All Chapters of 植物人間だった夫がなんと新婚の夜に目を開けた: Chapter 1341 - Chapter 1343

1343 Chapters

第1341話

真帆は細い眉をひそめて聞く。「どうしてまだ寝てないの。もうすぐ一時だよ。いつもこんなふうに夜更かししてるの?」そう言いながら、彼女は机のほうへ歩いていく。蓮はノートパソコンを閉じるかどうか二秒ほど迷って、結局閉じないままにした。真帆は大学をまだ卒業しておらず、奏と結婚してからは思い切って休学して家にいる。しかも真帆の専攻は哲学で、真帆の知識では蓮のパソコンに映っている内容は理解できない。「誰に言われて来た」蓮は真帆の顔を見て問い詰める。「わ……悪い夢を見たの。あなたがお兄ちゃんに連れて行かれる夢。それで様子を見に来ただけ」真帆は適当な嘘をつく。「それで、俺があなたのお兄ちゃんに連れて行かれるのを望んでるの、それとも望んでないの」蓮は続ける。「もし俺が連れて行かれたら、奏は完全に高橋家の操り人形になるよ。あなたたちがやれと言えば、何でもやらされる」真帆は言葉を失った。蓮がそんなことを言うとは思わなかった。「俺は彼が嫌いだけど、彼はまだ俺のことを気にかけてる」蓮は淡々と言う。「あなた、今すぐお兄ちゃんに連絡してみる?」真帆は一瞬心が揺れる。けれど、その先の結果を考えると恐ろしくなる。「蓮、あなたが私を好きじゃないことは分かってるし、偏見を持ってるのも分かってる。でも私はお兄ちゃんと一緒に動いてるわけじゃないの」真帆は丁寧に説明する。「私はあなたのお父さんと……」その先は口に出せなかった。蓮にとって自分は継母になる存在だからだ。「もし俺が『あなたのお兄ちゃんを殺すつもりだ』って言ったら、それでもあなたは俺をこの家に匿う?」蓮はわざと真帆を挑発し、真帆の限界を探る。真帆は固まった。目の前の子どもが、自分のお兄ちゃんを殺すと言うなんて……そんな力があるのか。真帆が疑おうとしたとき、蓮が先に口を開く。「あなたのお兄ちゃん、最近殺害予告を受けてるって聞いてないの?」命のカウントダウン。真帆は蓮の顔を見て、それから彼の前にあるノートパソコンを見る。兄のスマホに侵入した謎のハッカーが、蓮?真帆の体が小さく震え、どうすればいいか分からなくなったその瞬間、部屋の扉が開いた。奏が大股で中に入ってくる。蓮は彼の顔を見た途端、急いでノートパソコンを閉じ、ベッドへ戻り、布団を引き上げて顔を隠した。
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第1342話

蓮は、彼が突然そんなことを言い出すとは思っていなかった。蓮は彼が記憶を失ったと聞いていたので、上体を起こすとつい口にする。「記憶を失ってない?」「失ったよ」奏は蓮の顔を見つめながら、ゆっくりと言葉を続ける。「とわこと何があったのかは全部忘れた。でも彼女を見た瞬間、胸の奥に反応があった。きっと大事な人なんだって思った」「ふん。パパなんて名乗る資格ないよ」蓮は不満を隠さずに彼の顔を見る。「問題から逃げてばかりの臆病者。俺が見た中で一番の腰抜けでも、あなたほどじゃなかった」息子に一方的に罵られ、奏の胸の奥に怒りが燃え上がる。衝動のまま行動すれば、人は簡単に間違った選択をしてしまう。深林の別荘で、蓮を自分の手で絞め殺しそうになったのも一つ。Y国に来て、剛に洗脳され、記憶消去の施術を受けたのも一つ。けれど今は昔の話を持ち出すときではない。「お前はとわこと一緒に帰国しろ。こっちのことが片付いたら、俺が迎えに行く」奏は凛々しい眉を寄せ、蓮と向き合う。「とわこは俺の言うことを全然聞かない。だからそのときは、お前が何とかして一緒に帰るよう説得しろ」「ママはママで、俺はただの息子だよ。どうして俺の言うことを聞くの」蓮は頭を抱えたくなる。どう考えても難題だ。「甘えなよ」奏は真顔でアドバイスする。蓮の眉は、今にも蚊を潰せそうなくらい深く寄っていく。「甘えるなんてできない」奏の深いまなざしが、目の前の苦しげな小さな顔を捉える。こんなに近くで息子を見るのは初めてだった。そしてこれほど長く言葉を交わしたのも初めて。「大貴をどうやって殺すつもりだ」奏はしばらく考えた後、尋ねる。「俺の計画だよ。口出ししないで」蓮は即答する。「お前が失敗しないか心配なんだ。俺のほうが助けられるかもしれない」奏は低く言う。「大丈夫。俺一人でできる」蓮の声は迷いなく、強い自信に満ちている。奏は静かに問う。「でも、これから外に出られないんだぞ。それで大貴を殺せるのか」「見てれば分かる」蓮は少し顎を上げ、軽薄なほど強気の態度を取る。その姿に、奏の胸の内で複雑な感情が渦を巻いた。自分が蓮の年齢だった頃、こんなに優秀じゃなかった。「そんなにできるなら、とわこを帰国させる話は任せる」奏は時間を見て言う。「もう遅い。寝なさい。お前が寝たら出て行く
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第1343話

「うちの息子が、もうすぐだって言った」奏は蓮の計画を知らない。ただ蓮の表情や態度から、確かな自信があると感じていた。「遅くても明後日までには終わる。大貴が死ねば高橋家は大混乱になる。その隙に、とわこと蓮を逃がしたい」三郎は舌を打ちながら何度もため息をつく。「お前の息子、まだ十歳にもなってないだろ。そんな話を真に受けるのか」「どうして信じない理由がある」「大貴が死んでから言えよ」三郎は冷たく笑う。「剛が守ってるから今まで生きてるようなもんだ。そうじゃなかったら何度死んでてもおかしくない。それで、お前はとわこと一緒に日本へ帰るつもりか」「帰れない」奏は静かに答える。「今の俺は高橋家と深くつながりすぎてる。日本に戻ったところで、剛は必ず追ってくる。ここで起きたことは、ここで終わらせる」三郎は豪快に笑った。「いいな。そろそろ全部ひっくり返すころだ」……朝七時。とわこは目を覚ますと、蓮のことが気になって仕方がなかった。少し迷った後、蓮にビデオ通話をかけた。「蓮、そっちの生活に慣れた?真帆に何かされてない?お父さんは……」息子の顔を見るなり、心配が一気に溢れ出す。「ママ、奏はもうママのこと覚えてないよ」蓮はスマホを持ったまま起き上がる。着信音で起こされたので髪はぼさぼさだったが、頭はしっかり冴えている。昨夜奏が言ったことは、全部覚えていた。「奏が自分で言ったの」とわこの眉がきゅっと寄る。「うん」とわこはその結果に驚かなかった。もし奏が彼女の記憶を取り戻していたら、気持ちを隠すことなどできない。「ママ、大貴が死んだらママも俺と一緒に帰国して」蓮は昨夜、奏に言われた『とわこに甘えろ』という助言を思い出す。甘える方法は知っている。レラがよくやるからだ。けれど、自分ではどうしてもできない。「昨夜、他に何を話したの」とわこは二人が話し込んだことのほうが気になった。「あなた、今まで彼と話そうともしなかったのに、どうして昨夜は話したの」蓮の頬がほんのり赤くなる。「奏は記憶を失ってるって言ったじゃん。だから、前の奏とは別人だと思っただけ」「彼はママのことは忘れたけど、あなたたちのことは忘れてない」「うん……彼を思い切り罵ったんだ。でも全然怒らなかった。つまらない」蓮は不満げに言う。「彼の反応
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