「ママが私と弟を連れてお兄ちゃんのところに行くのに、パパは連れて行かないなんて、それって十分怖いことじゃないの?」レラは悲しげな顔で問い詰めた。「二人は離婚するんでしょ?」「違うのよ」とわこはティッシュで娘の涙を拭った。「ママとパパはまだ結婚届を出していないの。だからもし別れるとしても離婚じゃなくて、別れるだけ」「えでも、それって同じことじゃないの?うわああ!」説明を聞いたレラは、余計に涙を激しく流しはじめた。「レラ、泣かないで。ママの話を聞いて」とわこは柔らかく声をかけた。「ママとパパがどうなっても、私たちはあなたと、お兄ちゃん、弟をずっと愛してる。ママは必ず、ずっと一緒にいるから」「私、ママとパパが喧嘩するの嫌い!」レラの瞳は涙でいっぱいになった。「でも、二人はいつも喧嘩してる!」とわこは返す言葉を見つけられず、沈黙した。一分、二分と経ちレラは母の顔を見つめ、ふと心が和らいだ。「ママ、ごめんなさい。そんな大きな声で言っちゃいけなかった」「いいのよ。悪いのはママとパパだから」「パパは悪いけど、ママはいい人。ママは絶対に、私とお兄ちゃんと弟のそばにいてね」レラは母に抱きつき、しゃくり上げながらそう願った。夜、子どもたちを寝かしつけた後、とわこは疲れ切った身体で部屋を出た。そのまま大股で主寝室に向かい、扉を閉める。このままじゃ駄目だ。結菜や黒介のことを置いても、奏の逃げ続ける態度は、子どもたちに悪影響が大きすぎる。とわこは子遠に電話をかけた。「子遠、奏は今どこにいる?会って話したい」彼女は冷静な声で告げる。「とわこ、すまない。今日探しに行ったけど、会えなかった」子遠は苦い顔をした。「一郎さんにも聞いたけど、彼も知らない」「じゃあ彼は、あなたたちにも連絡を取らず、会社のことも放ったらかし?」「そうなんだ。今まで、こんなことは一度もなかった」子遠は眉間に深いしわを寄せた。「まさか、ずっと逃げ続けるつもりじゃ?」とわこは深く息を吐き出した。「私、自分の過ちをもう分かってる。別れるつもりなら、それで構わない。協力するつもりだし」「まあ待ちなさい。二人が別れるなんて、そう簡単にいく話じゃない」子遠は強い口調で言った。「少し辛抱してみて。僕の勘だけど、来週には必ず決着がつくと思う」「決着?」「そう
Read more