を寄越してきた。「……なんだよ、その目は」 「啓太郎が貧しい食生活を送りながら寂しがっているかと思ったら、とても楽しむ気になんてなれなかったよ」 「あー、そうですか」 裕貴に腕を引かれるまま部屋に上がると、さっそく啓太郎はアタッシェケースを置いてからコートを脱ぐ。すると裕貴の両

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    **** 自分が感じた『嫌な予感』が、頭から離れなかった。 せっかくの正月休みだというのに何もする気が起きず、コタツに入って横になったまま啓太郎は天井を見上げていた。  裕貴と別れたのは、ほんの数時間前だ。どこの温泉に出かけたのかは知らないが、もうすぐ日が暮れようとしているので、観光したにしても、そろそろ旅館かホテルに入る頃だろう。 もしかして事故にでも遭ったのではないか――。 普段、自分の直感など信じない啓太郎だが、裕貴が関わっているのかと思うと、最悪の事態ばかり想像してしまう。  つけっぱなしにしてあるテレビから、にぎやかな声が流れてきた。気を紛らわせるつもりでつけているのだが、かえって気が散る。 片手を伸ばしてテーブルの上に置いたリモコンを取ろうとしたとき、突然、スマホが鳴り始める。慌てて体を起こした啓太郎は、勢いよくスマホを取り上げた。表示を見ると、裕貴からだった。「裕貴かっ?」 必死の声で問いかけると、拍子抜けするような柔らかな笑い声が電話の向こうから聞こえてくる。『何、啓太郎、必死な声出して。あっ、おれがいなくなって寂しかったんだろ』 からかうような裕貴の言葉を聞き、一拍置いてから啓太郎は肩から力を抜いた。自分の心配が杞憂で済んだと確信できたのだ。  ほっとした次の瞬間には、笑みが洩れる。いくぶん抑え気味の声で裕貴に問いかけた。「宿泊先に着いたのか?」 『うん、とっくに。きれいな旅館だよ。父さんが知り合いに頼んで、無理やり取ってくれたところらしいけど。ご飯も美味しかった』 「……そりゃ、よかった」 気楽そうな裕貴の言葉を聞くと、この数時間の自分の心配はなんだったのだろうかと思えてくる。  俺の直感はあてにならないと、啓太郎は苦笑しながら髪に指を差し込む。「それで、お前の親父さんや、博人さんは?」 『二人とも、大浴場に行った』 「で、お前は?」 『嫌だよ。知らない人たちと一緒に風呂に入るなんて』 いかにも裕貴らしい意見で、妙に啓太郎は納得してしまう。引きこもりを旅行に連れ出したところで、過ごし方はあまり変わらないらしい。  しかし、裕貴がみんなと風呂に入らない事情は、そう単純ではなかった。『啓太郎、おれが引きこもりだから、大浴場に入れないと思っているかもしれないけど――それもあるけど』 「あるんじゃ

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