All Chapters of 植物人間だった夫がなんと新婚の夜に目を開けた: Chapter 1071 - Chapter 1080

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第1071話

とわこ「あの二人、また親子喧嘩したみたい。奏、うちに住んでたのに、また自分の家に戻っちゃった」瞳「親子なんて、喧嘩しないほうが珍しいって。先生に蓮の宿題をもうちょっと増やしてもらったら?」とわこ「普段から結構出てるよ。もしかしたら、結婚式には来ないかも。海外で大会があるらしくて」瞳「行きたくないなら、無理に来させなくてもいいんじゃない?大人になれば、親子の関係も自然と良くなるよ」とわこ「うん。ねえ、結婚写真撮りに行くんだけど、一緒に来ない?リゾートで撮るの」瞳「OK!ちょっと準備して、すぐ行くね!」メッセージを送り終えると、とわこは奏の方を見た。「奏、カメラマン、もう決まった?」「うん」「ねえ、水の中で撮るのってどうかな?この前見たんだけど、すっごく綺麗だったの!」とわこの妄想が広がる。「あとね、崖の上で撮ってる人もいたよ!」奏「まさか空まで行きたいって言うんじゃないだろうな?」とわこ「なんでわかったの?飛行機あるでしょ?それで空に行って、ドローンで撮るの!」奏は少し眉をひそめた。「本気?」とわこは数秒考えたあと、あっさりと諦めた。「やっぱり、普通に撮ろう。とにかく結婚式を終わらせなきゃ。だってもう子ども三人いるのよ?これ以上延ばしてたら、蓮が先に結婚しちゃうかも」「うちの息子がそんなに早く結婚すると思うか?」奏は彼女の隣に腰を下ろす。「あいつ、女に全然興味なさそうだけどな」「今は興味ないのは当然よ。まだ未成年なんだから」とわこは自信満々に言った。「大人になれば、ちゃんと目覚めるって」「それはどうかな。君、あいつは俺に似てるって言ってただろ?俺だって君に会うまでは、女なんて興味なかった」奏はあっさりと言った。「じゃなきゃとっくに結婚してたさ。君に拾われることもなかった」「拾ったって?ちょっと、奏、自惚れもたいがいにしてよ!」とわこの頬がうっすらと赤くなり、ふと二人の出会いを思い出す。「まあ、あの時は確かに拾ったかもね。あの事故で植物状態にならなかったら、あなたの母親が勝手に相手を決めるなんてできなかったはず。あの時はあなたの方が優秀だったかもしれないけど、今は私だって負けてないわ」奏の深い眼差しが、赤く染まった彼女の頬に落ちる。「今は君の方がずっと優秀だよ」彼は惜しげもなく賞賛の言葉を口にした。
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第1072話

とわこの平静だった心が、一気に冷え込んだ。「あいつ、俺を怖がってるんだ」奏が静かに言った。「だから悟の方を選んだ。俺のところにいたくなかったんだ」「奏、その話はもうやめよう」とわこは胸が締めつけられるように苦しくなった。「今日は結婚写真を撮る日でしょ。暗い話はやめようよ」彼女は思っていた。たとえ黒介が悟の元に戻ったとしても、和夫のそばにいるよりはずっといい。黒介は悟の実の弟だ。悟なら、どんな事情があっても、自分の弟をひどく扱ったりはしないはず。ほどなくして、撮影チームが現れた。ちょうどその頃、瞳もリゾート地に到着した。瞳のアドバイスを受けながら、とわこは三つの異なるテーマでの撮影を選んだ。今日は天気も良く、外での撮影はとても順調だった。当初は外での撮影が1回、スタジオ撮影2回の予定だったが、外の方がリラックスできたため、急遽もう1回外での撮影を追加することに。時はあっという間に過ぎ、夕方になった。館山エリアの別荘。夕食の時間。「先に食べよう。ママは今日はウェディングフォトの撮影で帰ってこられないからね」マイクはとわこに電話をかけた後、子どもたちにそう言った。レラは口をとがらせて文句を言った。「なんで週末に撮らなかったの?見たかったのに、パパとママの写真撮るとこ」マイクは吹き出して笑った。「だって、今撮らないと式に間に合わないんだよ。二人とも賢そうに見えて、実はけっこう抜けてるからな」レラ「そんなことわかってて仲良くしてるマイクも、同じくらいバカってことじゃん!」マイクの笑顔が一瞬止まった。「レラ、お兄ちゃんもうすぐ海外行っちゃうから、これからは俺が一緒に遊んであげるんだよ?ちょっとは優しくしてくれない?」「ふん、弟もいるし!」そう言って、レラは蓮の方を見つめた。「お兄ちゃん、海外に行かないでよ」「昨夜約束したよね。もう撤回なしだよ」蓮は落ち着いた声で答えた。「ううっ、でも、ママが許してくれないかもしれないよ。ママ、きっと寂しがるもん」「レラ、それは君のママがどうこうって話じゃないんだよ。お兄ちゃんが出て行かないと、君のパパ、うちの玄関くぐれないんだからさ」マイクが茶化すように言った。「それに、お兄ちゃんは勉強しに行くんだ。将来はパパよりすごくなるぞ!」レラは項垂れ、小さな唇を尖ら
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第1073話

とわこは思った。蓮は明らかに、わざと自分との対話を避けている。考えれば考えるほど胸が苦しくなって、とうとう耐えきれず、奏に電話をかけた。「奏、蓮が留学を決めたの。私の元から離れていくのよ」電話の向こう、奏の呼吸が少し荒くなる。「俺にできることは?」「何もしないで。ただ、何もできないから」彼女は声を詰まらせた。「もう決めたって。マイクが言うには、遅くても明後日には出発するって。彼、もうこの家に一日たりともいたくないみたい」「彼がそう望んでるなら、行かせてやるしかない」奏は諦めたように言った。「とわこ、もう泣かないで。もう彼を子どもとして見るのはやめよう」「でもそう簡単に割り切れない。奏、私ね、このままじゃ、本当に彼を失ってしまいそうで、怖いの」「大丈夫だよ。彼は君の息子なんだ。永遠に失うなんてことはない」奏は優しく語りかける。「彼はただ俺と向き合いたくないだけ。君のことは、今も変わらず大切に思ってる。君だって、彼に会いに行けるさ。いくらでも」低く穏やかな声に、とわこの気持ちも少しずつ落ち着いていった。「とわこ、人生ってさ、何もかも思い通りにはいかないよ。でも蓮が元気でいてくれるなら、それだけで十分感謝すべきなんだよ」「うん明日は早起きして、ちゃんと話をしようと思う。どうせ行くなら悲しい気持ちのまま送り出したくない」「それがいい。今日はもう休んで」「うん。ところで、今なにしてるの?」「読書中」「何の本?」彼女は心の中で、彼の隣で寄り添っていたかった。「戦争関連のやつ」「あんまり遅くまで読まないでよ。明日に響いちゃう」「わかってる。おやすみ」電話を切ったあと、とわこは目を見開いたまま、暗い部屋の天井を見つめていた。奏が言っていた、「人生は思い通りにならない」ってこと、彼女だってわかっていた。彼だけじゃない。自分も、長い間、苦しい時期を生き抜いてきた。困難に直面しても、あの頃の自分はこんなに弱くなかった。必死で踏ん張って、この家を守ってきた。今は、奏がいる。だからこそ、信じたい。どんな困難も、きっと乗り越えていけると。翌朝。とわこは蓮の部屋を訪れ、話をしに行った。「蓮、ママは、あなたの決めたことを全部尊重するよ」昨夜泣きすぎたせいで、彼女の目は腫れていた。「ママはね、あなたの
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第1074話

奏はレラを片腕で抱き上げ、もう一方の手でしっかりととわこの手を握った。彼の後を追いながら、とわこは空港のロビーを後にした。向かったのは空港の管制センターだった。大きなガラス窓の向こうには、滑走路が一望できる。「あと三十分で、蓮の乗った便が離陸するはずだ」奏は彼女の手を引いて窓辺に向かって歩きながら言った。「昨夜、マイクと少し話をした。彼の考えに、俺も同感だった。今、蓮が海外で学ぶこと、それが彼にとって、きっと一番いい選択なんだ」とわこは黙って彼の言葉を待つ。「予選では、蓮は結翔より三点だけ上だった。それだけの差じゃ、結翔が採点の公平性に文句を言いたくなるのも無理はない。三十点差なら誰も何も言えないけどな。つまり、実力がまだ足りてないってことだ」その言葉に、とわこの眉がきゅっと寄った。「ちょっと息子に厳しすぎない?結翔くんは三歳年上でしょ?ってことは三年間も多く勉強してるのよ?それに対して三点上だったって、むしろすごいことじゃない!」「だけど、結翔に疑いをかけられただけで、彼は感情的に崩れてしまった」奏は冷静なまま彼女を見つめる。「実力を上げるか、心の強さを鍛えるか。そのどちらかが必要だ。蓮が実力を伸ばす方を選んだなら、俺たちはそれを支えてやるべきなんだ」とわこは大きく息を吸い、目を窓の外へ向けた。「本当に強くならないと、ちょっとした言葉で簡単に揺さぶられてしまう。俺は、自分の息子には、いずれ俺を超えてもらいたいんだ。そうすれば、自分と家族を守れる強さを持てる。だから、今の短い別れなんて、我慢できる」とわこは彼に目を向けた。「あなたの言ってること、たぶん正しいわ。でも、気持ちの問題なのよ。頭では理解してても感情がついていかない。彼が十七歳だったら、ここまで辛くはなかったと思う。あなたが初めて海外に行ったとき、こんなに幼くなかったでしょ?」「でも、これは彼自身が決めたことだ。俺たちが無理やり行かせたわけじゃない」「ほら、やっぱりそう言うと思った」とわこは深く息を吐いて、うっすらと涙を浮かべた目で彼を見上げた。「あなたさ、自分で性格が悪いって言ってたけど、本当にそうよ。たまにすごく嫌になる。蓮がこんなに頑固なの、絶対あなたに似たんだわ」彼は何も言い返さなかった。やがて、滑走路の向こう、蓮の乗った飛行機が静かに動き
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第1075話

とわこは彼の唇にそっとキスをしてから、彼を押し返した。「電話出て。私はドレス脱いでくるね」奏はポケットからスマホを取り出し、発信者を確認してから電話に出た。「今日、悟が黒介を連れてDNA鑑定を受けに行きました」電話の向こうから部下の声が聞こえる。「どうも鑑定する動機が怪しいです。実の弟だと分かってるくせに、わざわざあなたから黒介を引き離して、DNAまで取りに行くなんて」奏は鏡の前のとわこに目をやった。彼女は背中のリボンをほどこうとしていた。「引き続き見張ってろ。何かあればすぐ報告しろ」そう言って、彼は通話を切った。「誰から?」とわこが振り向きながら尋ねる。「悟が黒介を連れてDNA鑑定をしたらしい。君、黒介のこと心配してただろ?だから念のため人をつけてる」彼はそう言いながら、彼女の後ろに回り、リボンを解いてやった。「悟、あなたに何か言ってきた?」とわこは何となく胸騒ぎを感じて聞いた。「今のところ、何も」「もしあの人たちが、お金を要求してきたらあなたは渡すつもり?」ふとした気持ちで聞いたが、言葉に棘がにじむ。「ほら、あの人たち、実家を売ったお金なんて、きっとすぐに使い切るわよ。そしたらまた頼ってくるに決まってる」「そうなったら、その時考える」まだ起きてもいないことを、今から気に病んでも仕方ない。「まったくあの人たち、まるで鬼ね!」とわこは眉をひそめた。「それに、和夫もまだA市にいるんでしょ?」「あいつらのことで心乱されるな」奏は彼女のドレスを脱がせると、隣にあった部屋着を手に取り、そっと彼女の頭からかぶせた。「今日はもう外出せずに、家でゆっくり休んでろ」「うん、娘と一緒にいるわ。蓮が出て行ってから、あの子ずっと寂しそうだったから」「しっかり慰めてやれ。悲しみは時間が癒してくれるさ。慣れてしまえば、案外平気になる」時は流れ、五月の終わりが近づいていた。明日はいよいよ、とわこと奏の結婚式。この盛大な式に向けて、主要メディアは連日、特集記事を掲載していた。「関係者によれば、当日はおよそ千名もの招待客が出席予定。街の名士が一堂に会す豪華絢爛な式に!」「このウェディングは、数百億円をかけて執り行われるとのこと。全ては、たった一人の女性の微笑みのために!」ふたりの結婚写真は、各紙の一面を飾った。
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第1076話

館山エリアの別荘。三浦が一通の封書を包みのまま持ってきて、とわこの前に差し出した。「とわこ、開けてみる?それとも、私が開ける?」とわこは受け取って、差出人情報に目を通した。あまり聞き馴染みのない、小さな国からの郵便だった。そのまま包装を開け、中から一枚のポストカードを取り出す。ポストカードを目にした瞬間、とわこの脳裏に浮かんだのは真の顔だった。「真から?」三浦が覗き込みながら訊く。「前と同じ国から?」「違うの。前に彼が送ってきた国じゃない。奏は、結婚したらその国に一度行ってみたいって言ってたのに」とわこは微笑みながらため息をつく。「また別の国に移っちゃったみたい」三浦は眉をひそめてつぶやいた。「もしかして、世界中を放浪してるんじゃ」とわこはポストカードをじっと見つめた。そこには、手描きのイラストがある。結婚式を挙げている男女のキャラクターが描かれている。「彼にこんな絵の才能があったなんて、知らなかった」とわこはぽつりとつぶやく。「いま、どこで何をしてるのかしら。こんなことで、家にすら帰らないなんて」「本当よ。息子はひとりしかいないのに、ずっと帰ってこなかったら、親御さんも心配でたまらないはず!」三浦も憤りを隠さない。「今は連絡、全然取れないの?」「ええ。前に使ってた番号も、もう通じないの」「冷たいようでいて子どもの誕生日は忘れないし、あなたたちの結婚もちゃんと知ってる。国内のニュースは追ってるってことよね。なんだか、矛盾してる人だわ」とわこはカードを机に置いた。「彼がいつか、気持ちを整理できればいいけどね」「マイクさんは、お昼頃に着くよね?」「うん。そろそろ出ようかな」とわこは時計を確認して立ち上がった。「でも、まだ早いよ?それに、運転手さんに迎えに行ってもらえばいいじゃない。空港で誰かに見つかったら大変よ?今のあなた、有名人だから」「大丈夫。ボディガードを連れて行くし、なにより蓮のことが気になって仕方ないの」「でも、出かける時はマスク忘れないでね」「うん、気をつける」とわこはポストカードを丁寧にしまい、服を着替えてから、目立たない格好で家を出た。明日はいよいよ、彼女と奏の結婚式だ。ここ数日、各地からの招待客が次々とA市に集まり、奏は今、郊外のリゾート地で客人のもて
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第1077話

「願うのは自由だけど、問題は君たちが本当にラブラブでいられるかってことだろ?」マイクが軽口を叩く。「君らが前にケンカしたのも、オレのせいじゃないんだし。俺が祈ってたせいって言うなよ?でも、蓮のことはもう心配しなくていいよ。あっちの生活には、ほぼ慣れたみたいだから」「本当に?彼、あんたに何かこっそり話した?」とわこが探るように訊くと、マイクは吹き出した。「彼がこっそり話すようなキャラに見えるか?」笑いながら首を振る。「君の前ならまだ話すけど、他人の前じゃ、無口だ。新しい学校での初日の夜なんてさ、担任にこの子、もしかして喋れないのって聞かれたくらいだ」「えっ、そんなの全然慣れたって言わないでしょ!」とわこは驚いたように声を上げた。「いやいや、慣れたってば!先生に聞いたら、『こっちももう慣れました。いじめる子もいません』って言ってたよ?これで十分適応してるでしょ?」マイクは楽しそうに笑った。「やっぱり、行かせなきゃよかった」とわこは、ぎゅっと眉をひそめる。「もう行っちゃったもんは仕方ないでしょ?それに、奏も言ってたじゃん、結婚式終わったら2人で見に行くって。しっかりその目で確認してくればいいさ。間違いなく、あの子はやせてなんかない、むしろ元気にしてるって」「そうならいいけど。もし少しでもつらそうだったら、すぐ連れて帰る」「ほらほら、そんな顔しないの。明日は晴れてお嫁さんになる日なんだから」マイクはとわこをじっと見て、からかうように言った。「で?今どんな気分?」とわこは数秒考えて、ぽつりと言う。「感想?式って、めちゃくちゃ面倒なんだなってこと。ここ二日、奏はまるでホストみたいに、連日客人の接待に明け暮れてる」「聞いた聞いた。子遠が言ってたよ。あいつだけじゃない、一郎まで死ぬほど忙しそうだったってさ。そうそう、子遠の大学の同級生に、すごい美人がたくさん来てるらしいけど大丈夫?不安じゃない?」とわこは無言で車のドアを開けて中に座り、落ち着いた口調で返す。「あんた、奏の会社行ったことないでしょ。あそこなんて、若くてキレイな女子社員がうじゃうじゃいるのよ?私なんて行くたび、ここの採用ってミスコンと兼ねてるの?って思うくらい」「うははっ!それは一度見に行く価値ありだな」それから約一時間後、2人はリゾート地へ到着した。ちょうどラン
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第1078話

「それにとわこは料理もできるんだ。俺が食べたいって言うと、何でもすぐ作ってくれる。ほんとによくしてくれるんだよ」「それから、セーターも編めるんだぜ?しかも市販のものよりクオリティ高いの」「俺が落ち込んでるときは、冗談を言って元気づけてくれるし、嬉しいときは、一緒に出かけようって誘ってくれる」「俺、性格がちょっと地味でさ。だけど彼女はそんな俺を、全然嫌がらない」「体調崩したときなんか、寝ずに看病してくれてさ。母親としても、ビジネスウーマンとしても優秀で、それに加えて、最高の奥さんなんだ」奏はまるで酔っぱらったかのように、延々と語り続けていた。とわこは、雲の上にいるような気分だった。自分って、そんなにすごかったっけ?むしろ彼が語っているのは、彼の理想の妻なんじゃ?「奏、今日やけにおしゃべりじゃない?」とわこは彼にジュースを一杯注いで、落ち着かせようとした。ところが、彼はジュースをひと口飲んだだけで、ますますヒートアップした。とわこをじっと見つめながら、静かに問いかけた。「とわこ、君は、どうして俺と結婚してくれたの?」「......」その視線の奥にある期待を、とわこは一瞬で見抜いた。さっき自分が言ったみたいに、今度は彼女からも褒めてもらいたいらしい。「とわこさんも、どうして奏と結婚したのか教えて!」誰かが茶化すように言う。「こんなに魅力的な人なんだから、モテモテだったはずでしょ?」とわこは気まずそうに咳払いをして、意を決して言葉を絞り出した。「私は、けっこう浅はかな人間よ。彼と結婚した理由、それは、顔が良くて、スタイルも良くてそれから、お金が好きだったから。聞き間違いじゃないよ?彼のお金が好き」「え?」その場にいた全員が、固まった。奏は、うっすらと笑みを浮かべながら、うっとりと彼女を見つめていた。どうぞ、続けてくれ、と言わんばかりに。「この人、自信家で、プライドも高くてしょっちゅう私を怒らせる。でも、そのたびに高価なプレゼントでご機嫌取ろうとするのよ」とわこは、表情を崩さずに続けた。「一番よく貰うのが、高級ジュエリー。でも私、アクセサリー付けるのあまり好きじゃないの。でも、見るのは好き」「それにね、SNSのパスワードだけじゃなくて、銀行の暗証番号も、金庫の番号も、全部教えてくれてるの。しかも覚えきれな
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第1079話

「奏、外で私のことをどれだけ持ち上げたって、私はあなたの思い通りにはならないから」とわこはベッドに横たわりながら言った。「少なくとも、セーターは編まないから」「みんな、君のことを誤解してる。だから伝えたいんだ、君は俺にふさわしい人間だってことを」彼はメモ用紙にいくつかのパスワードを書き、それを手渡してきた。「確認お願い」とわこはその理由を受け入れ、紙を受け取って目を通した。すると、あることに気づいた。「このSNSのパスワード、私の名前のローマ字?」「うん」「この金庫の暗証番号は私の誕生日?」また別のポイントに気づいた。「うん。カードのパスワードはレラの誕生日だ」彼は自ら説明した。「君とレラは、俺の人生で一番大切な女性だから」彼女の頬が熱くなり、思わず問い返した。「じゃあ、息子は大事じゃないの?」「比べれば、そこまでじゃない」彼はベッドの縁に腰を下ろした。「君と娘のほうが、ずっと心が通じ合ってる。息子はいつも俺に反発するからな」「蒼は別に怒ってないじゃない。蓮とあまりうまくいってないからって、息子まで悪く言うのはどうかと思うよ」「悪く言ってるわけじゃない。ただ、息子は自分の力で生きるべきだと思ってるだけだ」彼は窓辺に行き、白いレースカーテンを静かに引いた。「未成年の間はもちろん助けるさ。でも大人になったら、自分の道を歩いてもらう」とわこは不思議そうに首を傾げた。「でも、成人してもまだ二十歳にもならないのに?それでも放っておくつもり?」「頼ってきたら助けるよ。でも、自分から言ってこないなら、俺からは手を出さない」彼は上着を脱いで丁寧にハンガーにかけると、再び彼女の隣に腰を下ろした。「弥みたいな放蕩息子にだけは、したくないんだ」とわこはパスワードの書かれた紙を折り、バッグにしまった。「全員が弥みたいなわけじゃないよ。でもあなたの考え、分かる。子どもが助けを求めなければ、必要以上に手を出すことはないってことね。蓮はしっかりしてるし、自分のことに親が口出しするのは好まない子だから」「うん」「ところで、本当にお兄さんは呼ばないの?」とわこは彼の体に腕を回しながら尋ねた。「親戚は招待してるのに、お兄さんにだけ声をかけないなんて。知ったら怒らない?」「俺たち兄弟は、もう完全に縁を切ってる」奏の声は冷たかった。「俺の秘密
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第1080話

「とわこ、旦那様に電話して、人を見に行かせたほうがいいわよ」三浦が提案した。「こんな辺鄙な場所に、なんで弥が来てるのよ?きっと明日、式をめちゃくちゃにしようと、何か悪巧みを考えてるに違いないわ」「うん。あとで会ったとき、彼に伝える」とわこは頷いた。「それとね、とわこ」三浦は蒼を抱きながら、真剣な表情で続けた。「弥って、すっごく悪いやつに見えるけど、全部彼自身のせいって思わないほうがいいわよ。あの子の性格、両親の影響が大きいのよ。お母さんは言わずもがな、したたかで計算高い女。お父さんの悟も、見た目は真面目そうだけど、実際は全然違うの。日本でも言うじゃない?同じ布団で寝るやつは、似たような人間になるって」とわこは眉をひそめ、数秒間考え込んだ後に言った。「そういえば、奏が植物状態だったとき、弥が私を利用して財産を奪おうとしてたことがあった。あんな恐ろしいこと、弥一人で考えたとは思えない」「そうなのよ!旦那様が目を覚ましたあと、弥が見舞いに来たとき、すごく怒ってたでしょ?あの時の怒り方、私、今でも覚えてる。あの一家のことを、旦那様が知らないはずがないのよ。悟がそこまで悪くなかったら、旦那様だってあそこまで突き放したりしなかったはず」とわこは黙り込んだ。「だから、明日は特にあの親子には警戒しておかないとね」三浦はもう一度、念を押すように言った。「うん。後で奏にちゃんと話す」車がリゾート施設に入ると、すぐにとわこは奏の姿を見つけた。彼は友人たちと談笑しながら、とわこたちを待っていたのだ。車が近づくと、彼はすぐにこちらに歩み寄ってきた。車が止まると、とわこはすぐにドアを開けて降りた。「奏」とわこは彼の前に立ち、「人を外に見に行かせて。さっき弥を見かけたの」と言った。奏の眉がピクリと動いた。「本当か?」「三浦さんも見たの。知らない男と道端で話してて、何かよからぬことを考えてる気がしてならない」「大丈夫だ、俺が確認させる」奏はとわこを安心させるように言った。「仮に何か企んでいたとしても、このリゾート内には入り込めないようにしてある」とわこは眉をひそめた。「でもね、明日の式で気分を台無しにされたくないの。顔を潰すのはいつでもいいけど、明日だけはやめてほしい」恐れていることほど、現実になりやすい。彼女があまりにも不安
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