「やだやだやだっ!」レラは二人のいちゃつきぶりに耐えきれず、とわこの手を放して階段を駆け下りていった。夜の9時。とわこは子ども部屋から主寝室へ戻ってきた。奏は蒼を抱きながら顔を上げて彼女を見た。「どうだった?」「謝ったよ。試合に集中して、気にしないようにって伝えた。彼も『わかってる』って。思ったより怒ってなかった」とわこは少し笑みを浮かべた。「それなら良かった」奏はホッと息をついた。「今夜は蒼と一緒に寝ようか。夜の育児ってやつを体験してみたいんだ」蒼はまだ小さく、しかも奏にそっくり。まるで小さい自分を抱いているような気分になれる。その溢れる父性愛は、まさに海のように果てしない。夜の育児どころか、ずっと抱いていたいくらいだ。「本気で言ってるの?」とわこは眉を上げた。「明日、仕事あるんでしょ?この五日間ずっと私と一緒に過ごして、結婚式の準備も全部後回しだったんだから、明日はきっと忙しいはずよ?」奏はまだ事の重大さに気づいていなかった。「子どもと一緒に寝たくらいで、朝起きられなくなるか?」「夜中にミルク飲みたがるわよ。しかも飲んだ後、目が冴えて寝なくなったりして、そうなったら、あなたも一緒に遊ぶしかないの。で、彼が遊び疲れて寝ても、あなたがすぐ眠れるとは限らない」とわこがそこまで言った時点で、奏は育児体験の夢から完全に目覚めた。「確かに、明日は忙しくなりそうだ。じゃあ、今のうちにちょっと遊んでおこうかな」そう言って、蒼を抱きながら動物図鑑を開き、一緒に絵を眺め始めた。とわこは書斎から一冊の本を持ってきて、ベッドに横たわりながら読み始めた。「とわこ、何読んでるの?」奏はチラッと彼女の方を見て、その本のタイトルに気づいた。なんと、それは男性医学の専門書だった。「『男性学』よ」とわこは淡々と答える。「うちには男が三人もいるし、将来、誰が何になるか分からないでしょ」「……」「今年、健康診断受けた?」と彼女が聞いた。「毎年6月に受けてるよ」「そっか。じゃあ、結婚式終わったら、一緒に行こ?」と微笑んだ。「うん」蒼が一人で絵本をめくり始めたのを見て、奏は彼のそばから離れ、とわこの隣に座った。「なあ、俺、避妊手術しようかな?もう子どもは三人いるし、これ以上はさすがにしんどいでしょ?」とわこは驚いた顔で
Read more