しばらくして、外に弥を探しに行ったボディーガードが戻ってきた。「近くの店を何軒か見て回りましたが、弥の姿は見かけませんでした」「もう探さなくていい」奏はあっさりと答えた。「かしこまりました。リゾートの正門には警備を厳重にして、関係者以外は絶対に入れないようにします」「うん、頼む」ヴィラの中、とわこがシャワーを浴びて出てくると、瞳が蒼を抱いているのが見えた。「蒼を連れてきてくれたの?」とわこは少し驚いた。「うん!外で誰かがタバコ吸っててさ、それを見た奏が『だったら蒼は中に』って私に託してきたの」瞳は笑いながら続けた。「でもね、そのタバコ吸ってた男、多分もう奏に辟易してると思うよ。だって、蒼を抱いたまま、延々と息子自慢!あれでもかこれでもかって褒めまくって、形容詞が一つとして被らないんだよ」とわこは思わず笑いそうになるのをこらえた。「ねえ、とわこも気づいてるでしょ?奏、ここ数日めっちゃハイテンションじゃない?今日の昼だって、あんたのこと褒めすぎなくらい褒めてたし、午前中はレラをずーっと抱っこしててさ。誰かがレラをちょっと褒めたら、十倍にして褒め返してて。あまりに抱っこしすぎて、『レラちゃん、足でも怪我してるの?』って聞かれちゃって、笑い死にそうだった」瞳は朝からずっとリゾートに来ていたので、一部始終を見ていたのだ。「多分、ずっと抑えてたものが一気に爆発してるんだと思う。彼にとって、こんなに大勢の客を招くのは初めてのことらしいの」とわこが分析するように言った。「仕事では成功してるって皆知ってるけど、今の幸せな生活もちゃんと見せたくなったんだろうね」「幸せな人にしか、人に自慢したいなんて気持ちは湧かないもんね。そういうの、いいと思うよ!」瞳は蒼をベッドの上に寝かせ、両腕を支えて立たせた。「ねえ、パパって言ってみよう?そしたらミルクあげるよ」蒼は小さな口をもぐもぐと動かした。「パパ!」「パパだよ」「パパ!」瞳はテンション高く、繰り返し「パパ」を連呼した。蒼は少しの間考えるように黙っていたがついに影響されたのか、口を開いた。「パ、パ!」その発音は驚くほどはっきりとして力強く、もし奏がこの場にいたら、確実に発狂していた。「とわこ!聞いた?息子くん、パパって言ったよ」瞳は叫んだ。とわこも大喜びで頷いた。「瞳、あんた
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